■1日3分 ストレッチ感覚で楽しもう
連載3回目となる今回は、実際に思考力をどのように高めていけばいいのかについて触れたい。
基礎的な思考力を伸ばす方法は色々あり得る。学校教育でも、仕事の中でも、また古今東西の各分野の良書を読むのも有益だろう。ただし、各々の目的があって、必ずしも受け手の思考力強化を目指したものではない。長期的に養分としてじわじわ効いてくるものと思う。本書ではより直接的に基礎的な思考力を身に付けることに焦点をあてて、またわかりやすい本にまとめたいと考えた。わかるようにするためには抽象と具体を両方示して結びつけたい。
そこで、拙著『思考を広げる まとめる 深める技術』(中経出版/刊)では分量の半分程度を約80の例にあてることにした。1つ1つの例には深入りできず、要点を述べるしかなかったが、抽象的な本文が何を言っているのか、結びつけて理解できるはずである。
一方、抽象的な説明にも意味があり、載せられた例の裏側にある無数の例に対応した説明ができる。今回、紙幅の理由もあったが、結果的に無駄な文が少なくコンパクトに要点に絞った内容となった。実践する際に外せないコツをわずかずつではあるが付け加えている。
また、図解を充実し、文章も分かり易くして、全体を約40の項目、1項目ほぼ4ページにまとめ、飛ばし読みも可能なようにした。
目指したのは誰でも寝転がって読める本である。また、慣れた人にも退屈でなくなるほどと言って頂けるよう、本質を述べるように心がけた。
■反復練習で思考力を伸ばそう
ところで、意図したように分かり易く最後まで読んで頂いたとして、それで「実際に使える」ようになるであろうか。一定程度、というのが実際だろう。読む中で頭を様々な方向に使うことになり、心地よい疲労があるようであれば、思考の筋肉のストレッチはできたということになる。特に考えることに慣れていない人にとっては、新鮮な経験になれば意味がある。もう少し先を望み、本当に自分の思考力の一部として身に付けていきたい場合、40項目のうち1~2の項目を今後使ってみようと決めて頂き、何回も実際のテーマに適用してもらうのがいいと思う。使う中でわからないことが出てくるので、その時は本書に戻れば、補足説明や行間からの理解を深めて頂けるのではないかと思っている。
とっかかりとしては、伸ばしたい項目を1つ決めたら、自分で例を考えてみるのがいい。本書を読む方は幅広い方を想定しているので、例は雑多なものになっている。個別項目では例が偏っているので、それを参考に自分でテーマを決め、新しい例を書いてみる。これをたくさんの項目で行うことはなかなかできないだろうから1~2項目でもやってみるといいと思う。
基礎的な思考力をほんとうに幅広く向上するには時間がかかるのが当然だ。本書で提供された材料をどう生かすかは読者次第だが、考えることの「楽しさ」と「苦しさ」のバランスをとることが大事だ。何を学ぶ際にも、初心者は楽しさを知るのが先決だし、その先を目指す人は自ら意識して取り組むことで成長につながるものと思う。次回は最後のまとめをしつつ考えることについて少し広く触れてみたい。
(著者/太田薫正)
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