中国の歴史は嘘だらけ!? 孫文の辛亥革命はインチキ!? 毛沢東は稀代の暴君だった!? 日本と中国に関係する通説をことごとく斬っていき、通説の裏に隠れた本当にの中国をあぶり出す一冊の新書が話題になっている。
それが憲政史研究者・倉山満氏の『嘘だらけの日中近現代史』(扶桑社/刊)だ。
『嘘だらけの日米近現代史』(扶桑社/刊)に続く、嘘だらけの近現代史シリーズ第2弾となる本書は、日本の中国研究者が書けないタブーにまで切り込んでいるという。
では、何が嘘だらけで、どうして研究者たちは沈黙するのか? そして中国の本当の姿とは? 倉山満氏に直接お話をうかがった! 今回はその前編だ。
(金井元貴/新刊JP編集部)
■中国の歴史は嘘まみれで同じことの繰り返しだった!?
―「中国」というと夏王朝から続く3000年、4000年という長い歴史があるというのが通説です。
「ところが、まずそれが大嘘なんです。王朝はあっても、それが今の中華人民共和国の“歴史”とは限りません。別の言い方をすると、通説とされている“歴史”そのものが中国政府のプロパガンダといえるでしょうね。
しかも、彼らはより長いものが好きなので、どんどん年数は伸びていっておかしなことになっています(笑)。今では、中国の歴史は6000年あるという説も出てきているようです」
―どうしてそんなに年数が延びているんですか?
「他国に対抗している部分はあります。日本が皇紀2600年といえば、あちらは3000年と言ってきましたし、ユダヤや北朝鮮が5000年といえば、6000年と言う。しかも確実な考古学的発見がないまま、いつの間にか増やしてしまうんです。だから、大風呂敷を広げて、誰も畳まないというのが彼らの特徴と言えるでしょう」
―もちろんそれが考古学的にも実証されているならば良いのでしょうけど、もしそれがないとなれば無責任と言われても仕方がないような…。
「実を捨ててでも名を取る。恥の概念はないけれどメンツは大事。そして、どんなときでも内ゲバが大事。これが中国の特徴です。
例えば、日中戦争こと支那事変は中国の反蒋介石派が話をこじらせたことが発端で起きました。彼らが日本人たちにテロを仕掛けて、蒋介石に対して『日本と戦え!』という中華ナショナリズムという錦の御旗を掲げます。一方、蒋介石は、日本と戦っても負けることは目に見えているので、戦うことはできずに板ばさみになるんですね。
そうすると、反蒋介石派が『軟弱なやつだ!』と言って、さらに日本を挑発するためにテロを繰り返す。結局、中国は日本に攻め込まれて国中荒されて、蒋介石は重慶の山奥に立てこもって徹底抗戦しているのに、そういう状況でも、反蒋介石派は『ざまあみろ』という態度を取るんです。もう無茶苦茶です」
―この本を読むと、まさにそれは一つの典型的な例であることが理解できますね。同じことが何度も繰り返されて、国が滅んでは新しい王朝が生まれて、さらにそれを繰り返すという…。
「そうですね。近年では歴史教科書問題も同じで、この本には書いていませんが、あれを煽ったのは反訒小平派だといわれています。訒小平はアメリカや日本に近づいて、ソ連を抑えようとしていましたが、『なに軟弱なことやっているんだ』と反訒小平派が煽って火をつけた。これは蒋介石のパターンと同じです」
―そのサイクルがずっと繰り返されてきたんですね。
「中国史を見ていくと、一つのパターンに図式化できるんです。そこには8つの段階に分かれていて、たまに戻ったり飛ばしたりするんですけど、根本的に8段階目で一つの王朝が滅びて、次の王朝が覇権を握り、また8段階目までいって滅び…と、その輪から抜け出せないんです。(*1)
だから、この本で中国史を振り返ったのですが、固有名詞と数字を入れ替えるだけの単純なお仕事でした(笑)。それは冗談でも、ほぼ全部同じパターンなので、だんだん飽きてkてしまうという」
―では、「中国六千年の歴史」が嘘だというのはどういうことなのでしょうか。
「中国の歴史を遡って行くと占領と内ゲバの連続なんです。例えば、清の初代皇帝であるヌルハチは満州人ですし、元のフビライ・ハンはモンゴル人です。彼らは今、中華人民共和国といわれている土地のかなりの部分を支配していた人たちであって、中国人ではありません。もし、彼らを中国人とするならば、日本でいうと戦後に日本にやってきたダグラス・マッカーサーを日本人と見なさいといけないくらいの暴論です」
―この本には様々な通説が出てきますけれど、結局私たちが知っている通説とは何なのでしょうか。
「中国に対する幻想ですね。実は幕末や明治時代までは中国大陸のことをちゃんと分かっていました。
例えば、吉田松陰という浪人がいます。あの人は今で言うと勉強が凄まじくできるネトウヨみたいな人で(笑)、幕府が持っている中国大陸の情報を盗みに入って、それを読んだだけでどんなところか分かってしまうんです。彼自身、勉強するということは戦をすることと同じという意識を持っていましたし、松下村塾の塾生全員がそうだったようです」
―そうした意識が変わってきたのはいつ頃のことなんですか?
「それは、日露戦争に勝った頃ですね。緊張の糸が切れ始めて調子に乗る人が出てきます。まあ、五十年も緊張状態でしたから、限界だったというのも分かりますけどね(笑)。そこから軍と文官の対立が激しくなり、軍の中でも喧嘩が起きる。大日本帝国として東アジア最強の国になって傲岸(ごうがん)な人間が増えるのです。
そういう風潮に対して警鐘を鳴らしたのが、夏目漱石や吉野作造でした。彼らは中国や台湾、朝鮮はすでに独自の文化を持っていて、彼らに対して高圧的に出ても統治できないのだから、その文化を認めてあげた上で、主権国家を持つ能力がないのであれば恨みを買わないように文化的な統治をすることが日本にとって国益であると説いたんです。これはすごくバランスの取れた意見なのですが、現代の視点から見ると完全な帝国主義者で右翼です。しかし当時はこの意見はもろに左でした。バランスが取れているのに中道じゃないんです(笑)。だから、そういった意見はどんどん排除されていったのです。
そのため、本当の中国の姿というのが見えなくなってしまった。そういった幻想に惑わされたままではいけない、賢くならないとまずいという危機感から、私はこの本を書いたんです」
―夏目漱石や吉野作造には先見の明があったということですね。
「そういうことですね。特に夏目漱石は、すでに日清戦争で勝ちに行くときに、日本人は滅びると言っています。つまり、その時には1945年8月15日の日本の姿が見えていたわけなのです」
(後編へ続く)
(*1)8つの段階は以下の通り
1、新王朝、成立 → 2、功臣の粛清 → 3、対外侵略戦争 → 4、漢字の一斉改変と改ざん歴史書の作成 → 5、閨閥、宦官(かんがん)、官僚など皇帝側近の跳梁 → 6、秘密結社の乱立と農民反乱の全国化 → 7、地方軍閥の中央侵入 → 8、1へ戻る
倉山氏によれば、基本的にはこの8つのパターンを繰り返すのが中国史なのだそうだ。
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