学生も社会人も、試験を受ける機会はあります。しかし、がむしゃらに勉強しただけではなかなか上手くいかないもの。忙しい中でいかに効率よく勉強をするかということも大事です。
では、数々の難関試験を突破してきた人たちはどのように勉強しているのでしょうか。
開成中学、開成高校を特別優等の成績(10段階評価で平均評点9.0以上)で卒業後、東京大学文科1類(法学部)に現役で合格。同大学法学部卒業後、慶應義塾大学法科大学院に現役で進学し、同大学院在学中に司法試験に一発合格したという経歴を持つ鬼頭政人さん。司法修習を経て都内法律事務所に弁護士として勤務した後、ベンチャー企業を多面的に支援したいと考え投資ファンドに転籍、そして現在は資格試験のオンラインビジネス「資格スクエア」を創業しています。
そんな鬼頭さんの著書『頭のよさとは「ヤマを張る技術」のことである』(KADOKAWA 中経出版/刊)は、誰もが実践すべき合理的な勉強法を教えてくれる一冊です。
今回、新刊JPは鬼頭さんに“効率の良い試験勉強法”についてお話をうかがってきました。その前編をお伝えします。
■開成、東大、司法試験を突破した“効率の良い試験勉強”とは?
――『頭のよさとは「ヤマを張る技術」のことである』の「はじめに」のところで、ギャンブル好きを公言されているのですが、まずはその話から聞かせてください。鬼頭さんは最初のギャンブル経験を覚えていますか?
鬼頭:お金を賭ける公営ギャンブルは、もちろん認められた年齢になってからなのですが、ギャンブル的な要素を含んだゲームという意味でいうならば、ポーカーやナポレオンのようなトランプゲームは家族と一緒に小さな頃からやっていました。また、小学校6年生の頃、親と一緒に初めて馬券を買いました。
――この本のテーマは勉強法、特に試験の勉強法なのですが、ギャンブルとの共通点も多いように思いました。
鬼頭:流れを読み、勝負所を間違えないようにする点はよく似ていると思いますね。ギャンブルは純粋な確率論以上に流れを読むことが大切です。同じ手札を持っていても、場の流れ、空気によって出す手札が変わってくるところがありますが、どこが勝負どころかを見極めることが一番重要なんですね。それは試験勉強においても同じで、限られた時間をどの部分に最もつぎ込めば勝てる確率が一番高くなるのか考えるんです。
例えるならば、ギャンブルにおけるチップが、受験勉強では時間です。持っているチップの量(時間)はみんな同じなのですが、それをどう使うかは自分次第なので、空気を読んで一番勝てそうなところにベットするという点については、ギャンブルも試験勉強もよく似ていると思います。
――これまでの流れ、過去の流れを読んで未来を予測するということですね。
鬼頭:過去の流れを記憶していって蓄積し、それによって未来を予測する確度を上げるということです。試験勉強の場合、過去の流れは主に「過去問」から探ります。
――『頭のよさとは「ヤマを張る技術」のことである』では「過去問」をとても重要視されていらっしゃいます。
鬼頭:本書にも書いているのですが、「過去問」はこれまでの出題者の作品なんです。だから、出題者のことを知る、出題者の考えや気持ちを理解するには、出題者の作品を読むしかありません。例えば、中学校や高校のテストならば出題者が先生だと分かっているので、その人と話せばいいのですが、入学試験や国家試験だとその機会はほとんどないですよね。その場合、その出題者が過去にどういう問題をつくってきたかを知ることで、傾向と対策を練るんです。
――鬼頭さんがそのことに気づいたのはいつ頃のことだったのですか?
鬼頭:中学生の頃だったと思います。定期テストというものが始まって、最初は普通にテストの2週間くらい前から勉強していたのですが、だんだんと勉強時間を取らずにもっと効率の良いやり方はないかなと思ったんですね。
それまではクラス50人中1ケタ位くらいの成績だったのですが、重点を決めて、そこにフォーカスして勉強をするやり方を実践したら、勉強時間そのものは増えていないのに、成績が上がって、常にクラスで3番以内を保てるようになりました。そのときに意識したのが、僕の表現でいう「ヤマを張る」というもので、いわゆる効率を重視する勉強方法だったんです。
――その勉強方法を確立したことに、きっかけとなるような出来事はあったのですか?
鬼頭:定期テストを何回かこなしていく中で、授業中に言っていた先生の発言と、テストで出題された問題がリンクしていることに気づいたんです。「あ、あのときにああいう発言をしていたのはこのことだったのか」と。テスト中だからそこで気づいても時すでに遅しなのですが、それ以降先生の言葉を注意して聞くようにして、自分の中で事例を積み上げていきました。
――そうなると、先生がどのような意図で発言をしているのかが分かってくる、と。
鬼頭:そうですね。それが試験勉強では「過去問」にあたるわけで、データの蓄積が大事になります。
「過去問」の場合、多くの人はただ漠然と解いていると思います。ただ、それだけだと、どうしても問題からのフィードバックが少なくなってしまうんですね。もっと突き詰めて、「過去問」の難易度はどう変わっているのか、出題文の主旨は何かということを読みとることが大切だと思います。それは、新聞を読んでただ漠然と事実を認識するのと、その情報の裏に何があるのかを推測するのに違いがあるようなもので、同じ文章でもフィードバックがまったく違ってくるんです。
――つまり、落ちている手掛かりに気づく力を養う必要があるということですね。
鬼頭:それは特別な能力ではなく、考える練習をすれば身に付くものです。今、例に出した新聞なんかはすごく分かりやすいですよね。自分が新聞の記事から推測したことは、未来の新聞を読めば分かるので、そういったことがフィードバックとして貯まってくると、この本でいうことの「ヤマを張る」ことの確実性が高まってきます。
(後半へ続く)
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