景気回復を大きな柱の一つとしている「アベノミクス」ですが、長年日本経済を支えてきた輸出はいまだ伸び悩んだままで、1月27日に財務省が発表した2013年の貿易統計では過去最大の貿易赤字となっています。
一般的な見方は「黒字はいいことで、赤字はまずい」ですから「過去最大の貿易赤字=相当まずい」という気になりますが、ちょっと待ってください。
『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』(菅原晃/著、河出書房新社/刊)は、普段真剣に向き合うことの少ない「経済」について、素人にもわかりやすく教えてくれます。
それによると、『貿易赤字=悪いこと』と捉えるのはすごく危険なのだそうです。
■貿易黒字・貿易赤字に意味はない?
本書の著者、菅原さんは、一つの国単位に区切って輸入や輸出を量ることにはもう意味がないといいます。なぜなら、トヨタにしろユニクロにしろ、今の企業は多国籍化が進んでいるからです。
たとえば、一つの企業の中がA国、B国、C国に工場を抱えて、その企業内で部品や原材料のやりとりをすると、それぞれの国の輸出入にカウントされます。事実、日産のマーチは月に4000台ほど売れていますが、これはタイの工場で製造された「輸入車」であり、売れれば売れるほどタイの輸出と日本の輸入が増えるわけです。
一つの国の中でモノの製造過程が完結していた時代なら、貿易収支が黒字か赤字かということに意味があったのですが、多国籍企業・国際資本によって経済が動いている今の時代に、貿易を国境で区切って「赤字だから不調」「黒字だから好調」と考えてしまうと、経済の現状を見誤ってしまいます。
そもそも貿易において、比較すべきは個々の企業同士であって、国ではないのです。
他国と経済状況を比較するのであれば、GDPを見た方が確実です。GDPの値や一人あたりGDPの伸びを見れば、その国の経済の規模や伸びがわかりますし、GDPが伸びれば輸出入も必ず拡大するので、表向きの数字に騙されることは少ないはずです。
本書は、現役の高校教師が、タイトルの通り高校生くらいの知識でも理解できるほど平易に経済学の基礎を解説しており、「経済学の最高の教科書」として専門家からも注目され現在5万部を超えるベストセラーになっております。
社会人になると話のネタになることが多い分野ですから「今さら人に聞けない!」と思っている人は、入門編として本書を参考にしてみるといいかもしれません。
(新刊JP編集部)
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