あまたある会社の中でも、外資系コンサルティングファームといえば、「世界最高峰の頭脳」が集まる場所ですが、そこで働く人は一体どんな方々なのでしょうか。
『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(ソフトバンク クリエイティブ/刊)は、そんな外資系コンサルティングファームの中でも有力な「マッキンゼー」で行われている新人研修を取り上げ、同社に入ると叩きこまれるという、思考力・問題解決能力のスキルを解説しています。
今回は、本書の著者である大嶋祥誉さんにインタビュー。
本のことばかりではなく、OGだからこそ知るマッキンゼーの内側についても、お話をうかがいました。その前編をお送りします。
■“職人肌”が多いマッキンゼー
―『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』についてお話をうかがえればと思います。マッキンゼーといえば、一つのブランドとして様々な分野に人材を輩出し続けているのが大きな特徴ですが、大前研一さんや勝間和代さんといったOB・OGの方々に共通する点がありましたら教えていただけますか。
大嶋「“極める”といいますか、やりたい分野でこだわりを持ってやり抜くというのはみんな共通しているんじゃないかと思います。やりたいことに対して、決して諦めずに質のいい仕事を追求していく、その妥協のなさは感じます」
―どのような瞬間に彼らから「マッキンゼー」を感じますか?
大嶋「“これがマッキンゼーだな”と意識したことはあまりないのですが、みんな割と職人肌だというのはいえると思います。
マッキンゼーには、クライアント・インタレスト・ファーストっていうコア・バリュー(中心的な価値)があるんですけど、これはクライアントに大きな価値を提供するということです。
コンサルタントの仕事は、そこに向かってテーマを突き詰めていったり、仮説を立てて検証したりするのですが、決して妥協はしませんね。そこが、職人肌だと思う所以です」
―そういう性質は、入社して仕事をこなしていくなかで身についていくものなのでしょうか。
大嶋「最低限の意識づけやマインドセット、物事をロジカルに突き詰めていくスキルは叩きこまれます。ただ、やはり難しい仕事が多いので、すぐに高いバリューを出せるかどうかは別なのですが」
―マッキンゼーのOBであり、NPO法人クロスフィールズで代表を務めている小沼大地さんは、ある対談で「入社当初から3年でやめると決めていた」「自分を試すためにマッキンゼーに入った」と語っていました。この考え自体、一般的な会社では珍しいものですが、こういった動機で入ってこられる方は多いのでしょうか。
大嶋「そう思います。マッキンゼーでずっと働き続ける人の方が少ないのではないでしょうか。一般的な会社のように、課長、部長と組織の中でステップアップしていくという発想はあまりないと思います。
それに、マッキンゼーで働いて2、3年経つと、これからどうしようか、自分はどうしたいのかというのを否が応にも考えるようになるんですよ。私も、入社当初は何も考えていなかったのですが、やはり1年くらい働くと、“次はどうしようかな”と自然に考えるようになりました」
―大嶋さんは、どういった動機でマッキンゼーを志望されたんですか?
大嶋「大学時代に大前研一さんがテレビで“これからは頭から上の時代”ということをおっしゃっていて、その言葉にハッとさせられたことがあったんです。物事をどう捉えるか、ある事象をどう咀嚼して付加価値をつけるかが、これからは大事になるなと思って、情報を扱う仕事をしたいなと考えるようになりました。
だから、マスコミがいいかなとも思ったんですけど、大前さんの印象も強かったので、マッキンゼーも受けてみようとなったんです」
―入社前と入社後で、マッキンゼーに対するイメージは変わりましたか?
大嶋「最初からコンサルティングファームに行こうと思っていたわけではないので、入社前のイメージが特になかったんです。だから入ってからも“こういうものなんだろうな”と思ってやっていましたけど、やはり仕事は大変でしたね。
入社して1週間目とか2週間目の時点で、すでに誰かに頼れる雰囲気ではないというか、自分で考えて物事を進めないといけなかったので、大変なところに来てしまったと思った記憶があります」
―普通の会社なら、まだ上司や先輩が手とり足とり教えてくれている時期ですよね。
大嶋「もちろん、先輩も上司もいましたし、わからないことは聞けばいいんですけど、彼らが逐一面倒を見てくれたり、仕事の進行をチェックしてくれるというわけではありませんでした。与えられた仕事に対しては自分から動かなくてはいけなかったんです。
たとえば、1週間後までに自動車業界について調べてくれ、と上司に頼まれたとすると、1日か2日後までには、情報を集めて、それを基に仮説を立てたり、ロジックを組み立てたりするんですけど、そこまでは自分で考えてやります。そして、その段階で“こんな展開でまとめようと思いますがいかがでしょうか”というように、自分から上司や先輩を捕まえて、聞きにいかないといけませんでした。
とにかく早めに動くというのは意識していましたね」
(後編に続く)
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