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無印良品が“終身雇用”にこだわる理由

 厚生労働省の調査によれば、大学新卒者の3年以内の離職率はここ数年、だいたい3割前後を推移している。平成22年3月卒は31%、平成21年3月卒は28.8%、平成20年3月卒は30%、平成19年卒は31.4%といった具合だ。
 もちろん会社規模が小さければ小さくなるほどその割合は高まるが、1000人以上の規模の会社でも、やはり新卒3年目までに2割前後が離職する。

 では、離職率の少ない企業はどのようなところが違うのだろうか?
 洗練されたデザインの商品を次々と生み出し、世界中で人気を得ている無印良品。その本部社員の離職率はここ5~6年、5%以内を推移しているという。卸売業・小売業の平均的な離職率は14.4%だから、群を抜いて低い数字だ。
 この秘密を、無印良品を展開する株式会社良品計画会長の松井忠三氏が執筆した『無印良品の、人の育て方』(KADOKAWA/刊)からご紹介しよう。

■“生え抜き”を育て上げる仕組み
 無印良品の採用の特徴は、基本的に中途採用をしないということだ。あっても1年に2~3人程度だという。しかし、退社をする社員ももちろんいるわけで、その場合はパートナー社員(店舗で働くパートやアルバイトのこと)から内部登用をする。
 パートナー社員から本部社員への採用は、年齢・性別・学歴不問。完全に実力で選ぶというのだが、実はここ数年、新卒採用よりもこの内部採用の数が上回っているそうだ。その理由は、パートナー社員に優秀な人材が増えたからだという。

 無印良品には「MUJIGRAM」という、店舗運用のための冊子がある。これは13冊、2000ページ以上からなるもので、現場で働く社員の意見やお客の声を集めてマニュアル化する。
 この「MUJIGRAM」によって叩きこまれるのが、作業の「目的」だ。なぜそうするのかという目的一つ一つに、無印良品の理念や哲学が込められている。これが、“生え抜き”つまり無印生まれ・無印育ちの社員を育て上げる一つの仕組みになっているのだ。

■無印良品が終身雇用にこだわる理由
 無印良品には、終身雇用を目指しているという大きな特徴がある。成果主義への移行が目立つ現代において、どうして旧態依然の制度と目される終身雇用にこだわるのだろうか?
 松井氏は、日本のビジネスマンの多くが終身雇用を支持しているデータをあげる。その数、なんと9割弱。
 ガスや電気などのインフラ業界や建設業界などは大卒3年以内の離職率がおどろくほど低く、多くの若者は3年で辞めたいと考えているのではないことがわかる。育成においても終身雇用はプラスに働くし、社員が辞めにくくなったことで組織の力を磨くことができる。一方で、社員は安心して働くことができる。日本人の特性を考えても、ベストな制度であるというのだ。

 しかし、松井氏はもう一つの代表的な雇用制度である「年功序列」にはノーを突き付ける。これは競争原理を放棄するものであり、実力なきものでも出世できてしまうことが「問題だ」というのだ。
 終身雇用でも年功序列ではなく、実力を評価しても欧米型の成果主義ではない。その独特な体制が、社員が辞めない会社をつくりあげ、無印良品の強さをもたらしているのだ。

 『無印良品の、人の育て方』は、無印良品の人材育成の具体的な方法を明かした一冊であり、上記で説明した2つのことが下敷きとなって組み立てられている。だから、おそらく単純に無印良品で実践しているシステムをそのまま導入しようとしても、そう簡単にはうまくいかないだろう。
 しかし、社員をどのような存在であると考えるか、どのようにコミュニケーションすべきか、社員に当事者意識を持ってもらうにはどうすればいいかなど、参考になる点はたくさんある。

 無印良品の働きやすさについては、インターネットでも「厳しいけれど、雰囲気がいい」など好評価の声が見受けられる。経営陣や管理職、上司の立場にいる人たちは、「なるほど」と思わせられる要素が満載であるはずだ。
(新刊JP編集部)

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