飲食業界というと「ブラック」というイメージを持っている人も多いだろう。しかし、今、そのブラック化の改善に向けて、あるIT技術が注目を集めているという。それが「タッチパネル式オーダーシステム」だ。
その開発者である小林俊雄さんはかつてダイエーで、ローソン「Loppi」の企画、開発と普及に関わった人物(ローソンは当時ダイエーの子会社だった)。小林さんはタッチパネルの導入を通して、飲食業界はさまざまなサービスやおもてなしを導入できると述べる。
小林さんが執筆した『「超一流のおもてなし」は、スマホ一つでできる。』(自由国民社/刊)はそのメソッドが詰まった一冊で、IT化を進めることで「おもてなし」を強化する方法が述べられている。
では、どのように飲食業界の現場は改善されたのか? 本書からご紹介していこう。
■タブレット導入で売上20%以上アップ
最近では、テーブルごとにタブレット機が置いてあり、わざわざ店員を呼ばなくても注文できる店が多くなった。聞き間違いなども減り、余計なストレスもかからなくなったのだ。
小林さん自身、タブレットを導入したことで「実際に20~30%売上が上がったチェーン店も少なからずあります」と言う。しかし、ただ導入すればいいだけではないとも。タブレット導入によって余った時間を、客のためになるようなことや、生産性を上げたりするための工夫を考えることに費やすことが大事だ。
客の「ありがとう」が増えなければ、売上アップにはつながらない。
■ITの導入は人材難の解消につながる
現在、人員不足だという飲食業界。それは小林さんも感じることがあるという。
しかし、とある焼肉チェーンでは、タッチパネル式オーダーシステムを店舗に導入したということを募集ページに付け加えてみたところ、ほとんど応募のなかった店舗でも、毎日1~2件の応募がくるようになったそうだ。
飲食業界は経験者の応募が多いといわれる。システム導入によって「注文取り」のストレスや、言った言わないのトラブルがそもそも起きないお店だということが認識されたということなのだろう。
■データが蓄積されて特別なサービスができるようになる
IT化はデータの蓄積にも役立つ。その蓄積したデータを使って、客それぞれに個別のサービスをすることが可能となるのだ。
例えば、週に2回以上お店に来た客には、会計を2割引きにするなどの特別待遇があるというサービスもいいだろう。常連客を増やすことは、飲食店にとっての至上命題。常連客が増えれば、当然売上はのびていくものだ。
「日本の飲食業界は“特別なサービス”をもっと導入すべきです」と小林さんは訴える。しかし、一方で顧客満足度は、従業員満足度が上がらないと高くならないとも言う。まずは従業員の満足度を上げることが、大事なことなのだ。
「おもてなし」は人と人のつながりの中で生まれるものであり、IT化とはあまり関係がないように思える。しかし、IT化によって従業員の労働コストをおさえ、よりクリエイティブなサービスを作りだすことが、「おもてなし」につながっていくものなのだ。
本書では仕事術やサービスとは何かということについて小林さんならではの視点で語られているので、サービスの向上に対して参考にしてほしい。
(新刊JP編集部)
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