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言葉や価値観の押しつけはNG チームの成果を最大化する話の伝え方

 さまざまな年代の人間が集う職場において、世代間の価値観の違いはコミュニケーションの齟齬に結び付きやすいものだ。

また、「飲み会離れ」「ワークライフバランス」といった言葉に代表されるように、プライベートでは会社の人間と顔を合わせたくないという人も増えてきた。

そんな中で、チームで結果を出すために上司やリーダー的立場の人間はどんなことをすればいいのだろうか。

『苦手意識がなくなる会話術』(大和書房刊)の著者であり、26年間、コミュニケーションの研修講師としてさまざまな企業の現場を見てきたアドット・コミュニケーション株式会社代表取締役の戸田久実さんにお話をうかがった。

■世代間のコミュニケーションの齟齬を解決するためには

――先ほど、上司層から「最近の若者は…」という声が出てくるというお話をされていましたが、コミュニケーションの齟齬が生まれる中には、世代間の価値観の違いも大きい要因になっているのではないですか?

戸田:確かにあるでしょう。というのも、育ってきたときの環境が違うのにも関わらず、どちらも自分の世代の価値観が当たり前だと思ってしまっているという背景があります。

例えば上司の世代ですと、よく叱られてきたり、先輩や上司の背中を見て学べと言われたり、1を見て10を盗めといったことを言われてきました。だからそれを下の世代にも期待しているんです。「言わなくても分かるでしょう」というのはそこから来ています。

一方、若い世代は「言われれば素直になんでもこなす」タイプが多いように思います。でも言われないことはやらないし、失敗や怒られることに対しても上の世代よりは過敏な傾向があります。

おそらくですが、彼らの側には子どもの頃から常にマニュアルがあったのだと思います。テレビゲームをするにしても、一緒に攻略本を買って、その攻略本に沿ってクリアをする。

人間関係にもそういう期待があって、研修などで「マニュアルはないんですか?」と聞かれることが多いんです。「こういうときに何て言ったらいいのですか?」「これで合ってますか?」と。

適したコミュニケーションの形は相手によって違います。同じ回答で全員が満足するわけではありません。基本的な形はありますけど、誰に対してどういう状況でも通じる回答はないんです。

――答えを教えてもらえば間違わずに済みますからね。

戸田:就職をすると、いきなり自分より上の様々な世代とコミュニケーションを取らないといけなくなります。その戸惑いが大きいのだと思います。自分の親くらいの年齢の方もいるかもしれませんし、何を話していいのか分からないと不安になっている若い世代も多いですね。

――よく腹を割って話す場として「飲み会」があがりますよね。そういった「飲みニケーション」は効果的だと思いますか?

戸田:飲み会の質によりますね。本当にざっくばらんに話せる場であればいいけれど、説教は押しつけのコミュニケーションになってしまうのでNGです。逆効果ですね。

最近ではワークライフバランスを大切にして飲み会を断る若い世代も増えているので、そもそも飲み会ができないということもあるかもしれません。そういうときは、ランチ会を効果的に使っている企業もあるので取り入れてみてもいいでしょう。

――本書の冒頭にあるアンガーマネジメントの説明の部分で、「怒る」「怒らない」の境界線を明確にするとありました。これは「なるほど」と思ったのですが、その境界線の基準はどこにおけばいいのでしょうか。

戸田:これは怒った後に自分が後悔するか、後悔しないかで決めるべきです。注意をしようと思ったけど「まあしょうがない」と思って言わなかったら、そのミスが膨れ上がって取り返しのつかないことになっていたことってないですか?

言っておいた方がいいと思ったことは言った方がいいことです。逆に大したことがないと思うならば、言わないでいたほうがいいでしょう。

これはビジネスシーンだけでなく、男女間でも強く言えることです。例えば服を脱ぎっぱなしにする夫に対して怒るかどうか。もし、脱ぎっぱなしにしているのが本当に嫌であれば、素直に言った方がいいでしょう。言わないままでストレスを溜めると、それが大きな不満に結び付いていくわけですから。

――ただ、何度言ってもなかなか直らない人もいます。注意をして「分かりました!」「今後意識します」と言ってその後しばらくは直っているけれど、慣れてくるとまた同じミスをする。そんな人にはどう声をかけたらよいのですか?

戸田:何故そのミスをしてはいけないのか、ということがしっかり伝わっていない可能性があります。このミスを続けることによって、どんなデメリットがあるのか、どんな人にどんな迷惑がかかるのかが分からないから同じことを繰り返してしまうんですね。

人間は何か言われても、腹落ちしないと自発的に行動を起こさないものです。習慣化するには納得することが必要で、この一つのミスをすることで、どこに迷惑をかけ、どれだけその人の信頼を下げるのかを説明しなければそこまでには至りません。

アンガーマネジメントでは、一度お願いしたら見逃さず、ぶらさずに習慣付くまで言い続ける必要があります。もし相手がまたミスをしても同じことを言い続ける。それを繰り返していくことが大事ですね。

習慣化するには時間がかかります。何でもすぐにできるようになるのは難しいですから、多少ゆとりを持って言い続けましょう。「お前何回もミスするよな」「直す気ないの?」というワードはタブー。余計なひと言がそれまでを台無しにしてしまうことがあるので。

――最後に『苦手意識がなくなる会話術』をどのようにして読んでほしいですか?

戸田:まず目次を見ていただき、自分が課題としている部分から読んでいただければと思います。コミュニケーションは、本を読んだだけでなく行動に移さないと意味がありません。少しずつ自分に自信を持って取り組むことで、苦手な相手や場面も大きく変わると思います。

相手との関係は、一歩踏み出すことで変えられます。それを信じながら取り組んでほしいですね。

(新刊JP編集部)

『苦手意識がなくなる会話術』の著者、戸田久実さん

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