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職場の人間関係改善のキーワード「認識スタイル」とは何か?

  • 書名 『「職場のやっかいな人間関係」に負けない法:「あの人」の言葉のクセに解決の糸口がある』
  • 監修・編集・著者名飯塚健二
  • 出版社名三笠書房

一日の大半を占める仕事。それだけに職場での人間関係は生活の充実度を大いに左右する。

人間関係が苦痛な職場なら出勤するのも苦痛になるし、周囲とうまくやれているのなら、たとえ成果の方はイマイチでもそこまでストレスを感じることはないのではないか。そして、この人間関係は自分次第で良くも悪くもなる。

『「職場のやっかいな人間関係」に負けない法:「あの人」の言葉のクセに解決の糸口がある』(三笠書房刊)は、人それぞれが持っている「認識スタイル(物事の受け取り方のクセ)」に注目することで、人間関係の改善を目指す一冊。

今回はコンサルタントとして人材育成や人事制度改革に携わる著者の飯塚健二さんにお話をうかがい、人間関係を円滑にするための糸口となる認識スタイルとはどのようなものかについて教えていただいた。

■人それぞれの「認識のクセ」を知ることで対人関係がラクになる

――かつては飯塚さんも職場の人間関係で苦労されていたと書かれていましたが、具体的にどんなことに苦労されていたのでしょうか。

飯塚:人間関係で苦労していたのは30代頃のお話です。その時の会社はいわゆる「逆三角形型」で、当時私が一番下っ端で、周りは年齢も立場も上の人ばかりでした。

全体的な雰囲気として、自己保身的な感じで、陰口もよくありました。コンサルタントなのでクライアント向けにあれこれ資料を作るのですが、陰で「あの資料には何の価値もない」と言われていたり。自分の言動がどう巡り巡って誰に何を言われているかわからないような状態でした。

「この会社にいたければいたらいいし、辞めたければ辞めればいい」と上司に言われたときは、本当にショックでしたね。いまでもその時の光景が目に焼き付いています。今思うと人間不信だったと思います。当時は娘がまだ小さかったのですが、ただただ家族のためだけに仕事を続けていました。

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――その状態をどう改善していったのでしょうか?

飯塚:あるところで、人間関係にまつわる外部の研修を受けるようになってから変わり始めた気がします。人的なネットワークができましたし、外部に出ることで自分を相対的に見られるようになりました。人それぞれみんな違っていて、違う考え方や価値観で動いているんだと思えた時に突破口が見えた気がします。

さらにいえば、当時参加した研修の一つで、この本のテーマになっている「iWAM(inventory for Work Attitude and Motivation:人間の考え方や物事の受け止め方の個性を測定するツール)」の考え方に出会ったんです。

――それ以降は人間関係での悩みはなかったんですか?

飯塚:嫌な上司とかはいましたけど、「ああ、この人はこういう人なんだな」と考えられるようになりました。ストレスに耐性ができてきたということなんでしょうけど。

――本書では「iWAM」の考え方を、人間関係改善のために応用しています。このiWAMについて、どんなものか教えていただきたいです。

飯塚:2001年にベルギーで生まれたもので、日本に上陸したのは2008年です。まだ12年くらいなのであまりメジャーにはなっていません。知る人ぞ知るという状態なので、これから広めていけたらいいですね。

正式名称を日本語にすると「職場における行動特性と動機づけに影響を与える要素」となるのですが、大きな特徴は「言葉」に注目する点です。私たちが使う言葉には、その人の考え方や感情が強くあらわれるものです。それらを分析して、自分がどんな風に物事を考えて、物事をどう認識する傾向があるのかを知ることができます。

iWAMの認識スタイルは48種類あるのですが、自分がどのスタイルをどれだけ意識していて、どれをあまり意識していないのかが定量的にわかるので、自分の特徴をつかんで、改善するところは改善するというアクションにつなげることができます。

――マネジメント側に向けて書かれた本なんですか?

飯塚:かならずしもそういうことではありませんが、マネジメントにも有効です。私はコンサルタントとして管理職向けの研修をやっているのですが、人材育成についての悩みはすごく多いんですね。育てないといけないのはわかっていて、そのための勉強もしているんだけど、うまくいっていないという。

こういう研修の場でも、この本で書いたようなiWAMの考え方を使っています。たとえばiWAMで分類される認識スタイルに「全体型」という全体を俯瞰したり物事を大局的にとらえるのに長けた認識スタイルがあるのですが、この部分が強すぎる上司は部下個々人の状況を掴むのが苦手だったりするんです。それで部下からすると「あの人は自分のことをわかってくれない」となってしまいやすい。

この「全体型」の対になっているのが「詳細型」という認識スタイルです。こちらは個々の状態であったり、物事の細かなところに気づくのは上手なのですが、やるべきことの優先順位づけが苦手だったりします。

これはどちらが良くてどちらが悪いということではなくて、人それぞれが物事を認識する時の「クセ」のようなものです。それがいい方面に出ることもあれば、悪く出ることもあります。

先ほどお話したようにiWAMでは、こうした「クセ」が定量的にわかるので、もし今自分の認識スタイルが仕事で悪い方向に出ているのなら、改善するための具体的な行動がとりやすいんです。今回の本も、自分の認識のクセを把握して、改善するところは改善していくというふうに使えるはずですし、部下のクセを把握してチーム作りに生かすこともできます。

――部下やチームメンバーのモチベーションを高めることの難しさも、マネジメントに関わる人は苦慮しているところだと思います。

飯塚:そこについてこの本が直接的に使えるのは言葉がけでしょうね。一人一人モチベーションになる言葉は違うはずですが、誰にどんな言葉が効果的かは、認識スタイルを知ることである程度わかります。

たとえば「現在重視型」という、過去現在未来という時間の流れの中で「現在」を特に重視する認識スタイルがあるのですが、この傾向が強い人に未来や過去の話をしてもあまり響きません。「今、何をすべきか」という観点から言葉がけをするのが効果的なんです。逆に未来を重視する認識スタイルの人に「今、何をすべきか」という言葉がけをしても効果的ではありません。

(後編につづく)

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