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憲法がしゃべった? 童話形式で憲法を学べる本

 7月21日に行われた第23回参議院議員選挙は、自由民主党の圧勝に終わった。その選挙の大きな争点の一つが「日本国憲法」の改正だった。
 現行の憲法は、終戦直後の1947年5月3日に施行されたもので(公布は1946年11月3日)、66年経った現在に至るまで、一度も改正されたことがない。しかし、60年以上も時が過ぎると、当時の条文が今の時代に合わないと感じられるような部分も出てくる。
 そうした背景の中で、近年、憲法改正への動きが高まっているのだ。

 しかし、日本に暮らす私たちの中には――政治に無関心な人たちがいるのと同じように――国のルールである憲法について全く無関心な人たちもいる。憲法改正が自分の生活にどのような影響を与えるのか。今ある憲法が自分の生活にどのような恩恵をもたらしているのか。それを想像できなければ、自分ごととして考えるのは難しいのかもしれない。
 それでも、日本に暮らす私たちは、国のルールの概要は知っておくべきだろう。私たちの「基本的人権」は憲法によって保障されているし、この国を動かす統治機構の仕組みも憲法に規定されているからだ。
 私たちは“公共の福祉”に反しない限りは、どのような表現をしても、どのような宗教を信じても、どのような研究をしても自由だ。そのことは、日本国憲法の中でしっかりと明示されている。

 ここで覚えておいてほしいことがある。それは、現行の日本国憲法は、国民をしばるためにあるルールではないということだ。
 憲法がしばるのは、日本という国。
 つまり、国民の自由を保障するために「国の活動をしばるルール」が、憲法なのだ。これは立憲主義の憲法を持つ国では、当然のルールとされている。

 これに対して、2012年4月に自民党が発表した憲法改正草案には、さまざまな条項案が書かれている。改正案に対しては、憲法改正論者からも反対が出るなど、多くの考え方が示されている。忘れてはならないのは、改正案も、最後は「国民投票で決める」ということだ。「あなたが投ずる一票」が、日本のルールを変えることになるかもしれない。変えるべきか、変えるべきでないか。それをあなたが投票する日が、近い将来やってくるかもしれないのだ。そのときのためにも、今から憲法の基礎は学んでおくべきといえる。国民一人ひとりが時間をかけてじっくりと考えるべきことだからだ。

 今回の参議院議員選挙で大勝した自民党が、憲法改正に向けてどう動くのか、私たち国民は見守っていかなければならない。その上で大切なのが、今ある「日本国憲法」の姿とその歴史を知っておくこと。

 これまで25冊の本を書いてきた弁護士の木山泰嗣さんが2011年3月に出版した『憲法がしゃべった。』(すばる舎/刊)は、「けんぽうくん」という謎のキャラクターが登場する異色作。その話を聞くのが、2人の子どもだ。権力を握ろうとするライオンの顔をしたライ男、いじめられっ子でシマウマの顔をしたシマ男だ。夏の晴れた日の公園で、けんぽうくんがしゃべる「憲法」には、憲法以外の意味も隠されているようにも読める。不思議なキャラクターが織りなす物語を読むうちに、自然と日本国憲法のことが分かる、今までになかったタイプの本。

 発売当初から「感動した」「やさしい気持ちになれた」「親子で読みたい」と評判だったが、今、再び注目を集めているという。やさしい言葉で語られており、たしかに分かりやすい。童話のような物語を通じて、子どもでも興味を持てるはずだ。夏休みの今、親子で一緒に読むのもいいだろう。

 日本国憲法は、私たちの生活に深く根付いている。それが理解できれば、憲法改正によってどんなことが変わるのか、どんな利益があって、どんな不利益があるのか、なんとなくでも想像つくはずだ。
 まずは、今ある憲法に興味を持ち、その中身を知ること。そこから始めてみてはどうだろうか。
(新刊JP編集部)

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