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理想のリーダーとは? 前ブータン国王に学ぶ

 先日、第2次安倍改造内閣が発表された。日本の新たな「リーダー」たちの顔ぶれに、日本中が注目したことだろう。……ところで、あなたはリーダーというものをどのような存在と考えているだろうか。「理想のリーダーとは?」と聞かれた時に、はっきりと答えられることはあるだろうか。

 優れたリーダーたちの姿を描いた『国をつくるという仕事』(英治出版/刊)という本がある。著者の西水美恵子氏は世界銀行の元副総裁。世界中の数多くのリーダーたちと接してきた人物だ。その西水氏が、なかでも最高の理想像と語る人物がいる。
 ジグミ・シンゲ・ワンチュク、前ブータン国王だ。ブータンといえば、3年前に来日したハンサムで若い国王(と美しい王妃)の姿を覚えている人は多いかもしれない。現国王も魅力的だが、その父親、「雷龍王4世」と呼ばれる前国王も、さらに魅力的なのだ。

 1972年、16歳という若さで即位した雷龍王4世が、まず行ったことは「旅」。国家安泰の答えを見つけるために、ブータンの国中を旅して回ったのだ。険しいヒマラヤの山々を自らの足で歩き、時には野宿もしながら村々を回っては、国民一人ひとりの声に耳を傾け続けたという。
 そうして国王は一つの答えを導き出した。「国家安泰の鍵は、“国民の幸福追求”にある」。GNP(国民総生産)という経済力を使った指標ではなく、GNH(国民総幸福)、つまり国民の幸福度で国の発展を測るという、新しい考え方を示したのだ。この「GNH」という言葉は世界的に有名になり、見聞きしたことがある人も多いだろう。
 その成果が着実に表れているのか、ある調査では、ブータン国民の97%が「私は幸せだ」と答えたそうだ。幸せの定義はさまざまだろうが、国民一人ひとりの声に耳を傾けるリーダーを持ったことは、ブータンの人々の幸福感に深く関わっているのではないか。今でも前国王の全国行脚を知るブータンの国民はこう言うそうだ。
 「国王の足跡のない村はない」

 『国をつくるという仕事』には、西水氏が出会ってきた世界中のリーダーたちからの学びが短編集の形で綴られている。世界銀行の目的は貧困をなくすこと。読者は、貧困撲滅に向けて23年間戦い続けた西水氏の足跡を追体験することになる。
 本書に登場するブータン前国王のように、周囲の心を引きつけ社会を変えるリーダーたちには、一つの共通点を見いだすことができる。それは「現場を自らの足で歩き、人々の声に耳を傾ける」ことだ。拾い上げられた一つひとつの声が形を成し、ボトムアップから生まれる真の変革が起こる。
 逆に、民の声など届かない首都の宮殿にこもりっきりのリーダーが治める国は、決まって汚職を含む悪政に陥っている。『国をつくるという仕事』の中には、理想のリーダー像だけでなく、そうした悪しきリーダー像の両方が描かれている。

 果たして、私たちの周りのリーダーはどうだろう? 日本のリーダーは国民の声に真剣に耳を傾けているだろうか? あなたの会社のリーダーは社員の幸せを本気で願っているだろうか?
 善悪双方のリーダーシップ像を見いだせる本書によって、自分が選ぶべき、あるいはなるべきリーダーの姿を見極められるようになるかもしれない。
(新刊JP編集部)

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