誰もが知っているような有名人でなくても、あなたのまわりに「ああいうふうになりたい!」と憧れるほど、魅力的な人はいませんか?
でも、漠然と「あの人みたいに…」と願っていても、なかなか近づくことはできません。なぜなら、「その人の魅力とは何か」がわかっていないと、見習おうにも見習えないからです。
そこで参考にしたいのが『超一流の、自分の磨き方』(三笠書房/刊)。
「人間的魅力とは?」というわかりそうでわからないテーマについて、様々な角度から考察をしている本書を読めば、あなたが「あの人」に近づくためのヒントをつかめるはずです。今回は本書の著者である太田龍樹さんに「魅力」お話を聞き「魅力」が人生にどんな影響を与えるのかを伺いました。
――『超一流の、自分の磨き方』についてお話をうかがえればと思います。この本では「人間的魅力」という漠然としたものの正体が説明されていてとても勉強になったのですが、太田さんが「人の魅力」について着目されたきっかけについてお聞きできればと思います。
太田:アリストテレスは『弁論術』で、「ロゴス(論理)」「パトス(感情)」「エートス(人柄)」という説得のための三つの観点を考察しています。「人間的魅力」というのは三つめの「エートス」に近くて、要は話し手に対する信頼や安心感によって説得力が増すということです。「ロゴス」と「パトス」に比べて「エートス」の部分の話は、実は世の中にあまり流布されておらず、それについて考察された書籍も少ないので、私が取り上げることには意味があると考えた次第です。
――太田さんはディベートの専門家として、ビジネスパーソン向けにディベートのノウハウを指導されています。やはりディベートでも、説得力のある人というのは「人としての魅力」の部分も秀でているのでしょうか。
太田:ディベートはルールの中でやるものなので、正直ディベートに強い人が「人間的魅力」もあるかというと、そうとは限らないと感じています。一方で実社会に目を移すと、ビジネスの現場・交渉には、基本的にルールはありません。そういう異種格闘技的な環境の方が「人間的魅力」が説得力に結びつきやすい。私はファイナンシャルプランナーでもあるので、その仕事でお会いする人々は非常に魅力的な人が多い。そういう魅力的な人ほど、やはり仕事でも成果を出しています。
個人的には、ディベートもより実社会と融合する形に変わっていくべきだと思って、私は“新しいディベートのあり方(ネオ・ディベート)”を提唱しています。
――「人間的魅力」の構成要素である「信念」についての章が特に印象に残りました。「信念」の大切さはわかっていても、それを貫き通すのは難しいことです。特に、嫌なことにノーが言えない人は多いと思いますが、こういった人にアドバイスをいただけますか。
太田:正直、信念というものは40代になって初めて芽生えればいいのかなと思います。というのも、20代、30代といった若いうちから信念を持とうとすると、周りの人々に、偏屈で意固地に取られるケースが多いのです。
そのうえで、「ノー」と言えない人へアドバイスをするとしたら、「理由を明確にすることを心掛けてください」ということに尽きます。なぜ「ノー」と言うのかという理由こそが、他者(周り)のことを考えている証(これを、他者意識を持つ、と言います)です。今ここで自分が「ノー」と言うことが全体の利益につながったり、相手にとって良いことだと示せれば大義が立ちます。「ノー」が言えない人はこの部分をあまり考えていないケースが多く、だから、周りの支持を得られないのでは、と考えています。
――大義が立てば「この人がノーというのも無理はない」となるわけですね。となると、大事になってくるのは「言葉の力」ではないですか?
太田:その通り、言葉の力は絶対的に重要です。感受性や価値観、教養などその人のバックグラウンドはすべて言葉に表れますから、「言葉の力」は即、「人間的魅力」につながっていきます。
ボキャブラリーも含め、そういった「言葉の力」というのは、人と会ってコミュニケーションすることで磨かれていきますから、人間関係はやはり大事なのです。
――今、「教養」という言葉が出ましたが、太田さんは「教養」も人間的魅力につながるものとして書かれていますね。これまで「教養」に縁遠かった人がこれからそれを身に付けるなら、どんなことから始めればいいのでしょうか。
太田:個人的には、「国語」と「歴史」が教養の2大アプローチだと考えています。まず国語は何をやるにしても基盤で、コンピュータにたとえるなら「OS」なので、間違いなく重要です。そして、歴史についても、先人達の様々な営みを知ることで、その営みを自分の活動へのヒントにできますから、こちらも大事ですね。
ただ、今から受験勉強をするというわけにはいかないでしょう。
どうやって国語と歴史を学んでいくかということですが、手っ取り早いのはテレビを観ることだと考えています。特にBS放送ですね。地上波では放送しないような歴史番組やインタビュー番組が多いのです。歴史番組を見ていれば、興味を持った時代や人物にまつわる本を買って読んでみようという意欲が出てくるものです。また、インタビュー番組でインタビュアーがどのように質問をしているのかを観察することは、国語力を高めるすごくいい勉強になります。
この本では、芸能人や有名人のエピソードを交えて「人間的魅力」について解説しているのですが、エピソードについてはBSの番組からの引用や、ヒントになったところがいくつもあります。
――特に歴史は、経営者が好んで学ぶイメージがあります。彼らは歴史に何を見ているのでしょうか
太田:人間心理は昔も今も変わりません。たとえば戦国武将が部下をどう動かしていたのかを知ることが、自分の仕事に活きるということはあるでしょうね。
それと、歴史というのは栄枯盛衰で、永遠に続くものはないことを教えてくれます。栄えたものは必ず滅んでゆく。その曲線を見て自分を戒めたり、逆に、どん底にいる場合、ここからトップに登りつめてやろうと決意することも、歴史は教えてくれるものだと思っています。
(後編へ続く)
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