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日本人だからこそできる 貿易アドバイザーが明かすビジネスの勝ち筋の見つけ方(後編)

  • 書名 価格はアナタが決めなさい。 輸入ビジネスに学ぶ儲かる仕組み
  • 監修・編集・著者名大須賀祐
  • 出版社名集英社

新規事業として新たな手を打ちたい、独立してビジネスで成功したい。でもどのビジネスに行っても競合が多く、価格競争になったら勝ち目はない...。

そんな悩めるビジネスパーソンに、ブルーオーシャンで勝つための最短経路を教えてくれるのが『価格はアナタが決めなさい。』(集英社刊)だ。
本書の著者である大須賀祐さんは、長く貿易ビジネスに携わり、現在は貿易アドバイザーとして活動。2004年2月には当時合格率わずか8.4%という「ジェトロ認定貿易アドバイザー」(現:AIBA認定貿易アドバイザー)の資格を取得している専門家だ。

「自分で値段を決める立場になる」「独自の付加価値をつける」など、本書で大須賀さんが教える輸入ビジネスのイロハは、ビジネスの基本的な考え方に通じる。
大須賀さんが語る輸入ビジネスの"勝ち筋"の見つけ方とは? お話をうかがった。
この後編で聞いているのは、輸入ビジネスの実践方法だ。

インタビュー前編はこちらから

■アマゾン輸入はNG!大須賀流"輸入ビジネス"のキモとは?

――ここまでは日本における価格決めのお話をうかがいました。『価格はアナタが決めなさい。』の後半は大須賀さんの本分である輸入ビジネスの方法について書かれています。ご提唱されているビジネスの最大の特徴について教えていただけますか?

大須賀:やはり価格決定権を持つことができるということですね。あとは、設備投資することなしにメーカーになることができるという点も大きいです。

メーカーになるには、普通は製品を製造することが必要です。でも、海外のメーカーと取引してその商品を輸入すると、日本の法律上、輸入者がメーカーとして位置づけられるんですね。だから、物を造らなくてもメーカーの立場になれるんですよ。

――また、本書は中小企業経営者だけでなく、個人向けにも書かれていますが、「toC」向けの輸入ビジネス、いわゆるAmazonを使った輸入転売ビジネスを否定されているのも特徴だと思います。

大須賀:まずAmazonの中ですでに価格が決まっていますし、さらに店子さんに商売をさせておきながら、自分たちも同じものを売りますよね。あの構造は店子を潰しにかかっているようなものだと思います。

また、Amazon輸入というビジネスは海外の小売りから商品を買って、内外価格差を利用して利益を生む手法なんですが、今はそれが通用しなくなってきています。ブランド製品の並行輸入は禁止になりましたし、世界共通価格をつくろうとする動きも出ていますからね。

――では、その中でECサイトを使わずにどのように日本にはない商品を見つけ出せばいいのでしょうか。

大須賀:そのコツは一つ。海外で開かれている展示会に行くことです。実は海外のメーカーは、商品を広める手段として展示会をすごく利用しています。自分から売りに行くのではなく、相手に来てもらうのが基本スタンスですから。

私たちはそこで商品を仕入れる前にリアルに見ることができますし、すでに取引があるならお得意先に会うことができるので、これ以上の方法はないと思いますね。

――海外の展示会に行く前にもある程度の商品の目星をつけたほうがいいと思うのですが、いかがでしょうか?

大須賀:今あるもの、これまで使われてきたものの単価を下げるビジネスをするならば、それでもいいと思うのですが、今日本にない商品を見に行くというとリサーチのしようがないですよね。見た瞬間、「これ、何なの?」と驚くものがあれば、それは未来に広まる可能性のある商品だったりするんです。

私自身の話で言うと、自動掃除機のルンバですね。10年前に海外で見かけたときは「これはなんだ?」と驚きました。ただ、おもちゃのように思えてしまって手を出さなかったんです。

――でも、日本でも普及しましたよね。

大須賀:そうなんです。だから、何が売れるのかは分からない。

――逆に手を出した商品が全く売れないということもありますよね?

大須賀:「これは売れそうだ」と思っても全く売れないこともあります。そういう失敗をなくすように、まずはサンプルを購入して、そのサンプルを日本国内の展示会に出展し、客の反応を見る。そして、反応を見るまでは契約してはいけないということを本書で呼びかけています。

――なるほど。先走りするな、と。

大須賀:だから、輸入ビジネスを始めるにしても、100万円くらいの規模の出資は想定しておくべきでしょう。海外の渡航費、サンプルを購入する費用、そして国内の展示会出展費ですね。一方で、「これは売れる!」と思って先走って商品を発注してしまうと、1000万円、1億円クラスの損失が出る可能性が高まります。失敗のゴールデンパターンとも言うべきものですね。

――また、本書では独占販売権を取得しなさいと書かれていますが、契約書を含めて難しそうなイメージです。

大須賀:いえ、難しくないんですよ。実は契約書の作成は思っている以上にすぐにできます。本書では、独占販売権の取得方法はもちろん、BtoB輸入ビジネスのやり方を7つのステップにわけてわかりやすく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

――海外の方とのコミュニケーションの取り方で気を付けるべき点を教えてください。

大須賀:当たり前ですが、挨拶を欠かさないですとか、あとはビジネスマン同士の交渉だということを忘れないことですね。どうしても日本人は「自分はお客である」という感覚が強くなりがちですから、気を付けないといけないところです。

ただ、貿易ビジネスについて、日本人というだけで優位性が高くなるのは事実だと思います。信頼性は高いですし、リスペクトを受けていると感じられることは非常に多いですよ。

――この本で書かれているビジネスは新規事業向けですよね。独立しようと思っている個人が新たな儲けの種を得るためのノウハウを学ぶことができる一冊だと思いますが、どんな点を重点的に読んでほしいですか?

大須賀:ビジネスにおいて価格を自分でつけられる立場に行くことが大事と言いましたが、それと同時に独自の付加価値をつけることも同じくらい大事だということです。あなたのビジネス、扱っている商品の強みはなんですか? と聞かれたときに「えーっと...」と考えずに言えるようにする。これがすごく重要なんです。

――どんな人が輸入ビジネスに向いていると思いますか?

大須賀:感性が若い人、好奇心が旺盛な人ですね。

――『ユダヤの商法』の藤田さんももともとは貿易商から身を興していますが、本を読むとすごく好奇心溢れている方だなと思いました。

大須賀:そうなんですよね。あと、歴史的な偉人で言うと、坂本龍馬も貿易会社を立ち上げていますからね。

輸入ビジネスで扱う商品は物じゃなくてもいいんですよ。知的財産、サービス、ビジネスの仕組みなんでもいい。今、日本が最も力を入れている輸出物の一つにアニメなどのコンテンツがありますが、それも貿易の一つの商品になるんです。逆に輸入ならば、アメリカの最先端のマーケティング手法を仕入れるでもいいわけですね。

――では最後に、本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?

大須賀:一番は経営者、社長ですね。世の中の変化が速い中で、どんどん新しい手を打ちながら改善をしていかないといけない。今はどんなに良い会社でも、20年後、30年後で同じ状態を維持してやっていけるかというと、そうではないでしょう。次世代に受けつないでいくためにも、新しいビジネスに足を踏み込んでいくことはとても大事ではないかと思います。

また、独立したいと考えているビジネスパーソンや個人事業主の方々にもおすすめです。実際個人で輸入ビジネスを立ち上げられている方も多いですし、本書はその方法も書いているのでぜひ参考にしてほしいですね。

(了)

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