2019年10月1日より消費税が10%に引き上げられた。今回は生活必需品の食料品などを対象に軽減税率が導入されており、対象の品目の税率は据え置きだが、それでも家計に対して少なからず影響を及ぼすだろう。
テレビやネットのニュースで税金の話題が出てきたときに、親子で「税金って何だろう?」「消費税って何で必要なんだろう?」と考えることは、社会全体のことを考えることにつながる。
消費税増税の是非をめぐっては意見が分かれており、論拠もさまざま。こうしたニュースを利用して、親子で考える力を養うことができるのだ。
消費税10%は是か非か。上げたほうがいいのか、下げたほうがいいのか。
これを考えるためには、消費税は何に使われているのか、何で上げないといけないのか、今後も上げるべきかなどの判断材料を知る必要がある。
『子ども教養図鑑 世の中のしくみ』(小学校社会科授業づくり研究会著、誠文堂新光社刊)は政治、経済、テクノロジー、環境、国際の5つのカテゴリを通して、社会にまつわる50のテーマを親子で学べる「図鑑」だ。
世の中のギモンに対する解説だけでなく、それに対してどんな意見が上がっているか、その問題についてより深い学びを得るために考えるべきことを教えてくれる。
消費税増税について、本書ではどのように解説されているのだろうか。
まず登場するのは「上げる派」と「下げる派」の意見だ。ここでは、いずれも「子どもの視点」が大事にされている。
上げる派の女の子は「国の税収が減っていて、国民の暮らしのために税収が足りないんだったら上げるのしかないのでは?」と訴え、下げる派の男の子は「100円均一のお店なのに消費税がついて110円はヘン。どうして大人でもないのに税金をはらわないといけないの?買い物したくなくなるよ」と疑問を投げかける。
本書で促していることは、「そうだなあ」と思える2つの意見の間に立ち、「どちらがいいのか」を自分なりに考えるということだ。
その考える材料となるのが、「消費税はどんどん上がっている」という歴史と、「消費税はこんなことに使われている」という解説、そして上げる派と下げる派がそれぞれ述べるメリットである。
「年金や医療、介護、子育て支援といった社会保障を安定して続けていくためには、消費税はいいのです」という上げる派の意見と、「国の収入は減るが買い物をする人が増えて、法人税や所得税が増える。そこで消費税が減ったぶんの税収をおぎなうことができるかもしれない」という下げる派の意見、どちらも「そうかもしれない」と思うかもしれないが実際に進める道は一つだ。
◇
インターネットやSNSによって、私たちは「自分が求めている情報」ばかりにアクセスするようになったと言われる。しかし、自分とは異なる意見をシャットダウンしてしまうと、多様な考え方ができなくなってしまうだろう。
自分に近い意見だけを聞くのではなく、違う意見に耳を傾けることも大切なことだ。これは子どもだけでなく、親である大人世代にも言えることだ。 テレビやネットで流れているニュースを見て、親子で考えてみる。その考えるための材料が掲載されている本書は、パラパラとめくっているだけでも楽しめる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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