「本は読んだ方がいい」、そう言われる機会は多い。
しかし、なんとなく本を開いてページをめくり、字を追い掛けていると、途中で飽きてしまい、そのまま放置…ということも少なくないはずだ。そして、本の全容も分からないまま、なんとなく読んだ気になっている。
言っておこう。それでは、本をいくら読んでも自分の成長につなげることはできない。
読書は著者と読者の「戦い」であり、たった一人で考え抜くことこそが成長を促す。もし、あなたが本気の読書をしたいのであれば、「孤独」になるべきだ。
■これはあまりにも「非常識」な読書術だ!
最近出版された読書術の本の中でも、異色ともいえる本がある。その一節を引用しよう。
読書とは自分を分析、つまり見つめ直すためにあるのだと私は思っている。
ひいては、自分だけではなく、
「人間とはどういう生き物なのか。
善なのか悪なのか。偉いのか愚かなのか」
と、たまには深刻に考えるために読書が必要なのだ。ゲーテほど頭が良くない我々は、書物の力を借りないと、「人間とはどんな生き物なのか」「日本人はバカなのか偉いのか」は分からないはずだ。
(『「孤独」の読書術』220~221ページより引用)
これは、里中李生氏の『「孤独」の読書術』(学研プラス刊)の中に出てくる言葉である。
里中氏といえば、辛辣で過激ながら常に本質を突く自己啓発論を展開する作家で、男女問わず幅広い層から支持されている。
その痛烈な筆致は自己啓発の世界においては「非常識」極まりないものだが、この本においても、他の「読書術」本にはない、ザクザクと本質を突く言葉が詰め込まれている。いわば「非常識な読書術」である。
そのテーマは「孤独」。本書には「孤独」のエッセンスを学ぶための25冊の本がピックアップされている。そのうちから3冊、紹介しよう。
■孤高に導くニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』
まずはドイツの哲学者・ニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』だ。
「神は死んだ」という名言で知られるニーチェの代表作「ツァラトゥストラはこう言った」。主人公は孤独を求めて山に入り、すべてを悟ったのち人々に語り始める。
里中氏は、この本においてニーチェは「言ってはいけない真理」を語っているという。それは男にとっての女の存在価値であり、軽蔑的表現に満ち溢れている。
愛している。その美しさと私の神経質な心臓を癒す白い乳房を。
憎んでいる。その自己愛主義と、すぐに怠ける足元、口元を。
(『「孤独」の読書術』25ページより引用)
男は女に惑わされ、苦しめられる。そして自分の孤独を知る。それだけではない。友達も家族も仕事も自分の心を埋めてくれはするが、それ以上にはならない。
自分の底に渦巻く、誰にも理解されない欲望を引っ張り出し、悩み苦しみながら「孤高」を目指せばいい。『ツァラトゥストラはこう言った』はそんなことを教えてくれるのだ。
<ページ切り分け>見出し:「孤独に読書に没頭すること」の本当の意味
■自分自身を強く、優しい男にする2冊の本
2冊目は宮本輝氏の『青が散る』だ。大学を舞台に繰り広げられる群像劇で、若い男女の恋愛模様や友情、葛藤や苦悩、そして生死を描く青春小説の金字塔である。
里中氏はこの小説の後半で、ヒロインの夏子が主人公の燎平に、自分を好きなことを知っていながら自分の初体験を饒舌に話す場面を取り上げる。好きな女性にそれを語られるのは想像しただけでも辛くなるが、そこに真理をつかむヒントは転がっているのだ。
女から傷つけられた男はどうすればいい? 『青が散る』という小説を読むことで、男は強くなることができる。
3冊目は安部譲二氏の『日本怪死人列伝』をピックアップしよう。
元暴力団員で元ボクサー、服役経験もある作家の安部氏が様々な「怪死事件」に切り込む。この一冊で、報道だけで取り上げられている情報が全てではなく、過ちは複雑に絡み合って生まれることを知ることができるだろう。
過失を犯してしまった人間は確かに悪いが、その原因を自ら追求せずに叩くのは単純にリンチではないか? 里中氏は、本書を通して、本当に他人に優しくなれる人間になるには何が必要なのかを解き明かす。
■「孤独に読書に没頭してほしい」
本書は他にも、あなたが孤独と向き合うことができる本を多数紹介している。
里中氏は冒頭で次のようにつづり、読書を促す
孤独とは、男がそれを良しとすれば孤高の精神を身に付けることができ、よく言うオーラを纏うこともできるのだから、それほど悪い状態ではない。
この孤独な期間、自分を見つめ直すチャンスだし、
読書をして勉強をするチャンスでもある。
あなたが今、仕事でも恋愛でも限界を感じているのなら、この一年、恋愛も友達作りもやめて孤独に読書に没頭してほしい。きっと大きく成長できるはずだ。
(『「孤独」の読書術』2~3ページより引用)
その本の世界に深く向き合うことが、読書の本当の姿である。その、読書の時間を通じて自分自身とも向き合う。そうしてはじめて「孤独である自分の姿」を見つけることができるのではないか。
本書を通して、自分自身と対峙してみてはいかがだろう。一年後、あなたは急成長を遂げ、数十年後の自分の生き方までをも変えてしまうかもしれない。
(新刊JP編集部)
『「孤独」の読書術』(学研プラス刊)