横浜FC所属の「キング・カズ」こと三浦知良選手が、今シーズンから13年ぶりにJ1の舞台に戻ってくる。
Jリーガーが引退する平均年齢は25歳といわれている中、プロ35年目、53歳のカズがどんなことを感じ、何を考えて日々サッカーに取り組んでいるのか。
カズの胸の内を読むことができるのが、『カズのまま死にたい』 (三浦知良著、新潮社刊)だ。本書は、日本経済新聞に隔週で連載中のコラム「サッカー人として」の2014年から2019年のものをまとめたものだ。サッカーのことはもちろん、昨年引退したイチロー氏のこと、日本中が沸いたラグビーW杯についてなどのテーマを通して、カズの心中を読むことができる。
カズは周りの選手から「カズさんは365日、スーパーポジティブですね」と言われるという。このチームメイトの言葉に対し、「何事も、僕は常に、物足りない。もっとやりたい。やっぱりそれが秘訣ですよ」と語っているが、この飢餓感、渇望感はカズが現役選手でありつづけるモチベーションの一つだろう。
そして、同じようにプレイヤーとしての情熱を長く燃やしつづけた男がいる。プロ35年目にして、今尚、向上心に溢れている日本サッカー界のレジェンドは、45歳まで選手として活躍し、昨年惜しまれつつも引退したイチロー氏にどのような想いを抱いているのか。
現役生活の晩年、イチロー氏は選手登録を外され、試合に出場できない時期が続いた。多くの輝かしい成績を残してきたイチロー氏だが、その期間にやってきた営みが「どの記録よりも誇れる」と語っている。
同様に、カズも2年間先発できない期間があった。試合に出られるかわからない、いつ出られるかもわからない、そんな環境で自分を保ち続けるのは簡単ではなく、揺れ動く感情を制御し、モチベーションを維持し、変わらないでいることが、どれだけ大変なことか。イチロー氏も同じだったのではないか、と綴っている。
引退後、イチロー氏からカズに心揺さぶられる長文のメールが届いたという。胸の内だけで大事にしておきたい、という理由から本書でその内容は綴られていないが、野球界、サッカー界を長く牽引してきたレジェンド同士だけに通じ合える何かがあるのかもしれない。
「目指すところは毎年同じ。試合に出たい。活躍したい。そのために練習をやる。毎日やり続ける。もう、それだけ」(P .287)
カズはあとがきでこう綴っている。そんなカズのサッカーに対する姿勢や生き様、試合で活躍する姿に多くの人が元気と勇気をもらっているだろう。そして、本書で語られているカズの言葉の数々は、どれもかっこいい。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため延期されているJリーグだが、再開されたら今年もかつてと変わらないエネルギッシュなプレーを見せてくれるはずだ
(T.N/新刊JP編集部)
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