6月に入り、なかなか調子の上がらない読売ジャイアンツ。6月23日の試合では、12連敗中だった横浜DeNAベイスターズに敗れ、60試合以上消化後では史上初となる「勝率5割」での首位となってしまった。主砲の阿部慎之助や村田修一が故障から復帰するなど少しずつ役者が揃ってきた感もあるが、リーグ4連覇に向けて視界良好とは言えない状況だ。
梅雨のすっきりしない天気も手伝い、G党にとってはストレスのたまる日々。そこへちょっとした吉報が舞い込んだ。2010年よりスタートし、累計6000万PVを記録している話題の野球ブログが書籍化されたのだ。タイトルは『プロ野球死亡遊戯 そのブログ、凶暴につき』(中溝康隆/著、U-CAN/刊)。本書では、長年にわたり読売巨人軍を見守り続けてきたファンの目線から「野球はいかに面白いか」が綴られている。
「野球、そこまで興味ないんだけど…」という方でも、本書なら大丈夫。なぜなら、この本では「一見、野球とは無関係そうなもの」と結びつけながら野球の魅力や楽しみ方が巧みに語られているから。
ここでは2つのトピックを取り上げよう。
■菅野とAKBの指原は共通点が多い?
著者の中溝さんいわく、巨人のエース・菅野智之と、AKB48のセンター・指原莉乃は似ているという。どういうことなのか?
中溝さんの表現を借りれば「火遊びの代償として福岡に飛ばされ、壮大なヘタレアングルを手に入れた指原莉乃。ドラフト騒動以降、逃れようのない原一族の運命を背負うハメになった菅野智之」(P134より引用)。
ふたりともファンから叩かれている。ただ、叩かれっぱなしではない。菅野と指原はダークヒーローなのだ。見ている側に「何か言わずにはいられない。でも一目置かずにはいられない」という感情をいだかせる。彼らが注目を浴びているのは、それだけ時代が「強いだけ」「可愛いだけ」のヒーローやアイドルを求めてはいないことの裏返しでもある。こう言われてみると、プロ野球というフィルターを通して時代が見えてくるような気さえしてくる。
■内海と新日本プロレス棚橋の意外な共通点は?
指原だけではない。中溝さんは、新日本プロレスの棚橋弘至にも着目する。「ゼロ年代前半からのプロレス暗黒時代を、柱として、エースとして団体を支えた」(P41より引用)棚橋と、入団当時の「FAで大物ベテラン選手を獲りまくり、他球団の助っ人を大金を積んで連れてくる。プランなき補強。悲しいくらいにチームはバラバラ」(P42より引用)だったころから、巨人軍の投手陣を少しずつ立て直していった内海とが重なるというのだ。
言われてみれば納得。ズムサタで嫌な顔ひとつせず「親しみやすい兄ちゃん」として登場する内海と、プロレスの間口を広げるため、進んでファンサービスや営業活動に勤しむ棚橋の姿にはどこか通じるものがある。
また何より、自分の努力がチームの結果につながり始めたと思ったら、選手としてのピークをすぎてしまっていたという点も似ている。3年前、棚橋はひとまわり年下のオカダ・カズチカにチャンピオンベルトを奪われ、内海も昨年、開幕投手の座とエースのポジションを菅野に明け渡した。
本書には、菅野投手と棚橋選手へのインタビューもそれぞれ掲載。「原監督の甥」という自身の運命に対する菅野の秘めた思いや、棚橋も実は中高時代、野球をやっていたというエピソードなど、本書だからこそ読める内容がふんだんに盛り込まれている。
この本は「野球好きだけが楽しめればいい」というような内輪ノリの内容ではない。読みすすめるうちに自然と「プロ野球」や「野球選手」への見方が変わってくるだろう。
(新刊JP編集部)
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