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これほど平和を愛する国はない、戦えばこれほど強い国はない

 多くの日本人が当たり前に思っていることでも、あらためて指摘されると「確かに、ほかの国々とは違う」と気づかされることはよくあります。特に他人と問題が起きたとき、日本人は外国人から見ると、極めて不可解な行動をとります。

 例えば、車庫からクルマを出そうと思ったら、車庫の前にお隣のクルマが停まっていて、家のクルマが出せない、といった問題が起きたとき、みなさんなら、どのようにされるでしょうか。おそらく、お隣さんの玄関のチャイムを鳴らして次のように言います。
 「すみません。クルマを出したいので、お車をどけていただけないでしょうか」
 なんと、迷惑をかけられた方が、謝り、謝罪し、お願いをしています。これは諸外国では考えられないことです。

 『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人! 第三巻 日本はなぜ戦ったのか』(彩雲出版)の著者、小名木善行さんは、続けて次のように日本人の行動パターンを説明します。

(諸外国) 問題が起きる→話し合う→戦う(争う)
(日本人) 問題が起きる→我慢する→謝罪する

 このような日本人の行動パターンを、諸外国の人は理解できないようです。大声をあげて恫喝したり、馬鹿にしたりしても、日本人はひたすら我慢します。我慢するどころか謝罪までします。謝罪したから屈服し服従したのかというと、日本人は服従も屈服もしないで、ニコニコしているのです。外国人からすると気味が悪いったらありません。それどころか度を越すと、「だから悪かったといって謝っているじゃないか」などと言って怒りだす。これまた外国人にとっては、理解不能の行動パターンです。
 外国人にとって、話し合いは、その後の戦い(争い)の準備段階でもあり、問題が起きたときには、決して我慢することも謝ることもしません。それは負けを意味するからです。

 けれど、「話し合い、それでダメなら相手が屈服するまで戦い、殴り続け、ときに大けがを負わせたり、命まで奪ってしまうという文化」と、なによりも「互いの和を大切にし、争いを避けようとする文化」と、人々にとって、幸せなのはいったいどちらなのでしょうか、と小名木さんは問いかけています。

 そして、元寇の戦いから近代の戦いまで、日本人が戦った様々な戦いの事例を挙げながら、平和を愛し、和を大切にしてきた日本人が、なぜ戦いを選択せざるを得なかったのかを、これまでにない切り口から、論考を加えています。

 特に衝撃的なのは、日中戦争のはじまる前のお話です。学校では盧溝橋事件がきっかけで戦争が始まったと教わりますが、日本は盧溝橋事件のあと、戦争回避のために何度も和平交渉を行っているのです。
 そのさなか、通州市という場所で、日本の民間人2百数十名が中国軍によって惨殺されるという事件が起きました。このような非人道的な事件のあとでも、日本は「そちらの言い分を全部のむから、仲良くしましょう」と、相手国に申し出ているのです。そしてこれには当時の陸軍も海軍も賛成したというのです。
 
 まさに、目からウロコが落ちるような、衝撃的な逸話を紹介したあと、小名木さんは、「歴史を俯瞰(ふかん)すれば、日本人の「戦(いくさ)」は単なる殺し合いではなく、敵と味方との間に「和」を築くための大きな試練だったと言えるのではないでしょうか。敵をただ殺すのではなく、敵も味方も活(い)かそうとする、この形容しがたい精神の奥深さこそ、日本精神の神髄なのです」と結んでいます。

 本書を通して、日本が関わった戦争に対する認識が、180度変わります。
 「これほど平和を愛する国はない。戦えばこれほど強い国はない」
 その理由がはっきりとわかる、編集部お薦めの一冊です。
(新刊JP編集部)

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