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ラグビー日本代表の快進撃の秘密。外国出身選手たちはなぜジャパンを選んだのか

  • 書名 国境を越えたスクラム
  • 監修・編集・著者名山川徹
  • 出版社名中央公論新社

盛り上がるラグビーW杯2019日本大会。
ブレイブブロッサム(日本代表の愛称)は9月20日の開幕戦でロシアを破ると、9月28日のアイルランド戦では世界ランク2位(当時。最新は世界ランク4位)相手にまさかのジャイアントキリング(番狂わせ)を起こした。

ロシア戦で日本代表初のハットトリックを決めた松島幸太朗選手(FB)や司令塔・田村優選手(SO)、最前線でチームを牽引する稲垣啓太選手(PR)、アイルランド戦で逆転トライを決めた福岡堅樹選手(WTB)、絶大なリーダーシップで日本代表を支えるリーチ マイケル選手(FL)ら、31人の桜の勇者たちの活躍に目頭を熱くしている人は多いはずだ。

そんな日本代表、たびたび話題になるが、メンバーの約半数は国外の出身だ。

・出生地がその国
・両親・祖父母のうち1人がその国の出身であること
・その国で3年以上、継続して居住。または通算10年にわたり居住

これらのいずれかを満たせば、選手は自分の国籍と異なる国で代表としてプレーできる。

前述の松島選手は父親がジンバブエ人、母親が日本人で、南アフリカの出身。強豪国・南アフリカを選択することもできたが、桜のジャージを身にまとった。リーチ マイケル選手は"オールブラックス"で名高いニュージーランド出身で2013年に帰化している。
アイルランド戦でキャプテンを務めたピーター・ラブスカフニ選手(FL)は南アフリカ国籍で、居住して3年が経過している。後に触れる日本代表スクラムの柱・具智元選手(PR)は中学生時に来日。父親は元ラグビー韓国代表の伝説的選手、具東春氏だ。

■彼らはなぜ日本代表として戦うことを選択したのか?

これまで様々な外国出身の選手たちが日本代表として戦った。そして今も、そうした選手たちが日本代表の中心メンバーとして大躍進を続けている。
母国ではなく、日本のために尽くす。これはおそらく本人にとって重い決断だったはずだ。なぜ彼らは桜ジャージを選択したのか。そこには一人一人のストーリーがある。

『国境を越えたスクラム』(山川徹著、中央公論新社刊)は、日本代表となった外国人選手たちにスポットライトをあてた一冊。これまで日本を支えてきた選手から今大会のメンバーに選ばれている選手まで、さまざまな桜の勇者たちが日本代表に抱く熱い想いを、ノンフィクションライターの山川氏が丁寧な取材で明らかにする。

実は日本はラグビーW杯に第1回大会から出場している「常連国」。しかし、過去8大会で一度もベスト8に進出したことはない。だからこそ、今大会の快進撃に期待が集まる。
そんなラグビー日本代表のW杯挑戦を外国人選手という切り口で追いかけたのが本書である。

もちろん、そこには現役の代表選手の顔も並ぶ。

トンプソン ルーク選手(LO)はニュージーランド生まれ、38歳の大ベテランだ。2007年の第6回大会から今大会まで4大会連続で出場。先日、今シーズンをもっての引退を宣言したが、献身的なタックルでアイルランド戦の勝利を手繰り寄せた、最も頼りになる選手の一人である。

トンプソン選手は、日本の「尊敬」という文化を賞賛する。「日本で一番好きになったのは、尊敬。若い人は年上の先輩を尊敬する。でも、日本人は尊敬するのは人だけじゃないでしょう。日本人は、食事にも尊敬する。そういう日本文化がぼくはとてもいいなと思いました」(p.231より)と山川氏に打ち明ける。2010年には日本国籍を取得。「日本代表としてプレーするには、日本人として戦いたかった」と語る。

前述した具智元選手は伝説の韓国代表の息子であり、まさにサラブレッド。なぜ日本代表を選んだのか?
具選手は日本代表に対する憧れを真っ先にあげる。また、父親から「日本代表を目指しなさい」と応援を受けたこと、そして韓国のラグビー仲間たちから「お前は日本代表でもあるけど、オレたち韓国の代表でもあるんだ」と応援してもらっていることを挙げ、ラグビーを日韓の架け橋にしたいと述べる。

それぞれが日本代表として戦う理由を持っているのだ。

前日本代表キャプテンでドラマ『ノーサイド・ゲーム』で俳優デビューを果たした廣瀬俊朗氏は、本書の中で「常に、寛容でありたい」と口にする。
日本人と外国人が混合しているチームだからこそ、お互いのルーツを理解しあい、認め合わなければ、一つになれない。その意味では、「日本代表」はこれからの日本社会のあるべき手本を見せてくれているのかもしれない。

(新刊JP編集部)

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