インターネットでもテレビでも、人の不幸を見て、面白がっている人は多い。
芸能人や政治家などの有名人、学歴や地位の高い人がトラブルを起こせば、ネットのニュースなどにすぐ取りあげられ、SNSやまとめサイトなどで、誹謗中傷に近いような書き込みがされる。それほど、人の不幸を待ち望んで、楽しんでいる人は多いともいえる。
なぜ、人は他人の不幸を願うのだろうか。
『他人の不幸を願う人』(片田珠美/著、中央公論新社/刊)は、他人の不幸を求める欲望を分析し、この欲望がどこに向かうのかを論じ、処方箋を提案する一冊だ。
人が他人の不幸を願う最大の要因は「他人の幸福が我慢できない怒り」、つまり羨望だと著者は述べる。羨望が強いからこそ、自分が欲しくてたまらないのに手に入れられない容姿や才能に恵まれ、富や名声も易々と手にしているような他の誰かを見ると歯ぎしりし、不幸を願わずにはいられなくなる。
この「羨望」は、誰の心の中にも潜んでいる。だからこそ、自分が抱いている羨望がどの程度の強さなのかを把握できるようになれば、それが強くなりすぎて、手がつけられない状態になるのを防げるようになる。
本書では羨望の強さを3段階に分けて説明しているので紹介しよう。
第1段階は、他人が持っているものをうらやましく思い、それが自分にないことが耐えられないと感じるだけの段階。
第2段階は、他人が持っているものを欲しがるだけにとどまらず、たとえ自分自身がそれを持っていても、他の誰かが同じように手に入れることに耐えられない。自分の幸福が半減するような気がして怒りを覚える段階。
第3段階は、他人の幸福を邪魔するためなら、自分が持っているもの、あるいは自分が手に入れられるはずのものをうしなうこともいとわなくなる段階だ。
そして、羨望が形として現れることにも段階があるという。
第1段階は、うらやましいと思っても、それを隠す。第2段階は、羨望が表に出るのをなかなか抑えられない。直接的に攻撃するようなことはないが、誰かがしてくれていれば内心うれしくてたまらない。第3段階は、羨望を表に出してしまう。悪い噂を流すとか、中傷するという行動に出てしまう。
こうした羨望の現れを自覚できれば、いつの間にか暴走していたということも避けることが可能だ。「羨望」は、多かれ少なかれ、誰にでもあること。それを自分で自覚し、抑えることが大事なのだろう。
他人の不幸を願う要因である羨望が表に出るのは、珍しいことでもない。職場や飲み会での会話や近所付き合いの世間話、ネット上やテレビなど、あらゆるところで、他人の不幸をネタに盛り上がったりしているものだ。
しかし、そういうことに流されず、人の不幸を願うヒマがあったら、自分自身が幸せになる方法を探してやるべきことをしっかりやることが、幸せな人生につながるはずだ。
(新刊JP編集部)
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