ビジネスの現場に携わっていると、多かれ少なかれ悩みや課題は出てくるもの。そして、その悩みを解決しても、また新たな課題や疑問に立ち向かわなくてはいけません。
では、そんな課題を世界で活躍しているビジネスパーソンはどのように解決してきたのでしょうか?
この連載では『そろそろ、世界のフツーをはじめませんか―いま日本人に必要な「個で戦う力」』(日本経済新聞出版社/刊)で日本のエリートビジネスパーソンでも世界に追い付けていない人が多いと指摘する今北純一さんと船川淳志さんのお二人にご協力いただき、ベテランビジネスパーソンとしてアドバイスをもらうという企画だ。
質問者の悩みと少しでも被る人がいれば、国境を越えて活躍をする二人の真摯な回答を是非参考にして欲しい。(新刊JP編集部)
■質問
新卒で入社して1ヶ月が過ぎました。新しいことを覚えるのに精一杯で、忙殺される日々に焦りを感じています。20代をどう過ごせば良いでしょうか?
【船川さんからの回答】
「答えは出なくてもいいから、将来どうしたいのかという問いと向き合い続けろ」
「新しいことを覚えるのに精一杯」ということは、きっとあなたは真剣に仕事に取り組んでいるんですね。学生から社会に出た時だけではなく、今後、社内のローテーションでも、あるいは転職して職場が変われば、当然学ぶことが増えていきます。つまり、あなたの成長カーブは今のびているという事実を忘れないでください。
「せかフツ」を読んでいただければ、おわかりのように今北さんも私も「成長カーブ」を常に伸ばしていくことをこころがけてきました。
恐らく、これから会社に慣れていくにつれて、余裕もできてくることでしょう。しかし、同時に自分の考え方や世界観が、会社の中の枠に限定されはじめていくことにもなっていくのです。
従って、常に素朴な疑問を持つことを忘れないことです。そして、仕事以外で、いろいろな人と出会うことも重要です。つきあっている人間が社内に限定されてくると、見方も狭くなってしまうことがあります。
つまり、「悶々としている自分」や「焦っている自分」に気づいたら、しっかりと、ご自身にむきあって「これは極めて成長のためにはまともなことなのだ」と認めた上、「では、これから何がしたいのだろうか?」、「今は出来ないけど、将来どうしたいのだろうか?」と問い続けてみてください。答えはみつからなくてもいいのです。
そうして自分自身に向き合った時間は必ず将来に役立ちます。今、ふりかえると私の20代は修業時代でした。トライ&エラーの連続でした。ふり返ってみて、確実に言えることがあります。周り道でも、もがいてでも、前に進んで行けば必ず自分の成長にはなることです。「やってきたことは、決して自分を裏切らない」これは、私が30代、40代、あるいは50代の人にも言ってきていることです。
【今北さんからの回答】
「忙殺されるほど仕事があるのは悪いことではないが、知的好奇心を失くすな」
どんなに潜在能力の高い人でも、はじめから即戦力になれるわけではありません。この意味においては、だれにとっても、新しいことを覚えるという作業は必要なことです。ただ、日々の仕事に追われることがルーチン化してしまうと、学びのプロセスがいつの間にか、すべて受身になってしまいます。そして、そのうち、会社からみれば使い勝手がよいスタッフということにはなっても、余人をもって代えがたい人材という存在にはならなくなってしまうでしょう。
忙殺されるほど仕事があるということ自体は悪いことではありません。その反対で、取り組む仕事が何もないという状況は由々しき事態でしょう。しかし、朝のラッシュアワー時に、人の波に流されてしまって電車への乗り降りの行動が自分の意志どおりにはいかなくなるのと似たサイクルに埋没してしまったら、あとから自主性を発揮しようとしても、そう簡単には身にこびりついた習性を取り除くことはできなくなります。
大事なことは、仕事に関して指示待ち症候群のマインドセットからいつも自由でいる心構えです。そのためには、世の中に流布されていることを鵜呑みにすることなく、つねに知的好奇心を優先させることが不可欠です。
知的好奇心を優先させると言いましたが、このことは何も仕事に限った話しではありません。仕事以外に何も趣味がない、といった偏った生き方を続けていると、その中から斬新な発想は生まれにくくなります。寝食を忘れるくらいに没頭できる趣味を持っている人は、忙殺されて時間がない、といった愚痴はもらしません。放っておいても、その趣味のためにどうやってでも時間を創り出すからです。
20代の特権は、何でも貪欲に吸収できることです。読書でも、旅行でも、映画鑑賞でも、スポーツの実践でも何でもいいので、とにかく少しでも面白いと思えることがあれば、それをとことんやってみたらいいでしょう。どんな分野のことでも、中途半端ではないやり方で物事を追求していくと、自分自身に特有の小宇宙を見つけることができてきます。
そして、そのようにして見つけた小宇宙を味方にして、当事者意識をもって主体的に仕事に取り組む姿勢を身につけることに専念すれば、人生における次のステージに向けた地力がついてきます。20代にこそ、他人との比較ではなく、自分に正直に向き合う生き方の基礎固めをすることをお勧めします。
(次回をお楽しみに!)
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