本を知る。本で知る。

「プライドだけ高いダメ社員」に必要な荒療治とは

 どんな職場にもいるであろう、プライドだけ高く実力の伴わない「残念な新人」。

そんな部下を前にしたとき、上司はどう接するべきか。
また、もし自分がそのような新人になってしまっているかもという自覚があったとして、なかなか最初の一歩を踏み出せずにいたとしたら、何をすればいいのか。

これまでに5000人超を変革してきた人事のプロにして、『入社1年目からの仕事の流儀』(大和書房刊)の著者・柴田励司さんにお話をうかがった。

■「プライドの高い」新人の成長を促すために、周囲と本人が意識すべきこと

――どんな仕事でも、社内外での人間関係を良好に保つことは欠かせないと思います。柴田さんは本書のなかで、上司との関係を良いものにし、「育てたい!」と思ってもらうには、「チャーミングな部下であることが必要」と書かれていますが、ここでいうチャーミングさとは、どのようなものなのでしょうか。

柴田:逆に、「チャーミングでない人」をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。

たとえば、上司からミスを指摘されたとき、「いえ、自分はこういうつもりで……」と自分を守るための言い訳に必死になる人。これは「チャーミングでない」部下です。

言い換えれば、これは人として「閉じてしまっている」ということ。上司との間に距離を作ってしまっている状態にほかなりません。

上司にしてみると、叩くことも触れることもできない。上司も人の子ですから、「じゃあ、勝手にすれば」となってしまいます。結果、その部下は成長が止まり、まわりから相手にされない人になってしまいます。

――いま、「閉じている」という表現が出ましたが、逆に「開いている」状態が「チャーミングさ」につながるということでしょうか。

柴田:その通りです。犬がゴロンと横になり、飼い主に「腹を見せる」ことがありますよね。まさにあのイメージです。部下の側に、何かを学びたい、吸収したいと強烈に思うだけの飢餓感があれば、自ずとこのような接し方になるでしょう。

頭を下げ、教えを乞うことに何の抵抗も感じない。そうした習慣を若いうちに身につけておくと、歳をとって新たな環境に飛び込んだときにも、同じことが苦もなくできるので、必ず役立ちます。

――プライドの高い人ほど、「チャーミングでない部下」になってしまいがちな気がします。そうした部下を持つ上司にアドバイスをするとしたら、何と伝えますか。

柴田:まずはやはり、部下の高くなった鼻を一度へし折ることをお薦めします。もちろん、へし折るだけではモラルハラスメントになってしまうので、部下の自信が回復するまでフォローしてあげるということとセットですが。

日本の教育システムではどうしても、同じような教育水準、同じような経済水準の人に囲まれて育っていくことになります。

そのことに自覚的でない人ほど、社会に出たとき、自分と異なる価値観を持つ人を理解できず、「まわりが見えていない人」になってしまいがちなんです。そして、プライドの高い人ほど、こうなったときに、「自分は間違ってない」と自分の殻に閉じこもり、ますます状況を悪化させます。

だからこそ、そういう「見えていない」人に対して、「あなたがこれまで生きてきた世界がいかに小さいものであったか」を知らしめることは重要です。その部下が賢ければ、「自分を守るのではなく開いていったほうが得だな」と気づきますから。

――では逆に、「自分はプライド高いがために、色々と損しているかも……」と自覚していながらも、変化に向けた一歩を踏み出せない部下がいるとして、何とアドバイスしますか。

柴田:自分に対して当たりがキツい上司との時間をたくさん持つこと。これに尽きますね。上司の当たりがキツいケースというのは、大まかに言って3パターンあるんです。

部下のことが嫌いなケース、部下に期待していて「こいつのことを鍛えてやろう」と思っているケース、あとは単に上司の性格が悪いというケース(笑)。

いずれにしても、こういう人と時間を共有すると、色々と発見があるものです。「自分はプライドが高い」という自覚があるなら、まずはこのアプローチをお薦めしますね。

――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

柴田:この本を書くにあたって意識した読者は、「大企業に入社して、自分を見失いそうになっている人」と「中小企業に入社して、『これでいいのか?』と自問している人」でした。

前者の場合、仕組みが整理され、役割分担がはっきりしているため、全力で仕事をしなくとも日々は過ぎていきます。結果、本来持っていたであろう力をだいぶ余したまま歳を重ねてしまうことが少なくありません。

後者の場合は、入社1、2年目でも大きな権限を与えられて仕事をさせてもらえるにもかかわらず、ロールモデルがいないため、気づけば「入社3年目になっても、1年目と同じ仕事をしている」という状況になりがちです。

この本には、どんな環境で働くにしても、自分の成長を加速させるためのノウハウが網羅されています。いずれの人にとっても、読んでみれば、何かしら発見があるでしょう。

また、読んでみて「ふーん」で終わらせるのではなく、少しでも気になったところは実践してもらいたいですね。さらには、実践したものについて、あたかも自分の言葉であるかのように他人に語ってみてほしい。

これだけのことで、現状を打破するための糸口は充分つかめると思います。
(了)

 ~~~「リアル」入社1年目からの質問 ~~~

『入社1年目からの仕事の流儀』は、そのタイトル通り、新入社員のうちに身につけるべき仕事の流儀が数多く紹介されています。 
ただ、実際に読んでみて思い当たるフシがあればあるほど、「もっと詳しく話を聞かせてほしい!」となる読者の方もいるはず。 

そこで、読者代表として、出版社に勤める新入社員2名にご登場いただき、柴田さんに質問をぶつけてもらいました。 
2回に分けてお届けします。

今回は、企画営業部で働くN君にご登場いただきます。地方出身。パワフルな仕事が持ち味で、最近は効率的な仕事を心がけているそうです。

Q.朝、やることリストをつくって仕事を始めるものの、時間通り終わることがほぼありません。
この状況をどう捉えるべきか、アドバイスをお願いします。

A.書籍でも紹介しましたが、若い方がキャリアを積み重ねていく上では、一定期間、集中して仕事の量をこなし、基本的な「型」を身につけることが不可欠です。この前提を踏まえ、今のあなたが時間不足に陥っている原因を冷静に見極める必要があります。
考えられる原因は二つ。まずあなたが、その「修行期間」を終えていないだけという可能性があります。
もう一つは会社のシステムに問題があるパターン。これは、私のような会社の長が解決すべき問題です。

私は現在、マードゥレクスという化粧品の会社で代表取締役会長をしています。そこでは以前、部署ごとに資料が分割されていたため、一つの化粧品の情報を見るにも、関連する部署一つひとつに訊ねなければならない状態でした。

そこで私は情報の一元管理を提案し、実行に移したのですが、これだけのことで業務に必要な時間が劇的に改善されました。

以上、時間が足りないのは、自分の力不足が原因になっているケースもあれば、会社の業務システムのマズさが原因になっているケースもあるということを頭に入れておいてほしいですね。

『入社1年目からの仕事の流儀』の著者、柴田励司さん

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