乾電池やインスタントラーメン、胃カメラなど、今世の中に出回っているものの中には、日本人が発明したものが多々あります。
しかし、これらはほんの一端。歴史をひもとくと日本や日本人が世界に与えてきた影響の大きさは、多くの人が考えているよりもずっと大きいことがわかります。
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!』(小名木善行/著、彩雲出版/刊)は、そんな知られざる日本の素晴らしさや日本人の功績を教えてくれる一冊です。
一体どのようなものがあるのでしょうか。
■ライト兄弟より前に飛行機を飛ばした日本人
「世界で初めて飛行機の有人動力飛行に成功したのはライト兄弟」ということは常識として知っていても、「彼らより12年も前に飛行機を飛ばした日本人がいた」というのは知らない人が多いかもしれません。
21歳の時に徴兵され、香川の丸亀歩兵第一二連隊に配属された二宮忠八は、野外演習の帰り道に、昼食の残飯を狙って舞い降りてきたカラスの動きから「向かい風を翼で受け止めたら、空気抵抗で自ら空を飛ぶことができる!」と思い立ちます。これが、固定翼による飛行原理の発見です。
そして、一年間の試行錯誤の末、忠八は「カラス型飛行器」を完成させます。「飛行機」でなく「飛行器」というのが、彼が命名した名前でした。
まだ国産のガソリンエンジンがなかったこともあり、この「飛行器」の動力はゴム。いっぱいに巻いたゴムのねじり戻しの力でプロペラを回して飛ぶというものでした。
これを原始的だとあなどってはいけません。1891年4月29日、丸亀練兵場の広場で行われた飛行実験で、「カラス型飛行器」は10mほどの飛行に成功、翌日には30mに飛距離を伸ばしたのです。
自信をつけた忠八は有人飛行器の設計を始めますが、当時はまだ人が空を飛ぶことなど日本人には想像もつかない時代です。軍に研究開発費の支給を却下されたこともあって、忠八の夢は幻に終わってしまいました。
しかし、無人飛行機とはいえ、ライト兄弟よりも早く飛行原理に気づいていたのは驚きです。忠八の功績は後年になって評価され、彼が飛行実験を行った4月29日は「飛行機の日」とされています。
■世界を救った日本の小麦
人類の生存に欠かせないのが穀物。なかでも小麦はパスタやうどん、パンなど、世界中で広く使われ、人類の歴史は小麦の歴史といっても過言ではないほどです。
ただ、20世紀半ばまで、世界で生産されていた小麦には、背が高いわりに実りが少ないという欠点がありました。背が高いというのは、台風や強風の影響を受けやすく収穫量が安定しないということを意味しますし、実が少ないのは、収穫量を上げるために密度を高くして植えなければならないので土地が痩せやすいことを意味します。
ところが、戦後、GHQの農業顧問として来日したS.C.サーモン博士はそれらの問題を全て解決した小麦が日本で作られているのを目にします。
「小麦農林十号」がその品種の名前でした。高さが60cm程と、従来の小麦の半分ほどしかないにもかかわらず、はるかにたくさんの穂をつける日本の小麦に驚いた博士は、この種子をアメリカ本国に持ち帰りました。そしてさらに品種改良を重ねた結果生まれた「ゲインズ」という品種はアメリカの小麦の収穫高を一気に4倍にしたと言われています。
それだけではありません。メキシコに渡って品種改良された「農林十号」は病気にも強くなり、まさに「理想の小麦」となります。この新しい品種は1965~1966年に起こったインドとパキスタンの飢饉を救い、世界の小麦生産量を3倍に増やすなど、「緑の革命」の原動力となりましたが、その始まりは日本で開発された「農林十号」だったのです。
本書には、これまであまり光を当てられることのなかった日本の歴史や日本人の功績、日本が与えた世界への影響がわかりやすく、親しみやすい言葉で解説されています。
日本史の教科書に書かれていることだけが歴史ではありません。本書を読めば日本の奥深さと日本人の知られざる功績に気づき、自分の生まれた国をもっと好きになれるのではないでしょうか。
(新刊JP編集部)
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