考えの違う相手と交渉して、自分の意見を主張する状況は、年齢や性別問わず、どんな人にでもあります。
ビジネスの交渉もそうですし、子どもが親にお小遣いの値上げを求めるのも一種の交渉です。となると、交渉を有利に進めるスキルを持つことは、生活の様々なところで役立ってくれるはず。
『プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法』(石井琢磨/著、すばる舎/刊)は、交渉を有利に進めるために、相手の心理面にはたらきかけるテクニックを教えてくれます。これを知れば、苦手だった交渉やトラブル解決を上手にこなせるようになるかも…。
■さりげなく基準を設定する
金額や日数、期日など、数字による解決を目的とする交渉の場合、大体の目安となる数字を提示しなければならないケースがあります。
もちろん、そういった数字的な基準はこちら側がコントロールするのが望ましいのですが、相手に数字を提示する時には注意が必要です。
たとえば200万円の慰謝料を取ろうとする時に、きっちり200万円請求したら、おそらく希望通りの金額を得ることはできません。請求した「200万円」という金額が基準となってしまい、相手はそこから減額できるかどうかという視点になるからです。
こういうケースでは、ある程度減額されることを見越して、200万円に少し上乗せした額を請求しないと、希望通りの金額を手にすることはできません。
交渉において、相手の脳に最初に刻む「数字」は大きな意味がります。数字の大小や並べ方、出し方に気をつけて、狙った方向に相手をさりげなく導くのが交渉事のコツなのです。
■「サンクコスト」を活用する
交渉で相手をうまく合意に導くには、状況を利用することもポイント。
その方法の一つが相手に「サンクコスト」を意識させることです。
「サンクコスト」とは、何らかの成果を得る前に払ったコストを指します。交渉相手からすると、それは「時間」であり「労力」です。
長い交渉の後で「これだけ時間をかけたのだから、話をまとめましょうよ」と、それまでのサンクコストを意識させることで、もめている事案も妥協してもらえる可能性が高くなるのです。
■説得力は背景で決まる?
高価なスーツを着たビジネスマンが、高級ホテルのラウンジに商談相手を呼び出して「お金がないからまけてくれ」と言っても説得力がないように、交渉での説得力は背景によって変わります。交渉の舞台は、その内容やテーマを考えてより適した場所を選ぶ必要があるのです。
その際、チェックすべきなのは、「相手に座る席から見た景色」です。交渉をまとめたいのに、相手の席から「マンション建設反対」と書いたのぼりが見えたら、こちらの提案にも反対されてしまうかもしれません。自分の言葉により説得力を持たせるためにも、交渉の場所選びと、事前の下見は怠らないようにしましょう。
交渉というと、どうしても「論理」を強化してしまいがちですが、人間は最終的には感情で動きます。それだけに、相手の心理面に訴えるテクニックは、交渉で大きな効果を発揮するのです。
本書には、弁護士として数々の交渉をまとめてきた著者ならではの心理テクニックが多く取り上げられていますので、ビジネスで、プライベートで、活用してみてください。
(新刊JP編集部)
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