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経営陣と現場のかい離、どう解決する?

 書店のビジネス書コーナーには、経営者やコンサルタントが執筆した本が多数並んでいる。仕組み化や戦略、フレームワークなどビジネス思考が書かれていて、普段の仕事で大いに参考にできる部分もある。
 しかし、その一方で「現場」の視点が欠けていると感じる側面もある。実際に接客しているのは現場であり、売上を上げているのも現場の人間。ならば、「現場」にもっとコミットした本があってもいいのではないだろうか。

 『売上が上がる ほめる基準』(商業界/刊)の著者である原邦雄さんは、船井総研のコンサルタントから、ラーメン屋の皿洗いに転職したという経歴の持ち主。その後、ラーメン屋店長を経て、再びコンサルタントとして独立したという経験から「経営陣と現場の使っている言語が違う」と述べ、現場を活性化しなければ売上を上げることはできないと指摘する。
 今回はそんな原さんのインタビュー後編をお送りする。
(新刊JP編集部)

■ 「現場で頑張っていないスタッフは一人もいない」

― もともと原さんはほめるタイプの上司だったのですか?

原 : いえ、逆です(苦笑)ダメ出しばかりしているタイプの上司でした。

― では、ほめるようになったのは、そのラーメン屋で現場を学んでからですか?

原 : 店長になってからですね。それまでのやり方では売上がのびなくなってしまったんです。だから、この本で書かれている「ほめれば売上が上がる」という理論は船井総研で学んだものではなく、ラーメン屋の現場で店長として学んだものです。

― 実際に現場に関わったからこそ、ですね。

原 : そうですね。どんどんスタッフはやめていくし、売上ものびない、やる気もあがらない。自分もしんどくなっていく。限界を感じたときに、スタッフを変えるのではなく、自分自身が変わらないといけないと思いました。

― その転換にあたり、スタッフから何か言葉があったのですか?

原 : 「原さん、今月のMVPは誰ですか?」と聞かれたんです。一番頑張ったアルバイトスタッフは誰ですか、と。私はそのとき、みんな頑張っていないと思っていたんですよ。全員やる気がないなと。でも、よく考えれば確かにみんな頑張っていたし、MVP的なスタッフもいたんです。それからですね、一人ひとりほめ言葉をかけたのは。

― 人をほめるって実は難しいことだと思います。その人のちゃんと見ていないといけないし、ただ「ほめればいい」という話ではなく、その人のことを考えたほめ方をしなくてはいけないですが、原さんは「ほめかた」についてはどのように考えていましたか?

原 : この本のタイトルに「基準」という言葉が入っていますが、その部分が大事だと考えています。なんでもほめればいいというものではありません。この本は「売上を上げる」その手段として「人をほめること」を提案しています。目的がある「ほめ」、基準がある「ほめ」です。その目的を、経営陣・スタッフ一同で共有しないといけないのですが、その部分を忘れてしまっている経営者も多いですよね。

― それが本書に出てくる「Key Goal Indicator」(KGI)という指標の重要性ですね。どうなると目標を達成できたのかを意味します。日本では馴染みの薄い用語ですが…。

原 : 日々の進捗をはかる「Key Performance Indicator 」(KPI)は多くの方が知っていると思いますが、この「KGI」はまだ珍しいと思います。ただ、重要さでいうならば、こちらの方が上ですね。
どこにいけばゴールなのか。どこを目指してチームが存在しているのか。大事なのはプロセスよりもゴールです。「KPI」は「KGI」をクリアするためのものですから、「KGI」を設定し、共有することが必要なんです。

― ゴールだけを評価すると、プロセスを評価してほしいという声があがってきますが、日本はその傾向が強いですよね。

原 : だから、どのようにして日本人に合わせたものをつくっていくかが大事です。

― 具体的な解決方法はあるんですか?

原 : 一つは、現場とゴールを共有し、現場を巻き込んだ仕組み作りをすることです。勝手に決められ、押しつけられることに反発が起こるわけで、ならば企画段階から協力してもらうべきです。ただ、「KGI」は経営陣やコンサルタントが考えるべきです。

― 原さんがラーメン屋の店長だったとき、新人の方と接する上で気をつけていたことはありますか?

原 : これは皆さん忘れがちですが、初めてスタッフとして入店するとき、みんな緊張と不安でいっぱいなんです。ときには、あまりの不安で来ることができない人もいます。だからこそ、受け入れる私たち側がウエルカムの雰囲気を作り出し、初めて働くという大きな山を登ったことをねぎらう姿勢が必要です。

― 来ることが当然だと思うのではなく。

原 : それはそうです。不安ですからね。また、働いて結果を出すのが当然と思うのではなく、適度にほめてあげることも大事です。みんな、不慣れながら頑張っているはずです。

― コンサルタントとして、いろいろな経営者の方とお話されていると思いますが、ほめることの重要性を認識していない人は多いのですか?

原 : 仕方なくほめているとか、甘い世の中になったと考えている経営者は多いです。それは世代の違いからくる価値観も理由の一つで、今、経営者になっている人たちは、ほめられずに育ってきた世代なんですよ。だから、「なんでほめないといけないんだ」と。

― 本書をどのような方に読んでほしいと思っていますか?

原 : 資金繰りで悩んでいる経営者や、従業員の育成で悩んでいるマネージャーの皆さんに読んでほしいです。また、ほめているけれど売上につながっていない経営者にも。「ほめる基準」というのが分かると思います。

― インタビューの最後に、読者の皆さまにメッセージをお願いします。

原 : 育成や資金繰りの悩み、売上が上がらない悩みを解決するための方法を書きました。今いる従業員と一緒にいかに売上を上げていくか、具体的な事例と読んだその日から実践できるツールを用意していますので、ぜひ、読んでいただいて使ってほしいと思います。

(了)

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『売上が上がる ほめる基準』(商業界/刊)

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