乳がんや子宮がん、子宮頸がんなど、女性特有あるいは女性に多い病気を早期発見するために定期検診を受ける習慣が、徐々に根付きつつあります。
がんは早期発見が命とされていますから、こういった検診は確かに有意義だといえます。しかし、「定期検診=善」という一面的な価値観に基づいて行動するのではなく、対立意見も頭に入れて、比較してから自分の行動を決めても損はないはず。
がんを手術で切らずに放置する「がんもどき理論」など、既存の医療に真っ向から対立する主張を展開する医師・近藤誠さんは、現在行われている婦人科系の医療にも異議を唱え、そのリスクを『もう、だまされない!近藤誠の「女性の医学」』(集英社/刊)につづっています。
■検診で早期発見される子宮がんはほとんどが無害
近年、しきりにキャンペーンが行われているせいか、「将来赤ちゃんを産めない体にならないために…」ということで、子宮がん検診を受けている女性は多いはずです。
ただ、本書ではこの検診によって早期発見・早期治療したことで、逆に子どもが産めなくなってしまう危険性が指摘されます。
子宮がん検診で早期発見される、症状の出ていない0期のがん(上皮内がん)は、ほとんどが放置しても問題がない「がんもどき」であり、これらが見つかったからといって自動的に手術、となってしまうと、それが原因で不妊になる可能性が高く、妊娠しても早産や流産のリスクが高まるという見解を近藤さんは述べています。
アメリカのがん専門病院で、子宮頸部に上皮内がんのある67人を放置・観察したところ、0期から1期の湿潤がんに進行したのはわずか4人であり、41人は上皮内がんのままとどまり、17人は自然消滅してしまったというデータが、本書では取り上げられています。これを踏まえて、検診でがんが発見されたからといって自動的に手術、となってしまう現状に待ったをかけたいというのが近藤さん目指しているところなのです。
■「予防的乳房切除」はアリかナシか
また、同じく検診を薦めるキャンペーンがお馴染みとなっている乳がんについても、本書では疑問が呈されます。
乳がんといえば、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが行った「予防的乳房切除」が話題となりましたが、がんというものは、もしそれが「がんもどき」ではなく「本物のがん」だとしたら、0.1ミリ以下の非常に小さい段階から転移を開始するため、早期発見できた時ですらがん自体の誕生から10~30年は経過してしまっているというのが近藤さんの主張。
つまり、予防として乳房を切除するのであれば、それこそ10代の時に行うべきで、20代、30代になってから行っても予防としての効果には疑問符がつくということです。
もちろんこれは現実的ではありませんし、近藤さんの言いたいことでもありません。がんの予防のために現時点で健康な乳房を切除することの意味を問うているのです。
過去に良しとされてきたことが、時とともに、実はまちがっていたことがわかったというのは、医療に限らずよくある話ですから、賛否両論ある近藤さんの主張を荒唐無稽と切り捨てるだけでは、重要なことを見落としてしまうかもしれません。
少なくとも、今主流とされている医療には反対意見もあるということを知るだけでも、自分がどんな診察や治療を受けたいかを考える時の材料になってくれるはずです。
(新刊JP編集部)
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