7人の女子高生たちを追い詰める恐怖。一人ひとりの本性が晒され、お互いがお互いを信じられなくなり、自分だけが助かろうと壮絶な殺し合いを始める…。
昨年、AKB48の北原里英さん主演で映画公開された「ジョーカーゲーム」は、「バトル・ロワイアル」や「ライアー・ゲーム」「リアル鬼ごっこ」など“ゲーム映画”の王道を継承する映画として大きな反響を得た。
そして、今年8月17日にはその続編にあたる「ジョーカーゲーム 脱出」が、女性アイドルグループ・私立恵比寿中学の鈴木裕乃さん主演によって劇場公開される。
文科省推薦の教育プログラム「ババヌキ」。
これは、日本人のIQ低下を憂えた政府が「人間力」を高めるために導入されたテストで、全国の高校生の中からランダムに選ばれたクラスが対象となる。その内容は、単純にトランプゲームの「ババヌキ」なのだが、敗者は「矯正施設」へと連れて行かれることになっており、参加を拒否した者は撲殺される。
そのゲームの対象になったのが、主人公の赤沢千夏のクラスだった。何気なくババヌキをスタートする千夏たちだったが、最初の敗北者――下田ちひろが薬を打たれて施設へと連行されるのを見て、生徒たちは恐怖に怯える。
逃げ出すことのできないトランプゲーム。そんな中、クラスメイトの大野香奈が「自分が負ける」と言いだす。実は香奈の姉も「ババヌキ」に参加させられ施設に連れてこられており、その姉を助けるために自分も負けようとしていたのだ…。
ここまでが前作「ジョーカーゲーム」の物語で、その続編となる「脱出」は舞台を施設に移して繰り広げられる。
8月17日の公開に先駆けて、小説版『JOKER GAME ESCAPE』(山咲藍/原案、絵空アオ/著、竹書房/刊)が7月25日に出版されているので、そちらから内容を少し紹介しよう。
前作から引き続き登場するのは、千夏のクラスの最初の敗北者であった下田ちひろ。大人しくて子どもっぽい彼女は真希という少女に懐いており、彼女たちは7人グループに束ねられて、同じ班員たちと共同生活を送っていた。
施設に連れてこられてから3ヶ月。突如、身体検査の名目のもとに施設の「教官」から呼び出され、妙な液体を飲まされる。それは強力な睡眠薬であり、7人の少女たちは一つの部屋に閉じ込められてしまうのだ。
さらに、目を覚ました7人の前に置かれたテレビモニターの中に、“ジョーカー”と名乗るピエロの風貌をした男があらわれ、次のように言う。
“敗北者の君たちにこの矯正施設から脱出できるチャンスをあげます。この部屋の出口を見つけて脱出することができれば、あなたたちは晴れて自由の身。ですが、時間はありません。あなたたちには毒が仕込まれています。タイムリミットは2時間。”
そして、ジョーカーが「ゲームの始まり」が告げるのだが、ここでジョーカーが去り際に残した、7人の中に裏切り者が一人いるという一言が、少女たちの心を狂わせる。
この部屋で何が起こるのか?
誰の言葉が正しいのか?
疑心暗鬼の中で、脱出のヒントを見つけ出そうとしたそのとき、一人目の犠牲者が出る…。
一言断っておくと、この作品には、「良心」というものがひとかけらもない。気持ちが少しでも明るくなるような記述があったとしても、それに惑わされてはいけない。表面的な友情はいとも簡単に打ち砕かれ、7人の少女たちの本性がむき出しになる。
この小説版は、映画版の物語や展開とは大きく変わっているところが数か所あり、どちらを先に読んだり、観たりしても、楽しむことができるという。もし映画を観てから小説版を楽しむ場合は、小説版ならではの内容を味わって欲しいし、その逆もまた然りだ。
前作の映画ファンはもちろんのこと、この夏を涼しく過ごすために本書を手にとってもいいのかもしれない。前作を知らなくても、随所に出てくる苛酷なシーンに背筋が凍る経験ができるだろう。
(新刊JP編集部)
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