社会人としてある程度経験を積むと、後輩や部下を率いたり、教えたりと、「リーダー」的な役割を求められることが増えます。
優れたリーダーの条件については諸説ありますが、共通しているのは、決してカリスマ性が必要ではなく、人として完全無欠である必要もないということ。
では、長所も短所もある“普通の人間”はどうしたらリーダーとして成功できるのでしょうか。
『バカと笑われるリーダーが最後に勝つ トリックスター・リーダーシップ』(松山淳/著、ソフトバンク クリエイティブ/刊)によると、成功するリーダーには「トリックスター性」があるといいます。
「トリックスター」とは、神話や物語で、神や自然の秩序を破り、物語をかき回す人物のこと。わかりやすいところでは『西遊記』の孫悟空などがあげられますが、彼らのどのような性質が、リーダーに必要とされているのでしょうか。
■矛盾する性質を併せ持つ
トリックスターは多くの場合、「善と悪」「賢さと愚かさ」といった二面性を持つ人物として描かれますが、これは優れたリーダーの性質とも重なります。
「成果に対しては冷徹な一方で、人に対しては温かい」という、一見すると相反する二つの性質が、一人の人間の中に同居しているのが優れたリーダーの共通点なのです。
実在した人物でいうと、比叡山焼き討ちで、女、子ども、僧侶構わず皆殺しにするような冷酷さを持ちながら、豊臣秀吉の妻「ねね」に慈愛に満ちた手紙を送る一面も持ち合わせた織田信長がこのタイプにあてはまります。
■失敗を笑いに変えて、前に進む
2011年7月22日、西武ドームで行われたAKB48のコンサートは、総合プロデューサーの秋元康氏をして「最悪のコンサート」と言わしめるほどの失敗だったといいます。
そんななか、同氏に叱責されて落ち込むメンバーたちの前に立って自らの思いをぶつけたのがリーダーの高橋みなみさん。
高橋さんは「今日のような公演が続くようだったら…たぶん終わります」などと、厳しい言葉を率直に口にします。普通のリーダーならばさらにメンバーを叱責してしまうところですが、高橋さんは違いました。批判的な言葉はそこまでにして、次回の公演に向けた前向きな言葉に切り替えたのです。最後は自ら率先して笑顔を見せて、メンバーの気持ちを一つにまとめたといいます。
失敗は成功の糧。
落ち込むだけでなく、その失敗をプラスのエネルギーに変えられることも、優れたリーダーの条件です。
■時には人を欺くしたたかさを持つ
トリックスターは、時に平気で人を欺いたり、いたずらや悪さをしますが成功しているリーダーにも多かれ少なかれこのような性質をもっているものです。ただし、単に人を欺くのではありません。目的達成のためには人を欺くのも厭わない“したたかさ”を持つというのがポイントです。
組織で仕事をしていると、周囲からの反対で正しいと思うことができないことが多々あります。そんな状況でも潰されずに物事を前に進めるためには、周囲の人の言うことを受け流したり、とぼけたりして巧みにかわすテクニックが不可欠なのです。
リーダーに求められるのは「強さ」ではなく「しなやかさ」。
そのしなやかさを手に入れるために「トリックスター」の性質は絶好の教科書になるはずです。
本書には、著者の松山さんが出会った数々のリーダーたちの実例を交えて、「トリックスター」的なリーダー像が考察されています。
人をまとめる立場になったもののうまくいかないという人は、目指すべきリーダー像を考える際の新しい視点として、本書を活用してみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)
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