会社員として働くかたわら、細々と株をやっている人は多いはず。そして、その中には利益が出ている人も、そうでない人もいるだろう。
もし、株で継続的に利益を出したいのなら、「株を安い時に買って、値上がりを待つ」スタイルだけではうまくいかない。『株の「カラ売り」で堅実に稼ぐ! 7つの最強チャートパターン』(日本実業出版社刊)はそんなことを教えてくれる一冊だ。
トレーダーである著者の冨田晃右氏がこの本の中で明かしているのは、信用取引の一種である「株のカラ売り」の手法。「リスクが大きい」など、あまりいいイメージを持たれていない「カラ売り」だが、なぜ今この手法なのか?そして、株の売買で安定して収益を上げるにはどうすればいいのか?ご本人にお話をうかがった。注目の後編をお届けする。
冨田:株価チャートについては、欧米と比べて日本ではまだまだ遅れているところがあり、一般の個人投資家にはなかなか理解されにくく広まってないと思います。確かにだんだんとそういった人は増えては来ていますが、ただチャート「だけ」で判断するっていう人はまだ少ないかもしれませんね。
日本にも昔から「酒田五法」など「ろうそく足」を使った手法をはじめとして、チャートを見て売買の判断をするような日本独自の方法があるにはあるのですが、日本人の性に合わないのか、業績とか何をやっている会社なのかっていうところで売買の判断をする人がメインだと思います。
ただ、チャート分析は一般の投資家でもプロの投資家とほぼ同じツールが手に入るんですね。一方で業績など企業についての情報はどうしてもプロと一般の投資家では格差ができてしまう。この点も私がチャートを見て売買の判断をすることをおすすめしている理由です。
冨田:業績がよければ株価は上がりやすいし、悪いと下がりやすいというのは事実なので、業績は無視していいという言い方は乱暴かもしれませんが、少なくとも私はたとえば決算報告書のような、業績を示す資料はまったく見ていません。株価チャートの形を追いかけて、値動きの兆候(上がる形や下がる形)が株式市場に転がっていたらそれを取りに行くというスタイルです。
冨田:はい、形やパターンさえ覚えれば可能です。チャートを見て売買するやり方は色々あるのですが、今回の本ではチャートを見て、臨機応変に値動きを分析するのではなく、チャートパターンを株式市場から選別する方法を解説しています。
冨田:正直に言えば、迷うことはないんです。というよりは、迷っている場合は動きません。
市場にたくさん銘柄があるなかでチャートを見て売買をしているわけですが、自分の頭の中に理想とする値動きの兆候(チャートパターン)があり、それが見つかったら売買をする。見つからなかったらやらないということです。
冨田:「こうなったらカラ売りする」とか「こうなったら買う」「こうなったらロスカットする」という、自分の中のルールを決めやすいのがメリットだと思います。これは言い換えればリスク管理がしやすいということです。
冨田:根を詰めてやる人もいれば、片手間でやる人もいるので、時間について一概には言えないのですが、少なくとも仕事の合間に株価を見る必要はありませんし、逆に見ると、株価の値動きに感情が揺さぶられ売買判断がゆがめられるので、仕事の合間には見ないでくださいと教えています。
具体的には、翌日に売買したい場合は、当日の15時から翌朝9時までに売買するチャートを探して注文を入れて、9時から15時の市場が開いている時間帯は株価は見ない。15時になったら、翌朝9時までにその注文が成立したかどうかを確認して、成立していれば、チャートをチェックしてまた注文を入れる、というサイクルです。こうすることで本業に影響が出ないようにやるのは可能です。
冨田:具体的な数字は言えないのですが、年間で8ケタくらいです。
冨田:さっきの相場の話に戻るのですが、ここ数年は大きな流れは上げ相場だったので、カラ売りを仕掛ける場面がそもそもあまりなかったり、あるにはあるのですが少なかったり、短期勝負だったり・・・ですね。カラ売りは下げ相場でこそ利益が出るものなので。
ただ、繰り返しになりますが、上げ相場がいつまでも続くわけではありません。下げ局面に転じた時には、流れに逆らって買いに走るよりも、流れに乗ってカラ売りをした方が利益は出やすいので、今後そういう状況になった時にはカラ売りを仕掛けることが増えていくと思います。
冨田:株価チャートを使ったカラ売りの手法の本なのですが、「カラ売りは買いよりも稼げるので、今後ずっとカラ売りをやりなさい」ということを提唱しているわけではなくて、「株式相場というのは上がることもあれば下がることもある」ということをわかっていただきたい。当たり前のことなのですが、国や公的機関はこういうことはなかなか口にしません。言ったら買い手が居なくなり、もっと下がってしまうので。それもあって、相場は下がることもあり、そんな状況時には手持ちの株は売らなければならないし、株を買ってはいけないということをわかっていない人が案外多んです。
今は上昇相場中ですが、これがいつまでも続くと思っていると、天井をつかまされた時に大損をしてしまいます。この本で書いているカラ売りをやるかどうかは自由ですが、せめて来るべき下げ局面が来たら、今持っている株は売ってください。そうしないと損失を大きく膨らませ、塩漬けになってしまうので。
冨田:私は常々、個人で株をやる場合は「投資家」ではなくて「トレーダー」を目指してほしいと言っています。「企業価値に焦点をあてるのが投資家、株価の値動きに焦点をあてるのがトレーダー」だと私は思っていますが、ぜひ後者を目指していただきたい。
なぜかというと、企業についての踏み込んだ情報はなかなか一般の個人投資家は入手できないし、たとえ入手できたとしても、そういった情報を分析する能力もないからです。大口のプロ投資家は集団で動きますし、ものすごく頭のいい人たちが四苦八苦しながら銘柄を選択している世界です。同じことを一般の人ができるかというと難しいでしょう。少なくとも、私にはできませんでした。
だから私は株価の動き自体に焦点をあてるトレーダーの道に入ったんです。株価チャートを勉強して、トレードを始めてみたらうまくいったんです。現在は自分自身がトレードをしつつ、そのノウハウを個人トレーダー志望の方々に教えています。チャートを見て売買を判断するのであれば、大口のプロと個人の間には、少なくとも使うツールに関してはほとんど差はありません。そして、そのツールを使えば、個人レベルでも長期的継続的に利益を上げていけると思っていますので、株式投資ではなく、ぜひトレードにチャレンジしていただきたいですね。
(新刊JP編集部)
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