会社の給料だけでは先行きが不安。老後の資金をもう少し蓄えておきたい。
そんな思いから副業ビジネスを始めたいと考えている人は少なくないだろう。
今、副業ビジネスには新たなトレンドがある。それが「民泊ビジネス」だ。
そんな「民泊ビジネス」のはじめる方法と、しっかりとした収益を上げるための秘訣を教えてくれるのが『特区民泊で成功する!民泊のはじめ方』(秀和システム刊)の著者、新山彰二さんである。
「民泊ビジネス」を始めるにあたって必要なスキルは何か。そして、ビジネスを続ける上で必要な心構えと考え方をうかがった。
(取材・文:大村佑介)
――「民泊ビジネス」に向いている人というのはどんな人ですか?
新山:どんなビジネスでも同じだと思うのが、人によって、合う合わないというのがあると思うんです。
例えば、僕自身は以前に、インターネットでの物販ビジネスをやっていたのですけれど、物販自体が好きだったかというと、ちょっと微妙だった部分はありました。
そのときに僕が扱っていたのは、「レディースアパレル」です。物販としては、当時は競合も少なかったのと、仕組みをつくれば利益が出しやすかったので続けていたのですが、「利益は出るけれど、やっていてあまり楽しくないな」と思うようになったんです。
そこで、レディースアパレルの物販には見切りをつけて、一から民泊ビジネスをはじめることにしました。不動産はもともと興味があったのと、実際に始めてみて性に合ったこともあって、やっていても楽しかったんです。僕の場合、それが今のビジネスにつながっている感じですね。
なので、フィーリングは大事だと思います。お客様のために使いやすい部屋に仕立てたり、おしゃれな空間をコーディネートしたり、海外からのお客様とのコミュニケーションにしたり、そういうことに興味があるなら、民泊ビジネスが楽しいと思えるかもしれませんね。
――では、「こんなスキルを持っているといい」というものはありますか?
新山:そうですね。不動産やインテリアコーディネートに関する知識や経験があるといいかもしれませんが、正直に言えば「ないよりはあったほうがいい」というところです。
このビジネスにも先達の方々がいらっしゃいますから、その方々のやりかたを真似したり、お話を聞いて学ばせてもらったりするほうが、下手に知識を持っているより回り道にならないことがあります。
それ以外で言えば、しいて挙げるなら英語の翻訳スキルですが、これも「絶対に持っていないとダメ」というわけではありません。
仲介サイトに載せる物件の紹介文や、海外のお客様とのメールでのやりとりなどで英語は使いますが、じつは、僕自身、今でも英語は喋れないんです(笑)。
今はネットで英語の翻訳ツールが使えるので、それで最初は事足ります。もし、周りに英語ができる方がいれば、翻訳ツールでつくった文章をチェックしてもらえばいいと思います。
僕は、もともと英語が苦手だったのですが、日々、英文と向き合っていると、「なんとなくこんなことを言っているな」というのは理解できるようになっていきます。まさに「習うより慣れろ」ですね。
英語で戸惑うことがあるとすればスラングや短縮記号ですね。たとえば、「Thank You(ありがとう)」を「Tq」、「I see(わかった)」を「IC」と書いたりすることがあります。
さすがにこういう言葉はツールでも正しく翻訳されないので、知っておいたほうがいいかもしれません。
――最後に、「民泊ビジネス」をする上で、大切にしていることはなんですか?
新山:ひとつは、来てくれるお客様、物件を貸してくれるオーナーさんや事業にかかわってくれているパートナーさんたちとWIN-WINの関係を築くことです。
たまに、他の民泊で宿泊したお客様から「意外に部屋が狭かった」「部屋が汚かった」という不満の声が上がった、という話を聞くことがあります。
そうなってしまうと宿泊されたお客様が不満を持つのはもちろん、そのゲストとのトラブルなどがあると、物件を貸してくださっているオーナーさんも快くは思いません。
でもそれは、もしかすると部屋を清掃してくれているパートナーさんにきちんと指導しておらず、支払う給料がすくないせいかもしれません。
清掃の方が給料に不満を持っていて、オーナーさんも運営の仕方に不満があって、泊まってくださるお客様も不満を持つ。これでは先々やっていけませんよね。
もちろんビジネスですから、最終的には、自分も収益を上げるという形でWINになっていかないと続けられるものではありません。
民泊ビジネスに限ったことではないですが、事業に関わるすべての人が、WINになる形で回してしていく。やはりそこは一番大切にしないといけないポイントです。
もうひとつは、「仕組化」です。
じつは、他の民泊をされている方でも、意見が分かれるところなのですけど、おもてなしを大事にするために、自分の家の一部を宿として提供する「ホスト滞在型」と言われる民泊のスタイルがあります。
もちろん、それもひとつのスタイルとして良いものだと思っていますが、僕は「ホスト滞在型」はしないと決めているんです。
なぜかというと、自宅を提供しておもてなしをしていくスタイルだと、ビジネスとしては拡大していきにくいんです。
今後、オリンピックに向けて、外国人観光客の数は4000万人を超えるといわれています。それだけのお客様を迎えるのであれば、ちゃんとした仕組みを整えて、自分がいなくてもお客様を受け入れられる体制をつくるべきだと思うんです。
今、私が大阪の特区民泊で運営している物件は、僕自身はお客様のお相手はせず、チェックインカウンターを専門にされている業者さんに依頼しています。そこで、名簿への記帳と鍵のお渡しと部屋の案内もしてもらっています。
プロの方にやってもらうのでお客様の満足感も高いですし、何かあってもすぐに対処できる「仕組み」をつくっているわけです。
個人でビジネスをやっていると、病気になって動けないとか、外せない用事ができて対応が遅れてしまうという事態も起こりえます。その時に、自分がいなくても回る「仕組み」があることはとても重要なんです。
もちろん、全部が全部任せきりというのもよくはないですが、ひと通りの作業は自分でやって、それをやった上で自分より優秀な人に任せられる部分は任せていく。
そうやっていくことで、ビジネスは成長していくものだと思います。
(了)