「働き方改革」という言葉が使われだして以来、自社の労働状況を変えようと、様々な企業が改革に取り組んでいます。
しかし、働き方改革の支援を行うクロスリバー社が500社以上にヒアリングをしたところ、80%以上の会社が取り組んでいるものの、「成功している」と答えたのはわずか12%というさんさんたる結果だったそうです。
では、「働き方改革」が成功する企業と失敗する企業の違いはどこに生まれるのでしょうか。
同社の代表取締役社長である越川慎司さんは、調査データと実際の支援現場のヒアリングをもとに分析した結果、企業側の働きかけとともに個人の行動・意識の変化が成功の重要な要因になってくると述べます。
その分析を元に個人がすべき働き方の変え方をまとめた『働きアリからの脱出 個人で始める働き方改革』(集英社刊)を参考に、働き方改革が成功する会社の特徴、生産性の上がる働き方をしている人とそうでない人の違いについて説明してきましょう。
越川さんは本書の中で、業務の生産性を上げて"働きアリ"から脱出している人たちの共通点として「働きがいを感じているかどうか」をあげています。
では、一体に何があれば「働きがい」を感じられるのか。調査をすると、おおむね3つのキーワードに集約されるといいます。
「承認」「達成」「自由」です。
「承認」は、自分が他者から必要とされていると感じること。外部から感謝の言葉をかけられることが多い営業よりも内部仕事が多いエンジニア、男性よりも女性、そして若い人より年配の人が、この「承認」を求めている傾向にあるといいます。
「達成」は、売上目標を達成した、大きなイベントをこなした、繁忙期が終わったなどのポジティブな区切りのときに感じます。モチベーションや自信向上につながりますが、日本企業は各部門の責任範囲が不明確なことが多く、達成感を感じにくいという傾向があるようです。
最後の「自由」は、与えられる自由(freedom)ではなく勝ち取る自由(liberty)です。働き方改革は会社の成長と社員の幸せを両立させないといけませんから、好き勝手に働いて良いということではありません。成果を残すことにより、仕事の裁量や時間の使い方、昇給といった責任を伴う自由を勝ち取ることが必要です。
越川さんは、クロスリバー社の調査の結果、「働きがい」を感じている社員は成果もしくは効率が1.5倍高く、厚生労働省の2014年5月の調査報告では「働きがいがある」と回答した人の勤める48%の企業が業績の上昇傾向にあるといい、社員の「働きがい」の向上と企業の業績の向上は連動しやすいと述べます。
そして、この結果から、会社の成長と社員の幸せを両立させるには、「働きやすさ」よりも「働きがい」にフォーカスし、その向上を目指すことが必要だと指摘します。つまり、「働き化改革」は総務・人事の改革ではなく、経営改革の一環として、全社的に取り組むことが求められるのです。
「働きがい」を向上し、目標を達成したり、時間的・経済的自由を得て「働きやすい」環境をつくるために、個人でできることはたくさんあります。逆に言えば、これができないと、今の働き方から抜け出すことが難しくなるというものばかりです。
本書からいくつかピックアップしていきましょう。
ITツールは労働時間を一気に削減してくれるような便利なもの。例えば、「テレワーク勤務」は通勤時間を減らし、集中力を高めて作業をすることができます。ITアレルギー対策は「習うより慣れろ」で実践あるのみ。効果を実感することができれば一気に苦手意識がなくなるはずです。
現代で求められている人間は、考えてから動くのではなく、まず動くタイプ。意識は動いてから変わるものです。まずは行動を起こせる人になることが「働きやすい」環境を作るための一つの要素になります。
時間のムダの代表例ともいえるのが「会議」です。事前情報も目的もなく、意見も結論も出ないムダな会議をなくすためには、自分がとりまとめ役となって変えてしまうことも一つの手段です。ここで改善ができれば、社内で評価され、社外でも応用が可能。多様なメンバーを取りまとめられる力は今後も重宝されます。
これは「安請け合いをしない」ということ。曖昧な約束は相手を惑わせてしまい、信頼を損なわせてしまう可能性があります。例えば、「一生懸命頑張ってみます」や「すぐに終わらせます」という言葉を使わないようにしてみてください。
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本書を読むと、なぜ「働き方改革」は成功していないのか、そして、「働き方」を変えるために必要なものは何かということが分かるはず。しかし、一人の社員が個人で変えるといっても、コントロールできる部分とできない部分があります。だからこそ、できる部分ことから率先して変えていくことが大切です。
また、経営者や管理職は「働きがい」を高めることが業績の向上につながることをまず念頭に置くべきでしょう。ではその「働きがい」はどこから来るのか。本書を読んで参考にしてみてください。
(新刊JP編集部)
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