日常会話でもよく使われている「仏教用語」は意外と多い。「さとり」「四苦八苦」「諸行無常」「縁起」「執着」など、挙げればキリがないが、その意味をちゃんと知っている人はそう多くはない。
人気番組「ぶっちゃけ寺」(テレビ朝日系)でもおなじみ、ハーバード大学神学部の研究員だった経歴を持つ僧侶・大來尚順さんは、この仏教用語は実は日本語よりも英訳したほうが理解しやすいと説く。
そんな大來さんが執筆した『英語でブッダ』(扶桑社/刊)は仏教用語を英訳した上で、その本当の意味を教えてくれる一冊だろう。
ページを開いてみると、今まで思い込んでいたものではない新しい意味に出会えるはず。では、本書の中から3つの言葉をピックアップしてご紹介しよう。
■諸行無常 → “Life is Impermanence”
「諸行無常」とは、「人生は永遠に続かない」という意味だ。諸行とは「諸々の行い」の意味で、「無常」は「常ではない」ということ。これを英語に変えると“Life is Impermanence”になる。
しかし大來さんは、もっと適切に表現する英語があるという。それが“Everything Including Myself is Constantly Changing.”だ。これは「自分自身含めたすべての物事は絶え間なく変化している」という意味で、自分自身ですら不変的なものはないということを示す。確かにそうだ。気持ちも、細胞も、すべては変化する。ずっといいことが続かないように、悪いことも続かない。悪いことがあっても、人生そういうものだと思って進めば、またいいことに巡り合えるはずだ。
■業 → “Action”
業は「カルマ」として知られ、ネガティブなイメージをもって受け止められるが、それは間違えた解釈だという。
「業」の原意は“Action”、つまり「行為」だ。「業」とは過去や前世の悪い行いの結果起きた悪いことという意味で用いられるが、実はそうではない。「業」とは今から自分が起こそうとする「行為」を意味し、冷静に判断して行動せよという戒めを与えるのが「業」の本来の教えなのだ。
大來さんは、「生まれながらにして人の価値が決まることはあり得ない」と述べ、大事なことは今あなたがその場所で取るべき行動であり、与えられた命をどう生きるかが大切だという。今からの行為が、ひとつひとつ未来をつくっていく。それを教えてくれるのが「業」という言葉だ。
■往生 → “Birth into the Pure Land”
「大往生」「往生した」など亡くなった方に使用される、この「往生」という言葉。これは「浄土に往き生まれる」という意味で、英語では“Birth into the Pure Land”と表現される。
特筆すべき点は、「往生」を「死ぬこと」と捉えるのは、日本特有だということだ。そもそも日本では「仏になること」を「死ぬこと」と考える。「往生」の本来の意味は、「仏になりさとりを開くために、仏の国に往き生まれること」であり、そこから「死」をイメージさせる言葉になってしまった。
「浄土」とはまったく苦しみのない理想郷のこと。そこに生まれるのだから、実はポジティブなのである。「死」をどう捉えるかにもよるが、仏教用語の「往生」は悪い言葉ではない。「生まれること」なのだ。
円安の影響もあり、海外からの観光客数はのびているという昨今。もしかしたら、観光名所となっている寺社などで外国人から「これはどういう意味ですか?」と質問されることもあるかもしれない。そんなとき「仏教用語」をスマートに説明できれば、あなたの日本人としての株が上がるのではないだろうか。
目からウロコが詰まった一冊だ。
(新刊JP編集部)
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