変化の激しい時代、様々なビジネスや商品、サービスが生まれは消えています。
自分でビジネスを興すことを考えていたり、すでにビジネスを始めている人にとっては、このスピード感のなかで継続的に成功することはとてつもなく難しいことのように思えるかもしれません。
ただ、ビジネスを成功へと導くプロである経営コンサルタントからすると、「儲けること」は決して難しいことではないそう。大事になるのは「どうやって儲けるか」という「仕組み」。
『400円のマグカップで4000万円のモノを売る方法――「儲けの仕組み」が、簡単にわかる!』(ダイヤモンド社/刊)の著者で経営コンサルタントの高井洋子さんに、この「仕組み」について、くわしくお話をうかがいました。後編をお届けします。
――経営コンサルタントとして、企業のコンサルティングを多く手がけられている高井さんですが、事業がうまくいっている経営者とそうでない経営者の違いはどんなところにあるとお考えですか?
高井:先ほども少しお話しましたが、自分の直感に従って行動してしまう経営者はうまくいかないことが多いです。性格的に「熱しやすく冷めやすい」タイプで、感情で経営してしまう。対照的に、客観的に状況を見ることができて、常に分析ができる経営者は事業がうまくいくことが多いですね。
――そうした感性や直感でやってきた経営者が高井さんのセミナーに来ると、どういった反応がありますか?
高井:自分の主観と客観の違いに驚く方が多いようです。これは、経営の経験が長い人もそうで、自分が正しいと思ってきたことがただの思い込みだったと思い知らされた、という声はよく耳にします。
――これまで感性と直感を頼りに経営をしてきた方が分析と検証を始めようとしても、おそらくはじめは何をやればいいかわからないのではないかと思います。こうした方々にアドバイスがありましたらお願いいたします。
高井:ほんの一例ですが、飲食店を経営しているのなら、各メニューの注文の数をチェックすることが第一歩ですよね。
そして「儲けが大きく注文数も多いもの」「儲けは大きいが注文が少ないもの」「儲けは小さいが注文が多いもの」「儲けが小さく注文も少ないもの」の四つに分類してみる。
たくさん注文があるけど儲けが小さいメニューが多いなら改善が必要でしょう。
これはごく初歩的なものですが、これも立派な分析です。こういうこともやっていない経営者というのは意外に多いんですよ。
そして、「メニューを改善した方がいい」となっても、根本的に変えることだけが方法ではないということはわかっておくべきです。既存のメニューの形を変えたり、模様を変えたり、既存のメニュー同士を組み合わせただけで驚くほど売れたという例はたくさんあるんです。
――また、事業がうまくいっていないとスタッフのモチベーションも下がってしまいます。
いい時も悪い時もスタッフに高いモチベーションを持って働いてもらうために経営者にはどんなことが求められますか?
高井:スタッフさんは上司から褒められたらうれしいでしょうし、社長から褒められたらもっとうれしいと思います。でも一番喜びが大きいのはお客さんに喜んでもらった時です。
だから一番効果的なのは、お客さんに喜んでもらったらそれがスタッフ個々人に伝わってやりがいになるという仕組みを作ることです。
感情の起伏はどうしても出てきてしまうので、ものすごくやる気になる時もあれば落ち込む時もあります。そこは仕組みの力で、お客さんの喜びを感じることでスタッフが気持ちを保ちやすくなる工夫をしていただきたいですね。
――本書の中でも「フランチャイズ戦略」についての箇所が興味深かったです。優れた戦略であると感じる一方で、店舗オーナーが頻繁に変わってしまうフランチャイズの飲食店を目にすることもあります。「うまくいかないフランチャイズ店」の特徴としてどんなところが挙げられますか?
高井:「成功しているフランチャイズ」と「成功していないフランチャイズ」を見分ける方法として、「オーナーが何店舗加盟しているかを見る」というのがあります。
一店舗目がうまくいったフランチャイズのオーナーは、そこで成功したオペレーションやノウハウが手に入ったわけですから、まちがいなくもっとたくさんの店を持ちたくなるはずです。新しいことを始めるよりも確実にリスクが低いですからね。
オーナーが頻繁に変わるフランチャイズ店は、おそらくうまくいっていないのだと思いますが、儲からなかったり、人が採用できなかったりといったところに原因があることが多いです。
人が集まらないなら、集まりやすい業種のフランチャイズに加盟するとか、そもそも人手がいらないフランチャイズに加盟するとか、オーナーになる経営者それぞれがよく考える必要があります。
フランチャイズでもう一つ注意した方がいいのは、一般的なフランチャイズは店舗が銀座にあろうと沖縄にあろうと商品の値段は同じだということです。銀座と沖縄では家賃も違いますし最低賃金も違いますから、商品の単価が同じなら沖縄の方が儲かることになりますし、東京では売れたものが地方では単価が高すぎて売れないということも起こりえます。
これを考慮して、都心と地方で単価を変えることを認めているフランチャイズもあるのですが、その辺りは本部の考え方次第ですね。
――ビジネスの「仕組み」だけでなく、事業への「想い」も重要だというメッセージも本書からは読み取れます。この「想い」は事業のどんな所に表れるのでしょうか。
高井:「想い」が大事なのは、それがビジネスの「根」になるからです。せっかくビジネスの「仕組み」や「ビジネスモデル」が良くても、「世の中の役に立ちたい」とか「人に喜んでもらいたい」とか、そのビジネスによって何がしたいのか、という「想い」の部分がないと、途中で倒れてしまいます。「仕組み」と「想い」はビジネスの両輪なんです。
――最後になりますが、ビジネスを興そうと考えている方々や、ビジネスを立ち上げたもののうまくいかずに悩んでいる方々にメッセージをお願いします。
高井:覚えておいていただきたいのは、「創業期ほど利益率を大事にすべき」ということです。最初だからといって「利益は小さくてもいいや」と思ってやっていると、次の段階に飛び立てないんです。創業して3年は信用がなくて銀行からお金を借りるのが難しいので、もたもたやっているうちに売上が落ちて立ち行かなくなってしまうでしょう。
――「最初は自分だけが食べていければいいや」という気持ちで始める人は多いかもしれませんね。
高井:特に飲食業はそうかもしれませんね。飲食業は簡単だと思われているようで、気軽に始める方が多いのですが、ビジネスとしてはすごく難しいですよ。
なぜかというと「製造小売り」だからです。製造業だけでも難しいですし、小売りだけでも大変なのに、それがセットになっている。安易に手を出すのはおすすめできません。
やるのであれば、ビジネスモデルができあがっているフランチャイズに入って、一度やってみて儲けるコツをつかんでからでも遅くはないはずです。
――どうもありがとうございました!
(新刊JP編集部)
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