相手がどんな「声」を出すか。それによって第一印象を決めた経験はないでしょうか。 『8割の人は自分の声が嫌い』(KADOKAWA 角川マガジンズ/刊)の著者、山崎広子さんの言葉を借りれば、「無尽蔵のデータバンク」だといっていいほど、声にははかり知れない情報が含まれています。声は、発している本人の内面、さらには置かれている社会的な状況までも映しだすのです。
本書はタイトルのとおり、「なぜ自分で自分の声を聞くと嫌悪感をおぼえるのか」をメインテーマとし、声から何を読み取れるのかを明らかにしています。
■性格はどんな形で声に表れる? 本書によれば、「声に性格が表れる」そうです。いくつか例をあげましょう。
・高低差の激しいキーキー声で話す人…感情のコントロールができない、自己中心的な人・声に芯がなく、か細い人…気が弱い・喉に異常がないのにかすれ声の人…非常に頑固で自分をも抑圧する・相手によって声が変わる人…コンプレックスが強い
いかがでしょう。あなたの身の周りにいる人の声を思い浮かべながら、これらの例を見てみると、頷ける部分もあるのではないでしょうか。
声質は、体格的な素質、発声の癖、心身状態の三つによって決まるといいます。たとえば、身長が高い人ほど低い声を出すようになり、常に大声が飛び交うような大家族のもとで育った人ほど、大きな声や響く声の出し方を身につけます。また中国には、声を聞いて健康状態などを把握する「声相」というものがあるほど、声質と心身の状態は密接な関係にあるのです。 つまり、声は発している本人がこれまでどんな人生を送ってきたのか、いまどんな状態にあるのか等をさらけだしているものといえるでしょう。
■時代によって移り変わる女性アナウンサーの声の高さ 山崎さんは、テレビに出る女性アナウンサーの声について「社会が求める声を映すバロメーター」と表現しています。女性アナウンサーの声に着目することで、その時々で社会が女性に対し、どのような「女性らしさ」を求めているのかが分かるというのです。では、女性アナウンサーの声と日本社会は、どのような移り変わりを見せたのでしょうか。 まず戦後から70年代にかけては、日本社会が声の高さに女性らしさを求めたせいか、女性アナウンサーの声は高かったそうです。そして一転、80年代になってバブル期に入ると、その声はぐっと低くなる。これはバリバリと働くキャリアウーマンが増え始めた時期と重なります。さらにバブルが崩壊し21世紀に入ると、女性アナウンサーの声は再び高くなり始めました。これは、山崎さんいわく「女性も男性も保守的になり、まるで数十年前の価値観に戻ろうとしている」ことの表れだそうです。
山崎広子さんは国立音楽大学を卒業後、いくつかの大学で心理学や音声学を学んだのち、音楽ジャーナリスト・ライターとして活動してきたという経歴の持ち主です。独自のフィールドワーク調査によって書かれた本書。なぜ日本人は自分の声を嫌うのかという理由について気になる方はぜひ手に取ってみてほしい一冊です。(神知典/新刊JP編集部)
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