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その不動産は売るべき? 投資の価値の考え方

 ビジネスマンならば「キャッシュフロー」という言葉を知っている人は多いだろう。「キャッシュフロー」とは文字通りお金の流れを意味する。

 この「キャッシュフロー」は賢くお金を使うために覚えておくべき考え方の一つだ。
 例えば、今、住んでいる家を売却することになったとしよう。適正な値段で売るためには、自宅の価値を評価しなければいけない。もちろん、なるべく高く売りたいのが心情だが、買い手がいる以上、希望価格で売れるとは限らない。むしろ、希望価格で売れることは稀だ。
 では、家を売るべきか? それとも、売らないほうがいいのだろうか?

 『お金はサルを進化させたか』(野口真人/著、日経BP社/刊)の第二章はそんな問いから始まる。

 野口さんはここで、計算式を提示する。
 分譲マンションの場合、一都三県の築浅マンション(築10年以内)ならば以下の計算式でだいたいの適正な価値を出することができるという。

 マンションの価値=毎月の家賃×200倍

 また、その中でも、東京都の港区や千代田区など都心部にある築浅マンション(築10年以内)出と、次のような式になる。

 マンションの価値=毎月の家賃×240倍

 家の価値を詳しく調べるならば、不動産鑑定士に鑑定を依頼するなどの手段があるが、そのためのコストも発生する。そこで、この計算式をもってだいたいの相場を把握し、その結果、マンションの価値が売り出し価値よりも上回る場合は、我慢して売るのを待つべきだと野口さんは述べる。

■計算式によってはじき出される「今後見込める収益」
 この2つの計算式は、「収益還元法(DCF法)」という、不動産価格の評価方法が基になっている。
 DCF法は、物の価値を“将来生まれるお金”キャッシュフローから導き出す。つまり、計算式で出てくる額は、今後マンションによって見込める収益であり、それよりも今売ったときの値段が低ければ売るのを待つべきなのだ。
 マンションのキャッシュフローは家賃だ。家賃は基本的に賃金や経済状況に影響を受けやすいが、もし市場がパニックになってもあまり影響を受けない。そのため、比較的安定に推移する。
では、本当に上記の式で算出された適正価格は正しいのだろうか? それには200倍(240倍)という数字の謎を解き明かす必要がある。

■「今日の100円は明日の100円より価値がある」
 「今日の100円は明日の100円より価値がある」。これはファイナンスで最も重要な格言で、「将来受け取る予定のお金は現地点より価値が下がる」という意味だ。

 「金利」という言葉を聞くと多くの人がポジティブに反応するだろう。例えば銀行の定額預金が金利1%だった場合、100円を預ければ、1年後には101円になる。だから私たちは1円分得をしたと思うはずだ。
 しかし、裏を返せば、100円の価値は1年後、99円の価値になっている。下記は金利10%の世界での計算となる。

今日    5年後
100円 → 161円
62円 ← 100円

 金利10%の世界では、5年後の100円は、今日では62円になる。基準は「今日」だ。お金の価値は、今日が最も高いと考えなければならない。

 もし、家賃25万円のマンションである場合、年間300万円のキャッシュフローがある。このとき、金利が6%であった場合(この6%という数字も著者の根拠がある)、今日の100円は1年後106円に増える。逆に考えると、1年後の100円は、現時点で約94円になる。したがって年間300万円のキャッシュフローについて、1年後の300万円は現在283万円、2年後は267万円になる。そして、年間300万円の家賃が30年間続くとして、このマンションの価値を算出すると、4129万円にまで割り引かれることになる。9000万円ではなく、4129万円がマンションの価値になるのだ。

 遠い将来のキャッシュフローは大きく割り引かれてしまう。年間300万円で貸したとして、その期間が100年でも5000万円には届かないのだ。
 金利はDCF法において、キャッシュフローの不確実性(リスク)の度合いによってきめられる。リスクが高いキャッシュフローには高い割引率(金利)、リスクの低いキャッシュフローには低い割引率が適用されるという。

 お金の価値は時間によって変化をする。これはキャッシュフローを考える上での基本的な部分になる。本書では投資の価値がどのようにキャッシュフローから決まるのか、キャッシュフローの価値が時間によってどのような影響を受けるのかを説明するために不動産の例を扱っており、極めて実践的な内容となっている。
 このほかにも第二章では、マンションの割引率や、利回りが高くなる物件の特徴、一等地で売られるコーヒーの値段の高さなどについて触れている。読み応えのある章になっているので一読してみてほしい。
(新刊JP編集部)

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