世界にはさまざまな昆虫が存在している。その種の数は、名前を付けられているものだけでなんと120万種以上。見つかっていない種も含めると300万種以上と言われている。
あまりにも多様多種で、奥深い昆虫の世界。地球の陸地はまさに昆虫が支配していると言っても過言ではないのかもしれない。
だからこそ、珍虫・奇虫も数多い。
形態がヘンテコな昆虫、色彩が美しい昆虫、やたらと大きな昆虫、とにかく群れる昆虫。これらは、この過酷な世界を生き延びるために適応した果ての姿であり、生物の神秘ともいえるのだ。
そんな珍虫奇虫を美しいグラビアとともに知ることができる『世界でいちばん変な虫 珍虫奇虫図鑑』(海野和男著、草思社刊)から選りすぐりの虫をピックアップしよう。
メイン画像にも取り上げた、カーニバルの仮面をかぶったような顔のバッタ。
カメルーンに生息する、その名も「カメンバッタ」という。
このバッタがこんなに派手なのは、実は毒を持っているからだとされている。捕食者に向けて「毒があるから危険だよ、食べないで」というメッセージを発信しているのではないか、ということだ。
著者の海野さんいわく「バッタで派手な赤や黄色のものは少なく、そうしたバッタはたいていが毒のあるバッタである」とのこと。昆虫にとって色は、生き残るための戦略の一つなのだ。
世界の昆虫はサイズもビッグだ。日本の昆虫で100mmを超えるものはごくわずか。しかし、熱帯アジアのナナフシの仲間は、脚を伸ばした大きさが500mmを超えるものもいる。
本書の中で、海野さんの腕をつかんでいるリラトゥスオオナナフシは、体長300mm、脚まで入れると400mm以上になる大型のナナフシだ。村の人が捕まえてきたもので、体は豆に似ている。がっしりと腕をつかむその姿はなんとなく愛らしさを感じるような、感じないような。
ちなみに、世界最大のナナフシはボルネオのチャンオオトビナナフシで、脚まで含めた全長は567mmに及ぶという。
日本ではお尻をかじる「おしりかじり虫」の歌が流行したが、世界にはお尻に顔があり、後ろ向きに歩く虫、その名も「ウシロムキアルキ」がいる。
この「ウシロムキアルキ」という名前、実は海野さんが名付けたもので、「ヒロズアシブトウンカ」という昆虫の仲間。触角のような髭や、愛くるしい目玉のようなものがあることから顔に見える部分が実はお尻だ。
そして、なんと歩くときもたいていは「後ろ向きに歩く」のだそう。もちろん、前進も自由にできる器用さを持ち合わせている。
海野さんが一番撮りたかったというこの「ウシロムキアルキ」からは、擬態の凄みを感じ取れるだろう。
本書を通して伝わる昆虫の不思議さ。異様な模様をしていたり、グロテスクだと感じるほど数が集まり、集団を形成したり、はたまた飛べば「消えてしまう」羽根を持っていたり...。そうした神秘は、冒頭にも述べたように種を次の時代に残すための戦略によって生まれたものなのだろう。
人間の社会において「多様性」が重要視される中で、昆虫の多様性は目を引くものがある。
「私たち人間とは違った多様な生き方を選んで成功者となった昆虫の一端にふれていただければ」と海野さん。眺めるだけでも驚きばかりの一冊である。
ただし、昆虫が苦手な人、集合体恐怖症の人は閲覧注意だ。
(新刊JP編集部)
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