80年代、『バック・トゥ・ザ・フーチャー』シリーズで主役マーティ・マクフライを演じ世界的なスーパースターとなったマイケル・J・フォックス。深海パーティーで「ジョニー・B.グッド」のギターをかき鳴らす彼に憧れたファンも多いだろう。
『ファミリー・タイズ』シリーズや『摩天楼はバラ色に』などで優れたコメディセンスを持つ俳優として活躍を繰り広げていたが、1998年にテレビインタビューで若年性パーキンソン病であることを公表し、世間を驚かせた。
『ラッキーマン』(マイケル・J・フォックス/著、入江真佐子/訳、SBクリエイティブ/刊)は、マイケルが自分の人生、家族、仕事、そして病との闘いについて、自ら文章を綴った自叙伝である。
■ハリウッドでの成功・・・「セレブ」になる戸惑い
演劇や芸術、音楽の授業は大得意。けれど算数や化学は大嫌い・・・。演劇の才能を中学生の頃から発揮していた少年・マイケルは、ディズニー映画への出演をきっかけに高校を中退し、故郷カナダからアメリカ・ロサンゼルスに移り、プロの俳優として本格的な活動を開始した。
最初の数年間はヒット作に恵まれず、税金は滞納、生活費も底をつき、ほとんど文無しの生活を送ることもあった。主演を勝ち取ったテレビドラマ『ファミリー・タイズ』のアレックス・P・キートン役で注目を集め、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の大ヒットにより、世界的な映画スターへとブレイクした。
「リッチで有名」になったマイケルは、交通違反を見逃されたり、どこでもVIP扱いを受けたり、豪華なパーティーで大騒ぎをしたりといった、自分のいる「セレブリティ」な世界に戸惑いを覚えるようになっていく。そんななか出会ったのが、女優であり未来の妻であるトレイシー・ポランだった。
■妻への愛、そして闘病生活
ニューヨークで上流階級の家庭に育ち、美しく上品で芯の強いトレイシーは、マイケルの演技にも良い影響を及ぼした。『ファミリー・タイズ』で共演することによって、自分の演技を客観的な視点で見直すことができたのだ。マイケルは、トレイシーに強く惹かれ、結婚へといたる。しかし、お互いの仕事が忙しく共に過ごせない日々が続いていた。
そんなとき、マイケルにパーキンソン病の診断が下される。
パーキンソン病は、症状が出ると動作が鈍くなったり、体が震えたり、表情が乏しくなったりと、俳優である彼にとっては致命的ともいえる病気だった。将来への不安から、アルコールに依存し、病気を隠して仕事を詰め込むマイケル。トレイシーとの会話も途切れがちになり、次第に2人の距離は遠くなっていった。
■「ほんとうに大切なものをぼくは、病気のおかげで手に入れた」
時がたつにつれ、病気をごまかし続けることで家族の信頼を失ってしまっていることに気がついたマイケルは、ある決心をする。アルコールを止め、家族がそばにいるときでも、パーキンソン病の症状をおおっぴらに見せることにしたのだ。こうしたマイケルの努力がみのり、トレイシーの信頼を取り戻すことができた。
1998年、彼はパーキンソン病を世間に公表する。俳優を辞め、妻と子供たちとともに闘病に専念することに決めたのだった。
マイケルは、自分がパーキンソン病であることを受け入れ、病気になったからこそ家族や普段の生活の大切さを知ることができた、と書いている。
ここ数年、順調な回復を見せている彼は、2010年から『グッド・ワイフ』の第2シーズンより準レギュラーで出演。マイケル自身の病(パーキンソン病)がキャラクターに投影された、神経疾患で運動機能の障害を持った弁護士役を演じた。
さらに、昨年2013年9月より約13年ぶりの主演テレビドラマ『マイケル・J・フォックス・ショウ』の放送がアメリカで開始され、情報誌“Entertainment Weekly”の2013年秋放送の優秀新番組の1本に選ばれるなど、高い注目を集めている。
日本でも本日4月25日から、『マイケル・J・フォックス・ショウ』がCSチャンネル(スーパー!ドラマTV)で放送される。パーキンソン病を患い、職場を離れていたテレビキャスター、マイケル・ヘンリーが家族と仕事に向き合う姿を描いた心温まるコメディで、マイケルの半自伝的な内容となっている。妻であるトレイシーも出演しており、マイケルの魅力をさまざまな角度から楽しむことができそうだ。
『ラッキーマン』以降のマイケルが、闘病生活のなか、家族や仕事とどのように関わり、どんな思いで生きてきたかについては、『いつも上を向いて』(マイケル・J・フォックス/著、入江真佐子/訳、SBクリエイティブ/刊)に、詳しく書かれている。マイケルの強さ、勇気から学ぶためにも、『ラッキーマン』と併せて読んでみてほしい一冊だ。
(新刊JP編集部)
海外ドラマ専門チャンネル スーパー!ドラマTV「マイケル・J・フォックス・ショウ」
2014年4月25日(金)20:00~放送開始!(※初回は第1話・第2話、2話連続放送)
http://www.superdramatv.com/line/michael/
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