大統領就任後100日とされる「ハネムーン期間」が終わったということで、米マスコミのドナルド・トランプ氏への風当たりは目に見えて強くなり、中東やヨーロッパの宗教聖地を持つ国々を外遊中の今も、弾劾の声はやむことがない。
目下その矛先になっているのが、選挙での勝利直後からささやかれてきた「ロシア・スキャンダル」だが、トランプとその側近の怪しい交際の相手はロシア関係者だけではない。
「闇の支配者」という切り口から、世界の裏事情について独自の見解を発信するジャーナリスト、ベンジャミン・フルフォード氏は『トランプ政権を操る[黒い人脈]図鑑』(扶桑社刊)で、トランプ氏周辺の人脈に注目。それぞれの背景から浮かび上がる「疑惑」や知られざる過去について触れている。
■トランプの娘・イヴァンカの結婚は「政略」か
中でも大統領上級顧問でトランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏についての記述が興味深い。
現政権で非公式ながら外交顧問とされているヘンリー・キッシンジャーをトランプ氏に紹介し、イスラエルのネタニヤフ首相とトランプ氏の会談を取り持つなど、クシュナー氏は政権発足当初から際立った存在感を示している。
この存在感は「血」によるところが大きい。クシュナー家は祖父母の代に現在のベラルーシからアメリカに移民したユダヤ人一族。祖父が興した不動産投資事業を三代にわたって発展させてきたクシュナー家は、典型的な「ユダヤ人大富豪」であり、アメリカ内外のユダヤ人有力者に太いパイプを持っている。
ネタニヤフはもちろん、キッシンジャーもまたユダヤ系である。30代半ばという年齢にもかかわらず、これだけの大物との間を取り持てるのは、クシュナー家の持つユダヤ人脈あってのことなのだ。
クシュナー家のこの力を、トランプ氏は露骨に利用している。ユダヤ人社会の意向がアメリカの政治経済に与える影響力の大きさについてはすでに知られている通りだが、それだけに2009年のトランプ氏の娘・イヴァンカとジャレッド氏の結婚には、「政略結婚」という見方が付きまとう。
この見方によると「自身のビジネスのために、わが娘をプロテスタントから正統派ユダヤ教徒に変えてまで結婚させたトランプ氏」ということになるが、大統領就任後もジャレッド氏を重用するところからは、イスラエルを含むユダヤ人社会に目配りするしたたかさが垣間見える。
さわやかなルックスで、頭脳明晰、“イクメン”としても知られるジャレッド氏。フルフォード氏は「モサド(イスラエルの情報機関)が米国に送り込んだ人間」としているが、真相はどうなのだろうか。
■「トランプ暗殺」その過激なシナリオ
本書で最も過激な一節は、「トランプ暗殺」に関する箇所だろう。
フルフォード氏によると、アメリカでは実際に「いずれトランプが暗殺される」と思っている人が多く存在し、ネット上で「トランプ暗殺」を示唆する人物は、FBIやシークレットサービスが追い切れないほどに膨らんでいるという。
氏による「トランプ暗殺」のシナリオだが、特異なのは、キーパーソンとして副大統領のマイク・ペンス氏を挙げている点だ。
「私がどういう人物かと言えば、クリスチャン、保守、そして共和党という順だ」と語るほど敬虔なカトリック信者であるペンス氏は、トランプ政権内における「キリスト教利権の代理人」だとフルフォード氏は見ている。一方でトランプ氏もプロテスタント信者だが、人生における宗教の優先順位は低い。
両者の亀裂になりうるのが、キリスト教世界最大の権威であるバチカンが支持する「世界政府建設」だ。この計画への意見の相違が暗殺に結びつく可能性をフルフォード氏は指摘する。
政治家である前にキリスト教徒でありたいペンス氏がこの計画に反対する理由はない一方、「アメリカ第一」を掲げるトランプ氏は反対する可能性が高い。世界政府建設に反対するトランプをキリスト教宗教界が暗殺し、大統領権限を継承した「キリスト教利権代弁者」ペンス政権のもとで、晴れて世界政府建設が発表される、というのがフルフォード氏の目する「トランプ暗殺」のシナリオなのだ。
ありそうにない話だが、アメリカは実際に大統領の暗殺が起きた国であり、その度に様々な陰謀論が乱れ飛んだことも確かだ。そう考えると、常にトランプ氏の背後に立っているペンス氏が、トランプ氏亡き後の大統領の座を虎視眈々と狙っているように見えるのは気のせいだろうか……。
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本書では、この他にもトランプ氏の周辺の人物について「フルフォード節」がさく裂する。「信じるか信じないかはあなた次第」といった部分も多いが、とにもかくにも刺激的なのは間違いない。
(新刊JP編集部)
『トランプ政権を操る[黒い人脈]図鑑』(扶桑社刊)