アメリカのバラク・オバマ大統領、中国の習近平国家主席をはじめ、IBM会長のサミュエル・パルミサーノ氏、前世界銀行総裁のロバート・ゼーリック氏ら、世界各国の名だたる指導者たちが尊敬する政治家を知っているだろうか。
それは、「シンガポール建国の父」として知られ、貧しい都市国家を先進国へと変貌させた、シンガポール初代首相のリー・クアンユー氏である。
今年9月で90歳になったクアンユー氏だが、現在でもなお、世界に大きな影響を与える人物として注目されている。そんな彼について、オバマ大統領は「リーは、20世紀から21世紀にかけてのアジアの伝説的人物の一人だ」と評し、元南アフリカ大統領のF・W・デクラーク氏は「私が最も感銘を受けた指導者は、シンガポールのリー・クアンユーかもしれない。彼は、歴史の流れを変えた一人だ」と最大の賛辞を贈る。
そんなクアンユー氏が混沌とする世界を冷静に見つめる『リー・クアンユー、世界を語る』(グラハム・アリソン、ロバート・D・ブラックウィル、アリ・ウィン著、倉田真木翻訳、サンマーク出版刊)が10月15日に日本でも出版されることが決まった。
クアンユー氏の慧眼はまず中国に向けられ、「中国は世界でナンバーワンの国家になろうとしている」と指摘する。13億人という巨大なマーケットを持つ中国に対して、世界中の国々が注目しているとし、「中国の国益を脅かすことになった場合を想定し、自国の立場を見直している。中国は対立国に対して、収入が増えて購買力がついてきた13億の人口を抱える市場から締め出すという経済制裁を科すことができるからだ」と分析する。
では、かつて中国と同じく注目を集めたインドはどうだろうか。クアンユー氏は、インドを悲観的に見ているようだ。「これまで数十年にわたり国家の計画・管理がうまくいかず、お役所仕事や腐敗を招いてきた」と指摘し、さらにカースト制度を批判。インドは国力を十分に発揮していないと苦言を呈する。
また、アメリカについては「債務超過や赤字に悩まされているが、だからといって二流国家に転落することはない」と述べ、改革や再生能力の高さを評価する。そして、アメリカは今後も世界の中心的な役割を果たすだろうと言い、「アメリカのリーダーシップなくして解決することはできない。アメリカに代わって主要な世界勢力になれる国も組織もない」としている。
このように、クアンユー氏は世界の大国をはじめ、イスラム原理主義や民主主義、そしてグローバル化について、質問に答える形式で語り尽くす。また、「今後20年ほどで、世界はどんな大きな問題に直面するか?」という質問では、日本についても触れており、そこでは悲観的な提言がなされている。
クアンユー氏の戦略的思考をあますところなく味わえるとともに、これからの世界の動きを見通す上で重要な示唆を与えてくれる一冊だ。
なお、本書は10月15日に初版が発行されるが、Amazon Kindleで電子書籍版の一部が一足早くリリースされている。電子書籍版では、本書を3つのテーマ毎に章単位で分割・収録した分冊版と本書の内容をすべて収録した完全版があり、まえがきと第一章を収録した分冊版第一巻『リー・クアンユー、世界を語る1 中国の野心と戦略とは?』が9月20日に先行発売されている。一日も早くクアンユー氏の言葉を読みたい人は注目だ。
また、YouTubeには、「リー・クアンユー、世界を語る」と題した本書の動画がアップされている。下記のURLからチェックだ。
http://youtu.be/orDtpf-HYzg
(新刊JP編集部)
【関連記事】
・
「中国五千年の歴史」は大嘘だった!? 中国の本当の姿とは・
出された料理にハエ…日本人・中国人・韓国人の反応・
習近平で中国が衰退する理由・
中国が次々に狙う日本の領土米中は激突するのか? 伝説的指導者、世界を語る