2014年、「児童文学のノーベル賞」と称される国際アンデルセン賞・作家賞を受賞した上橋菜穂子さん。2009年には、英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞し、海外からの評価も高い作家だ。2016年春からは綾瀬はるかさん主演で『精霊の守り人』がNHKでドラマ化されることが決定している。
国内外で人気を博しているそんな上橋さんの最新刊が『鹿の王』(KADOKAWA/刊)だ。
強大な帝国・東乎瑠にのまれていく故郷を守るために戦いを繰り広げた戦士団「独角」の頭だった主人公のヴァンは、奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。
ある夜、一群れの不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは幼子を拾い、育てることになる。一方、移住民だけが罹ると噂される病が広がる王幡領では、もう1人の主人公である医術師ホッサルが、その治療法を探していた。
そして、物語が進むにつれ、ヴァンとホッサルの運命が交叉していって...。
2人の主人公を中心に、親子の絆、民族問題、医学などが大きく関わっていく壮大な物語が本の中に広がっている。
上橋さんは、3つほど心に響くものが浮かぶと、物語を書くことができると「あとがき」で語っている。
この『鹿の王』の場合は、「人は、自分の身体の内側で何が起きているのかを知ることができない」ということ、「人(あるいは生物)の身体は、細菌やらウィルスやらが、日々共生したり葛藤したりしている場でもある」ということ、そして、「それって、社会にも似ているなぁ」ということ。この3つが重なったとき、物語が生まれたという。
ページをめくり始めれば、上橋さんの作り出す壮大な世界観に引き込まれ、現実を忘れて本の物語の中の世界に入り込めるはずだ。
読書の秋。上下巻1000ページを超える大作をたっぷりと楽しんでみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部)
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