読むべき本、見逃していない?

「30分の投資で生産性は上がる」 企業が仮眠の導入を進めるべき理由とは

  • 書名 ハイパフォーマーの睡眠技術
  • 監修・編集・著者名小林 孝徳
  • 出版社名実業之日本社

睡眠不足に悩まされる日本人。
OECDによる2018年のデータによれば、日本人の睡眠時間は平均7時間22分で主要28国中最下位だった。

睡眠に悩めばパフォーマンスは落ち、生産性も落ちる。
質の良い睡眠をとることができれば、生産性は上がる。
それを経営層が認識し、組織全体で睡眠の改善を進めていくことを提案しているのが、SleepTech(スリープテック)を活用し、組織の睡眠課題の解決に挑むニューロスペースの代表・小林孝徳さんだ。

『ハイパフォーマーの睡眠技術 人生100年時代、人と組織の成長を支える眠りの戦略』(実業之日本社刊)を著した小林さんに、本書の内容に触れながら、ここでは企業や組織の視点から睡眠を改善することの重要性についてお話をうかがった。
部下や社員たちはちゃんと睡眠を取れているだろうか? 振り返りながら読んでほしい。

(新刊JP編集部)

■組織全体が個人の睡眠をケアする。そのために何をすべきか?

――本書の第1章で「睡眠資本主義」という言葉が出てきます。これは個人の「睡眠」を「資本」として捉える考え方ですが、改めて「睡眠資本主義」とその中心となる「睡眠資本」について意味を教えてください。

小林:平たく言えば、個人がちゃんと睡眠をとり健康になることが、会社の健康と幸せにつながるということです。

これまではとにかく量をこなすことが、会社の利益や競争力につながると考えられてきました。今でもその考え方はマジョリティでしょう。一方で睡眠資本主義では、睡眠をしっかりとっている社員がいる会社が、資本主義の中で競争優位性を保つことができると考えます。

睡眠をとることで、ミスが少なくなり、感情的にも穏やかになる。ストレス耐性も柔軟になる。実際、睡眠をしっかりとられているリーダーのほうが部下をちゃんと見ていて、周囲に対する気遣いもできているという声を聞きます。

生産性を高めるためには、まずそこで働く個人の心身が健康であることが第一です。また、リーダー層は今、社内外に適切な配慮をできることがマネジメントに求められています。顧客から信頼を集めるためには、そうした配慮は欠かせません。そこにも睡眠の効果が期待できます。

これが後に売上や利益につながり、会社の価値である時価総額の押し上げにつながっていくわけですね。

――働き方改革の文脈としても、生産性を上げるための睡眠はとても重要だと思います。ただ、個人的には、働き方改革が労働時間や余暇時間における「成長を促す活動」「リフレッシュする活動」にフォーカスされていて、睡眠をしっかり取りましょうという話が出てきにくい印象があります。

小林:もしそういう印象があるとすれば、そこは文化的な背景というか、「睡眠は後回し」と考える人も少なくないのかもしれませんね。そうした睡眠を軽視する文化を変えていこうという意図もこの本に詰め込んでいます。

働き方改革の中で、勤務間インターバル制度(終業時間から一定の休息時間を空けないといけない制度)が法律で努力義務化されましたが、そういう制度を適応するときに、同時に睡眠時間の確保の重要性を伝えていこうということが必要だと思いますね。

私個人としては、余暇時間の使い方は人それぞれですし、仕事以外の活動もどんどんするべきだと思います。脳の使う部分が違うと、それはリフレッシュになりますし、ストレス解消もつながります。さらにそれが良い睡眠につながるというメリットもありますから。

――Forbesに掲載されたインタビューで小林さんは「よく眠れてる?」という声かけが良いチームを生むとおっしゃっていました(*1)。リーダー層の視点から言うと、部下や社員の睡眠にも気を配ることが必要だと思いますが、どんな風に接すればいいと思いますか?

小林:人間はクロノタイプといって、朝型や夜型が生まれつき決まっているんですね。だから夜型の人間に対して「朝早く来い」といって無理に来させても、午前中はパフォーマンスが上がりにくかったりするんです。それをまずは認識してほしいですね。

そのうえで、部下をよく見て、配慮する。少し働き過ぎだなと思ったら、仕事量をコントロールして減らしてあげて、「しっかり寝てください」と声かけをして睡眠チームワークを作りあげる。こうすることはできるはずです。

ただ、急に「睡眠は重要だから早く帰ろう」と言い始めても、「また上層部の人が何か言ってるよ。早く帰れない状況だから睡眠不足なのに」という雰囲気になると思います。だから、上司やリーダー層、経営層が率先して早く帰るとか、仮眠を取る姿を積極的に見せて、その上でメッセージを伝えることが大切じゃないかなと思います。文化を変えるにはトップの行動と勇気が必要です。

――私は完全に夜型の人間で、朝型の生活に変えたいと思ってはできず...ということが続いています。無理せず、自分のクロノタイプに合わせる働き方に持っていったほうがいいのでしょうか。

小林:パフォーマンスが最も上がるのであれば、そうすべきでしょうね。ただ、会社がそれを認めてくれるかどうかという話になります。

編集や制作の仕事をしている人は不規則な方が多いですから、フレックス制度やリモートワークを導入した方がパフォーマンスを最大化できるのであれば、そう舵を切ることも検討すべきだと思います。

――どんな制度を取り入れるにせよ、目的となる「パフォーマンスの最大化」をしっかり見据えるべきということですね。

小林:「睡眠が大事と言われているから、会社としてこういう方針でいきます」といっても説得力がないですよね。上司が仮眠を取ってパフォーマンスを上げている姿を見せれば、自分もやってみようとなるかもしれない。

――その意味で、第4章で書かれている「仮眠」の重要性について聞いておきたいです。「このままではミスしそうだから一旦15分ほど眠ろう」ということで仮眠を取ったとしても、それを「居眠りをしている」とネガティブな意味で捉える人もいますよね。その「居眠り」から「仮眠」への意識改革をどう進めればいいのでしょうか。

小林:これも会社全体で「仮眠をしたほうがパフォーマンスは上がる」という意識を持たせて、仮眠尊重の文化を作っていくことが大事ですね。

おっしゃる通り、居眠りは「lazy」、つまり怠惰なイメージで捉えられていますが、そこを払しょくするには、先ほど話したように上司の立場が率先して仮眠を取り、良いから取ってみなさい、仮眠は「smart」と伝えていくことが必要ではないかと思います。

――「仮眠室を導入する」という本書の提案はすごくいいなと思いました。

小林:それは文化を変えるために重要です。人間は概念や言葉で言われてもなかなか理解できませんが、モノがあると認識しやすくなるんです。仮眠室という物理的な場所を設置すると「ここで寝てもいいんだ」と認識するので、説得力が増します。

また、仮眠室の設置は福利厚生においてもアピールになるようで、そのことからメディアの取材を受ける企業もあります。そういう取材を受けることで、社内外で仮眠の重要性を発信していけるのだと思います。

――小林さんの経営するニューロスペースでも、仮眠室の導入のお手伝いをされているそうですが、仮眠に対する社会全体の意識は変わってきていると思いますか?

小林:明確に変化してきています。不眠大国の日本で、今すぐに8時間睡眠に戻しましょうというのは難しいんです。繰り返し言っているように、文化や社会を変えないといけません。

では、現実的にできることは何があるか。パフォーマンスに悪影響を及ぼす睡眠不足をどう解決すべきか。その応急措置として仮眠があるわけです。

本の中では書いていませんが、ニューヨークで日本人が経営する仮眠施設「NapYork」がブームになっているそうです。お客様は金融街に勤務する証券マンで、彼らは世界中のマーケットを相手にディールしているので、時間が関係ないんです。だからいつ休んでいいのか分からない。

そういう不規則な生活をしている人々が戦略的にパワーナップ(戦略的仮眠)をできるということで注目されているようなんです。

――パワーナップは15分から20分ほどの短い仮眠ですよね。眠る前にカフェインを摂取する。そう考えると正味30分くらいですから、あまり時間をかけずにリフレッシュできますね。

小林:30分投資すると生産性が上がると考えれば、費用対効果が高いと思います。

単純計算ですが、例えば午前中の生産性が80%で、午後1時から6時までの生産性が50%だとしたときに、午後1時から30分仮眠すれば、その後の4時間30分は生産性が80%に戻るとします。5時間を50%で過ごすのと、4時間30分を80%で過ごすのでは、後者の方が生産性は高くなるはずですよね。

そういったことをリーダー層が伝えていくことが第一歩なのかなと思います。

――では、このインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。

小林:睡眠は個人だけでなく、組織や会社の幸せに直結します。また、資本主義社会における会社の競争優位性を押し上げる要素にもなります。

ただ、まだ睡眠の重要性を軽視している会社も多いのも事実です。
眠りは技術です。質の良い睡眠をしっかり取ってパフォーマンスを最大化し、企業成長に役立てて頂けることを切に願ってます。

(了)

<参考サイト>
*1...「睡眠資本主義。社員がよく眠れている会社が、評価される時代が来る」(Forbes)
https://forbesjapan.com/articles/detail/29141/4/1/1

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