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一人三役を演じ分けた小野大輔 オーディオブック制作秘話を明かす

  累計90万部を突破したベストセラー『世界から猫が消えたなら』(小学館/刊)のオーディオブック化を記念した記者会見が、11月13日に東京都内で行なわれ、作者の川村元気さんとオーディオブックで主演を務めた声優の小野大輔さんが登壇した。

 『世界から猫が消えたなら』は、主人公・僕が、ある日突然、余命わずかであることを宣告されるところから始まる。宣告を受けた直後、僕の前にはアロハシャツを着た悪魔が現れ「世界から何かをひとつ消すことで、一日の命がもらえる」という取引を持ちかける。そして僕は、僕の命と引き換えに、電話、映画、時計、そして猫を消すことに…。

 オーディオブック版『世界から猫が消えたなら』は、小野さんが「僕」と悪魔と地の文のナレーターの三役を務めたほか、母役を氷上恭子さん、父役をふくまつ進紗さん、元彼女役を松浦チエさんが務めるなど複数のキャストによって展開するオーディオドラマ形式の作品となっている。
 まず記者会見の冒頭では、オーディオブック版のキャストがどのように決まったのかについて語られた。川村さんは「僕と悪魔という二つの対照的な役を演じ分けられる声優さんはなかなかいない」と思ったことから小野さんの出演を熱烈にオファー。依頼を受けた小野さんはその日のうちに作品を読み作品の世界観に共感。さらに僕のキャラクターと自身のそれとに重なる部分も感じたことから、二つ返事で引き受けたという。

 収録初日には川村さんがスタジオを訪れ、小野さんに「とにかく悪魔役のほうを濃い目に演じてほしい」とオーダーしたという。川村さんは、この発言の意図について「僕と悪魔は最初、“別々の人格”という感じなんですが、物語が進むにつれ徐々に同一化していく。その感じをオーディオブックでも出してほしかったので、物語の最初のほうでは、二人のキャラクターに強烈な差が出るようにしてほしいと思ったんです」と明かす一幕も。
 この発言を受け、小野さんは「川村さんがそういう意図でオーダーしたというのは、いま初めて知りました。でも、たしかに作品を聴くと、川村さんの意図どおりの仕上がりになっていると思います」と自信を見せた。
 さらに制作の裏側について小野さんは「演出スタッフさんからは、かなり細かに“こういうニュアンスがほしい”と指示がありましたし、私からも“こうしたい”という意思表示はかなり強くしました。互いの意見のすり合わせにはかなりのエネルギーを使いましたが、その分、時間をかけて丁寧な作品づくりができました」と満足げな表情だった。
 最後にオーディオブック版の感想を求められた川村さんは「一人の役者さんが、僕と悪魔と地の文という三役を“声だけ”で演じ分けたというのが、ある種、とても演劇的だと感じました」と作品の魅力を語っていた。

 『世界から猫が消えたなら』のオーディオブック版は11月13日よりオーディオブック配信サービス『FeBe』で配信開始している。
(新刊JP編集部)

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