反町隆史さん主演のドラマ『限界集落株式会社』(NHK総合)が1月31日からスタートした。その原作が、累計20万部突破の地域活性エンタテイメント、黒野伸一氏の『限界集落株式会社』(小学館/刊)だ。
起業をするため、IT企業を辞めた多岐川優が人生の休息で訪れた故郷「止村(とどめむら)」は、限界集落と言われる過疎・高齢化のため社会的な共同生活の維持が困難な土地だった。そして優は、村人たちと交流するうちに、集落の農業経営を担うことになる。次々と農業改革をしていく優。利益の少ない米作りをやめて、扱いやすい葉物野菜に変更したり、農協以外の流通ルートを開拓したり…。
本作は、現代の農業や地方集落が抱える様々な課題を抉り出し、希望を与えてくれる小説として高く評価されている。また、優や正登をはじめとした登場人物たちも魅力的だ。
そんな『限界集落株式会社』の続編が登場した。
『脱・限界集落株式会社』(黒野伸一/著、小学館/刊)だ。
優の活躍によって消滅の危機を脱した止村。あれから4年、止村は、麓にある幕悦町の国道沿いに完成したショッピングモール「TODOME・マライアモール」とも業務提携するほどに発展していた。
一方、かつて栄えていた駅前商店街は、シャッター通りになって久しかったが、コミュニティ・カフェの開店や、東京からやってきた若者たちで、にわかに活気が戻りつつあった。しかし、モールの成功に気をよくした優のかつての盟友・佐藤の主導で、幕悦町の駅前商店街の開発計画が持ち上がる。コミュニティ・カフェを運営する又従兄弟を手伝っている優の妻・美穂は、劣勢にある駅前商店街の保存に奮闘することになるのだが…。
幹線道路沿いに大型ショッピングモールや全国展開のチェーン店のファミリーレストランや回転すし店が並び、昔は賑わっていた駅前商店街が今はシャッター通りになっている地方都市は多い。
さらに、去年9月には、日本創成会議が、全国の市区町村の半分にあたる896自治体が消滅する可能性があることを指摘したことも記憶に新しい。
人口減少社会の中で、地方はいかにして生き延びていけばいいのか。そんな、日本各地で起きている問題を題材にした『脱・限界収録株式会社』は、過疎の村やシャッター通りとなってしまっている街に希望を与えてくれる小説となっている。
また、本作はシリーズ2作目にあたるが、前作を読んでいなくても独立して楽しむことができる。
地方の再生をテーマにしている本作だが、もちろんまったく堅苦しいものではなく、笑いやドキドキが詰まったエンターテインメント作品に仕上がっている。ぜひとも肩の力を抜いて読んでほしい一冊だ。
(新刊JP編集部)
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