メジャーデビューを飾るグループが続出するなど、注目されている「地方アイドル」。その中でも、今、10年以上のキャリアを重ねる“ベテラン”が話題を集めています。
それが「Negicco」です。
Negiccoは、新潟を拠点にして活動している女性3人組のJ-POPグループ。「地方アイドル」のトップランナーであり、楽曲やパフォーマンスに対する評価が非常に高いのが特徴で、全国区としてもブレイク間近と言われています。
彼女たちはどうして10年というキャリアを経て、ブレイク直前まで辿りつけたのでしょうか。
その秘密が書かれているのが『新潟発アイドルNegiccoの成長ストーリーこそ、マーケティングの教科書だ』(祥伝社/刊)です。本書では「ストーリーブランディング」の第一人者・川上徹也さんが、1年半にわたる取材を通してNegiccoのマーケティング手法を明らかにしています。アイドルとマーケティング、どう結びつくのでしょうか?
Negiccoは2013年6月に結成10年を迎えました。
当初はJA全農にいがたの「やわ肌ねぎ」のキャンペーンユニットとして、1カ月限定ということで結成されました。しかし、キャンペーン終了後、「このまま解散させるのはもったいない」という声があがり、そのまま活動を継続、それが10年以上続いているのです。
さらに、Negiccoの3人は結成時のオリジナルメンバーで(結成時は4人組)、拠点を新潟から動かずに活動を続けてきたのです。こういったグループは他に例をみません。
川上さんはそんなNegiccoから学べるマーケティング手法を次の5つにまとめます。
(1)「思わず応援したくなる」存在になる
(2)周囲を巻き込み一緒になって楽しむ
(3)人の縁を大切にして「運」をつかむ
(4)インパクトのある名前にする
(5)全部、自分たちでやる
Negiccoの活動の多くが「お客さん(ファン)と一緒になって新しい価値を産み出すことで『市場をつくる』」ものです。実はこの考え方は、マーケティングの神様と呼ばれるフィリップ・コトラー氏が提唱している最新理論「マーケティング3.0」に合致します。
つまり、Negiccoは(本人たちは意識していないにせよ)、「マーケティング3.0」という手法を使って活動しているのです。
もちろんメジャーなアイドルも、「マーケティング3.0」的な活動は数多く行なっています。たとえば、AKB48の「シングル選抜総選挙」や「恋するフォーチュンクッキー」の動画プローションなどが典型的な例です。
しかし、あれだけの盛り上がりを達成できるのは、発信側が有名で資金も潤沢にあることが不可欠でしょう。
その点、Negiccoは、知名度もなければお金もない、しかも地方在住。泥臭く地道です。
だからこそ、説得力があり、再現性があるのです。有名ブランド企業でない、多くの普通の会社やお店が参考にできる事例なのです。
最初の「なぜか応援したくなる」について、もう少し詳しく見てみましょう。
その理由を、川上さんは「Negiccoが『ストーリーの黄金律』に基づいているから」と分析しています。
「ストーリーの黄金律」とは、次の3つの条件を満たしたストーリーです。
(1)何かが欠落した、もしくは欠落させられた主人公が
(2)遠く険しいちょっと無理なのではないかという目標・ゴールに向かって
(3)いろいろな障害・葛藤・敵対するもの・自分自身の弱さなどを乗り越えていく
地方アイドルで何度も何度も挫折を繰り返しながら、「武道館の玉ねぎの下でネギを振り回す(=武道館ワンマンライブ)」という高く遠く険しい目標にむかって、いろいろな障害や葛藤、自分自身の弱さを乗り越えていく物語。
Negiccoはまさに、この「ストーリーの黄金律」の主人公そのものなのです。
他にも、ビジネス的な見地から、Negiccoの活動はさまざまに分析できる、と川上さんは述べています。顧客を増やしたい、事業を長く続けたい……Negiccoの人気の秘密を分析すると、ビジネスの大いなるヒントになるはずです。
(新刊JP編集部)
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