まわりの目を気にしすぎると失敗が怖くなる。また、自分の思うままに生きるあまり周囲に迷惑をかけている人を見れば「ああはなりたくないな…」と思ってしまう。
自分のなかでそんな堂々巡りをするうちに身動きをとれなくなってしまった経験はありませんか?
『もう、「あの人」のことで悩むのはやめる』(サンマーク出版/刊)の著者、玉川真里さんは元々、自衛隊に所属し、臨床心理士として年間2000人以上、これまでに3万人以上の悩みを聞いてきたという異色の経歴の持ち主。本書のなかでは、周囲の目や評価から自分を解放し、なおかつ社会で自分にしかできない役割を果たしていくための考え方として「自分思考」というものを提唱しています。
自分思考とは何なのか。そしてまた、この考え方を身につけるにはどうすればいいのかを中心に玉川さんにお話をうかがいました。今回はその後編です。
――自分思考を強めていくために、手当たり次第に色々なことをやってみることの重要性を説かれています。ただ大人の場合、それまで経験したことのないものに手当たり次第に手を出すというのは、恐怖心をおぼえる人もいると思うのですが、そういうときはどうすればよいのでしょうか。
玉川:まずは、やりたいかどうかを考えることが大切です。大人になると、自分に限界を設けてしまいがちです。やる前から「無理だ」と思い込む癖ができると、自分がやりたいことすらわからなくなってしまう。まずは、自分に向き合ってみて、少しでも興味があり、やってみたいと思うのなら、試してみればいいと思います。そのときのコツは、心の準備をする前に、モノの準備、すなわちお金や道具などの準備から始めることです。失敗を怖がるかもしれませんが、やってみないと失敗も成功もありません。成功よりも失敗の方が成長するために重要なのです。
――本書で紹介されているPTSG(Post Traumatic Stress Growth=心的外傷後ストレス成長)という言葉がとても印象的でした。ある人がショックな出来事が遭遇したとき、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder=心的外傷後ストレス障害)になるか、PTSGになるか、その違いは「問題を受け入れられるかどうかにある」と書かれています。では、問題を受け入れられるかどうかは、何によって決まってくるものなのでしょうか。
玉川:PTSDになるかPTSGになるかは、他者思考を自分思考にできるかどうかにかかっています。他者思考の人は問題を他人や環境のせいにし、自分思考の人は自分の問題として解決策を模索します。私は小学生の時に道を聞かれて親切に教えようとして、男性に乱暴されたことがありました。また、離婚直後に結婚詐欺に遭ったこともあります。しかし、これらの体験があったからこそ、自分の身を守るために少しは強くなければならないと鍛えたりもしました。東日本大震災の被災者の方も、被災したから、家族の絆を強めたという方もおられますし、困難に立ち向かう力を育てたという方もおられます。「誰か」や「あの人」のせいにしていては前向きにはなれません。苦しい時こそ、新たな成長へのステップだと思うことです。
――自衛隊員の心のケアをするなかで、相談者にとっては「許されること」よりも「叱られること」のほうが大事だと書かれていた点も印象に残りました。これは子育てなどにも応用できる話なのでしょうか。
玉川:私はカウンセリングと子育ては、そっくりだと思います。ケガをした時に「あそこに石があったのがいけなかったよね」と親が教えると、次に石を見つけたら、腹立たしく蹴ってしまうかもしれません。しかしこれは、原因を環境という「他者」に押しつけている他者思考にほかなりません。本来転んだのは、石があったからではなく、石に気づかず自分がぶつかったから転んだのですから、しっかり周りを見ていれば防げたかもしれないのです。「しっかり周囲を見ようね」とか「石がありそうな時は走らないほうがいいかもしれないよ」と注意を促せば、その後は、自分で考えて注意した行動をとれるようになるのです。
もちろん、大人を叱る場合はそんなに優しくありませんが(笑)
――本書は、どんな方に、どんな時に読んでほしいですか。
玉川:ちょっと大げさかもしれませんが、世の中の全ての人に読んでもらいたいと思っています。なぜなら、失敗すること、悩むこと、苦しいときがあることなど、生きていれば誰しもが通る道ですから。生きづらい人もより良く生きたい人もこの本を読むことで勇気や行動力がアップすると思うのです。
――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。
玉川:『もう「あの人」のことで悩むのはやめる』は、すべての悩みの根本にあるたった1人の「あの人」を解決するための方法をとことん書いた一冊です。あの上司、あの取引先、あの友人、この家族・・・・・・誰かに癒しを求めたところで「あの人」との問題が解消することはありません。自分自身に本気で向き合うからこそ、解決することができ、人生を変えることができるのです。「最高の人生」は、悩んだ人だけの究極のご褒美だと思います。すでに本書を読んで「人生が本気で変わった!」という人から続々とお便りをいただいています。読んで元気が出る本を書く。これが、東日本大震災の被災者の方と約束したことですが、お一人でも多くの方の手元に届くように祈っています。
(了)
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