■「ライフハッカー[日本版]」で書評を書き続けている「印南敦史」とは何者なのか?
ネットニュースを普段からチェックしているならば、この構図で撮影された本の画像を見たことがあるはずだ。
作家・ライターの印南敦史さんがウェブメディア『ライフハッカー[日本版]』に寄稿している書評記事のアイキャッチ画像は、全てこのデザインに統一されている。
その理由を印南さんは次のように語る。
印南:ああいう構図にしているのは、僕がもともと広告の仕事をやっていた関係で、“見え方”を気にしてしまうからです。イメージを固定したほうがいいなと思って、自分から提案しました。
ビジネス書などが中心ですし、見ればすぐに「ライフハッカー[日本版]」の書評記事だということが分かるようにしたいと思って、マックの上に本を置くという構図をアイコン化しようと考えたんです。ちなみに、あの写真は全部自分で撮影しています(笑)。
ここ数年、この構図による本の画像を至るところで見かけるようになっているが、それを生んだ印南敦史とはどのような人なのだろうか?
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今年2月に出版され、11月にはオーディオブック配信サービス「FeBe」にてオーディオブックの配信がスタートした印南さんの著書『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社刊)は、2016年に出版された読書術の本でもひと際目立つ存在だ。
本書は「読むのが遅い」「すぐに内容を忘れてしまう」と悩んでいる人たちを中心に支持を集めている。
こうした本や記事も相まって「印南敦史」という名前を聞いて、読書や書評のイメージを強く持つ人もいるだろう。しかし、もともとは1990年代から音楽、それもヒップホップやR&Bなどブラックミュージック・シーンでライター、編集者として活躍してきた。
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――もともと印南さんは音楽媒体でご活躍されてきました。書評記事で初めて知った読者からすると意外だと思われるでしょうけど、ライターを始めた経緯をお聞かせください。
印南:もともと小さな広告代理店にいたんですが、そのうち飽き足らなくなってきたんですよね。そこで、音楽が好きで、書くのも好きだったので、音楽ライターを始めよう、と。
ただ、どうすればいいのか分からなかったので、知り合いの編集者に聞いてみたんです。そうしたら「(ライターになる方法は)持ち込みだよ」と言われたので、「そうか」と思ってそれまで勝手に書きためていたレコードやCDのレビューをいろんな音楽系雑誌に持ち込んでみたんです。
実際にライターになってみたら、誰も持ち込みなんかしてなかったんですけど(笑)、ともあれその結果として『ミュージック・マガジン』から声をかけていただき、そこから媒体数が増えていきました。
――それがライターの活動をはじめるきっかけだったんですね。広告代理店の仕事も並行しながら?
印南:そうです。ダブルワークですね。当時は昼間は会社勤めをして、夜に家に帰ってご飯を食べてからまた都心に出て、クラブで朝まで取材。帰って1時間寝て、また会社に行って…というような生活をしていました。
――まったく寝られない生活ですね。
印南:でも楽しかったですよ(笑)。
――その生活はいつまで続いたんですか?
印南:ライターを始めて1年くらいですね。実は会社がアルバイト禁止で、別に僕自身は「アルバイトをしている」という気持ちでもなかったんですけど、あるとき上に呼ばれたんですよ。それで、「お前アルバイトしているだろ。どうするんだ」と言われて。「どうするって、どういうことですか?」と聞いたら、「それをやめるか、会社を辞めるかだよ」って言われたんで、「じゃあ会社やめます」って(笑)。
その時、子どもがまだ1歳でしたし、妻には心配をかけてしまったのですが、いいタイミングでブラックミュージックの専門誌から編集長として来てほしいと言われて。
――その後もしばらく音楽雑誌でライター活動しながら、音楽に関する書籍も出版されています。そこから書評の世界に向かうのは想像できなかったのではないですか?
印南:全く想像できなかったですね。でも、ひょんなことから「書評書きませんか?」という依頼をいただけて。
――『遅読家のための読書術』でも書かれていましたが、当時、本を読むスピードがすごく遅かったとか。
印南:そうですね。今でも遅いですよ。
――1日1本の書評は大変だったのではないですか?
印南:でも逃げたら、ライターとして終わってしまいますからね。それにもともと“地味に地道に”やっていくのが向いているので、できることを地道にやっていこうと。
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今や「ライフハッカー[日本版]」のみならず「Newsweek日本版」「WANI BOOKOUT」などのウェブ媒体から「ダ・ヴィンチ」のような紙媒体にも書評を寄稿している印南さん。こうなると気になるのがどのように本を読み、本の内容をまとめているのかというところだ。
インタビューの後編では印南流読書術について深く迫っていく。
(新刊JP編集部・金井元貴)
この構図の写真、見覚えありませんか? このデザインを生んだ男の正体とは