あなたの会社はオフィスの環境を清潔に保てていますか?
なかなか整理・整頓が出来ていないんだよね…という人も多いと思いますが、しかし、実はその整理整頓できていない状況が、会社の業績が伸びる妨げになっている可能性もあります。
宮城県栗原市にあるサンドビック瀬峰工場。ここはスウェーデンに本社を構えるサンドビックグループが所有する工場です。サンドビックは世界に4万8000人もの従業員を抱える工作機械メーカーで、ベルトコンベアを開発したことで知られています。
実はこの瀬峰工場、以前はサンドビックの中でもお荷物的な存在で、閉鎖まったなしの状態でした。しかし、現在は奇跡の復活を遂げて、サンドビックグル―プの核ともいえる位置づけになっており、存在感を見せつけています。
その復活のカギが「5S」だったのです。
「5S」とは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」のこと。「3S」はよく耳にすると思いますが、そこに清潔と躾(しつけ)が加わり「5S」となっています。
この瀬峰工場、十数年前まではとんでもなく「暗い」工場でした。
現在、サンドビック日本法人の社長を務めている藤井裕幸氏は2000年にサンドビック社に転職したのですが、当時の瀬峰工場は、製品の品質は良いものの、とにかくコストが高く、製品が完成するまでのリードタイムもサンドビックの工場の中で一番長い、つまり、生産性が低く、市場からの要望も迅速に応えられないお荷物工場だったのです。
本社から瀬峰工場の閉鎖を伝えられた藤井氏は、当の工場を訪問したのですが、とにかく「暗い」印象を受けたようです。業績が悪いので設備投資をしてもらえず、古い機器が並び、工場内は原料によって黒く煤け、工場内には台車が無造作に散らばっているという状況。また、従業員の顔に精気はないように見えました。
藤井氏はそんな状況だった瀬峰工場を閉鎖の危機から救うべく立ちあがります。タイムリミットは2年。
まず彼がしたことは、工場内の無駄を徹底して洗い出すことでした。一カ月間、工場内のあらゆる部材・設備が本当に使われているのかどうかを見て、その一カ月で一度も使わなかった工具を集めて、従業員の目の前で燃やしてしまったのです。
使わないものとはいえ、自分たちのすぐ側にあった工具が燃えているのを見ると、心に「痛み」を感じるものです。藤井氏の改革はこの「痛み」が原動力となりました。
さらに改革は続きます。藤井氏はリードタイムの短縮を目指し、「5S」を徹底させるのですが、それは標語的な「5S」ではなく、儲けるための「5S」を強く意識させるものでした。
工場の設備を毎日しっかりと綺麗に保つことで、故障を予防することができます。それが生産性の向上に大きくつながることは、そこで働く人たちにとっては誰もが分かることでしょう。
また、工場の床は大手のデパートよりもピカピカです。
以前の床や壁は原料の粉で汚れ、とても重い雰囲気でしたが、藤井氏はそこを真っ白に塗り替えました。普通、工場は金属の粉や機械の油ですぐ汚れるものですから、真っ白な塗装はしないものですが、藤井氏は逆転の発想で、「汚れが分かるからこそ掃除をする、その習慣づけをする」ことを狙ったのです。
藤井氏の提唱した「5S」は見事に定着し、無駄がどんどんなくなっていくと、工場の状況は大きく好転していきます。
藤井氏自身が執筆した『究める力』(ダイヤモンド社/刊)は、「5S」が工場にイノベーションをもたらしていく、その過程がつづられた一冊です。
「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を究めていくことで、大きなイノベーションを巻き起こせるということが、本書を通して理解できるはずです。
そして、そのために重要なのが、「徹底して続ける」ということ。当たり前なことなのになかなか出来ていないということは結構多いはずです。本書はそうした「なかなか出来ない」状況から抜け出すモチベーションを与えてくれることでしょう。
(新刊JP編集部)
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