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失敗リスク高まった?最近の起業事情

 終身雇用が崩れ、働き方が多様になりつつある今、起業を考える人の数は確実に増えているはずです。
 しかし、当然のことながらきちんと計画して起業しないと、すぐに行き詰まり、結局は失敗に終わるリスクもたかまります。特に気になるのは「お金」です。
 起業に当たって、「お金」の面でどんなことが大事になるのでしょうか。
 『起業する前に読んでおきたい お金の本 小さな起業のファイナンス』(ソーテック社/刊)の著者で税理士の原尚美さんにお話を伺いました。

―『起業する前に読んでおきたい お金の本 小さな起業のファイナンス』は、起業を考えている人にとって大きな不安である「お金」についての不安を解消し、起業を成功させるために必要なことを教えてくれます。まず、本書をお書きになった背景についてお聞かせ願えますか?

原「まず、近年起業がしやすくなってきているという背景があります。起業する際の最低資本金がなくなりましたし、登記も簡単になりましたから。
加えて、終身雇用制が壊れつつあること、一つの会社で勤め上げるという時代ではなくなってきていることもあって、起業をする人は増えているのですが、その分失敗してしまう例も増えているんです。
まだまだ日本の社会は起業で失敗した人に優しくはないので、そういった人たちが失敗をしないようにアドバイスができたらいいなと思ったのがこの本を書いたきっかけですね。
私は会計事務所を20年やっているのですが、会計事務所というのは、基本的に創業時からその会社とお付き合いします。成功する起業家に共通するマインドなどについて、これから起業する方にお伝えできればいいなと思っています」

―原さんの会計事務所は、顧客としている企業の9割が黒字だと伺っています。ただ、それとは別に、たくさん起業をする人がいる中ではやはりうまくいかない会社もあるはずです。原さんの感覚として、起業後順調に軌道に乗っていく会社というのはどれくらいありますか?

原「うちにいらっしゃる方はもともと“会社を大きくしたい”という、前向きな方が多いです。ただ、それでもやはり最初にお話をした時に、ちょっと厳しいかな、という方もいらっしゃいますね。
たとえば、最初に起業後1年間の簡単な事業計画を作るのですが、その時の売り上げの予測が凄く甘かったりする方はちょっと難しいかなと思ってしまうのが正直なところです。そういう方も全体の1割くらいはいますね」

―やはり、自分の事業の売り上げ予測はなかなかシビアな目では見られないものなのでしょうか。

原「起業前に大企業に勤めていた方ほどその傾向がありますね。大企業という看板がなくなった時、それまでは営業をしていれば仕事が取れていたのに、独立するとそう簡単にはいかないということに気がつかない人が少なくありません。
あとは、売り上げは予測通りにあがったとしても、想定外のコストがかかって、お金が回らなくなってしまう方もいらっしゃいます」

―初めて原さんの事務所に来る方というのは、起業の相談に来る方が多いということですね。

原「そうですね。会社を作りたいという方が圧倒的に多いです。それと、起業するにあたって融資を受けたいという方。大体はどちらかですね」

―そういった方々から相談されることで最も多いものはどういったことですか?

原「やはりお金に関する相談ですね。会社を経営するにあたって、少ない自己資金をどうやって回したらいいのかわからない方が多いです」

―お金を貯めていないわけですね。

原「そうですね。10年前は、自己資金を貯めてから計画的に独立する方が多かったんですけど、今は勤めている会社の業績が悪くなったとか、ちょっと友達に誘われたからという軽い理由で、自己資金を貯めずに起業をする方が多いように思います。
インターネットが発達したおかげで、パソコン一つあれば自己資金がなくても起業できるようになったのは確かですが、ビジネスを拡大するためにはそのための資金が必要です。
また、飲食店のように設備投資にお金がかかる業種で起業する方の場合は、設備資金の他に運転資金が必要です。そこで、この本では飲食店を開こうとしている人を例に出しています。
もちろんいい面もあるのですが、最低資本金がなくなって起業がしやすくなったということで、失敗するリスクも高まったと思いますね」
(後編につづく)

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