7月5日、ユネスコ世界遺産委員会によって、福岡県の八幡製鐵所や長崎県の三菱長崎造船所などで構成される「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産への登録が決定しました。日本では昨年の2013年の富士山、2014年の富岡製糸場と絹産業遺産群に続き3年連続での登録となり、国内の観光産業に大きな影響を与えるそうです。
「海外旅行に行くならやっぱり世界遺産を観たいよね~」と思っている人も多いくらい魅力溢れる世界遺産。スタンプラリーのようにめぐるのもいいけれど、時にはガッカリすることもあるかもしれません。 『行ってはいけない世界遺産』(花霞和彦/著、CCCメディアハウス/刊)には、「岩フェチでない人は行ってはいけない」「古代を感じに行ってはいけない」と、「期待したわりにガッカリ…」な旅を避け、スポットごとの魅力を存分に味わうための情報が紹介されています。
■アマルフィ海岸は、熱海観光の後に行ってはいけない? 「世界で一番美しい海岸線」といわれるイタリアのアマルフィ海岸。映画『アマルフィ 女神の報酬』の舞台になった場所でもあります。 世界遺産でもあるし、映画の舞台にもなった。そう言われれば、つい期待したくなるところ。でも花霞さんの感想はというと「ワタクシは思ったのです―熱海にそっくりだ、と。(中略)後ろは山で目の前は海。斜面に強引に建てられた家々。洋風建築と和風建築の違いはあるにせよ、俯瞰で見れば、ほぼ一緒」(P50より引用)というものです。 もちろん本書は、アマルフィという街を全否定しているわけじゃありません。アマルフィ大聖堂について「教会や建築が好きな人にとっては一見の価値あり」とも書いています。海岸メインで旅のプランを立てなければ、きっと満足度は高まるはず。
■マチュピチュは、軽い気持ちで行ってはいけない? ペルーのアンデス山脈にそびえる「天空都市」マチュピチュ。その絶景ぶりは、ジブリの人気作品『天空の城ラピュタ』のモデルになったと噂されるほどです。 世界遺産のなかでも屈指の知名度と人気を誇り、世界中から観光客が押しよせるマチュピチュですが、日本から行く場合は、飛行機、タクシー、バスなどを乗り継いで片道3日もかかるほどの僻地にあります。 到着しても気を抜けません。花霞さんによれば「遺産の大部分は斜面になっているうえ、ここは標高2400m。酸素も平地の約75%と薄いので、思った以上に体に負担」(P96より引用)がかかるそう。 行くにはかなりの覚悟と体力が必要。でも遺跡の全景を見渡せた瞬間、感嘆の声を漏らさずにはいられないくらいの感動が待っているはず。
■アンコール遺跡は、夏には行ってはいけない? アジアにある世界遺産でも知名度、人気ともに高いアンコール遺跡。なかでも、アンコール・ワットはもっとも有名でしょう。でも、ここも注意が必要。 まず知っておいたほうがいいのは、アンコール・ワットがかなり広いということ。「寺院だけでも東京ドーム42個分もあり、ひととおり見学すると3時間はかかる」(P70より引用)ほどの広さです。 しかもカンボジアは、比較的すずしいといわれる11月でさえ、平均最高気温は30℃を超えるほど、とにかく暑い国。油断すれば、すぐ日射病にかかってしまうレベルです。いうまでもなく夏は灼熱地獄。夏を避けて行くのが上手な楽しみ方でしょう。
本書の巻末には、これまでに185件もの世界遺産を訪れたという花霞さんの目から見て「死ぬまでに絶対行くべき5件」だというスポットも紹介されています。現地に行ってから「こんなはずじゃなかった!」とならないためにも、旅のプランを立てるまえにぜひ目を通しておきたい一冊です。 (新刊JP編集部)
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