東京都の西に、東京都とは思えないくらいの豊かな自然に包まれた自治体がある。――檜原村だ。村域の9割以上が森林で、観光名所の「払沢の滝」は滝壺に大蛇が棲んでいるという伝説がある神秘的なスポットとして知られる。
この広大な自然を舞台にしたある一作のホラー小説が、産み落とされた。
作者は手塚治虫の息子であり、ヴィジュアリストとして活躍する手塚眞さんだ。
手塚さんの新作『トランス 位牌山奇譚』(竹書房/刊)は、主人公の志藤渚左が、ある老婦人の愛犬を探すため、真っ向否定していた霊感占い師の「西に45キロ」というお告げ通りに西に45キロの位置に向かい、猟奇殺人事件に巻き込まれるというホラー&ミステリ。渚左は一体そこで何を見るのか?
今回は作者の手塚眞さんにインタビューを行った。後編では思い入れの強いキャラクターや作品の影響についてお話をうかがっている。
(新刊JP編集部)
◇ ◇ ◇
―本作品で思い入れの特に強いキャラクターなどはいますでしょうか? もしいるようでしたら、理由も含めお伺いさせて下さい。
「主人公の二人です。その中でも七海は自分が今まで考えた女の子のキャラクターの中ではかなり特殊というか。寡黙な少女というのが自分の中では面白いなと思っています」
―取材中の“目からうろこ”のエピソードなどあれば、お教えください。
「あとがきで書いていますので、読んで欲しいです」
―本作品を通して、特別なテーマのようなもの、意識されたことをお教えください。
「これも説明するとネタバレになってしまうから…」
―『HIGH SCHOOL TERROR』以来、ホラー作品についての思いと、年齢を経ての想いの変化があればお聞かせください。
「特にないですね。どちらかというと僕はオーソドックスな、昔ながらのホラーが好きなのであんまり今風なものにぴんとこないところもあるんですけど、基本的に何も変わっていないというか。物心ついた頃からお化けも妖怪も好きでそういう絵ばかり描いていたんで、自分の原点というのは揺るがない気がしますね」
―ホラー、パニック、サイコ、ミステリなどの「謎」を含む作品群で、影響を受けた、モチベーションを上げた作家はいらっしゃいますか。文学に限らなくても大丈夫です。
「原点ということでいうと、僕はリチャード・マチソンが大好きで。「リアル・スティール」とか『運命のボタン』など、70年代に書かれたマシスンの短編などがありますけど、彼の影響がすごくあるように思います」
―本作品執筆中に、好んでお聞きになられた音楽、あるいは、イメージソングのようなものはありますか?
「小説に限っていえば、執筆中は、音楽はかけません」
―原稿はPCでお書きになられるのですか、原稿用紙にペンですか?
「ワープロです。東芝のルポです」
―座右の銘をお伺いできますでしょうか?
「作品に関係あるんですか(笑)? しいていうなら『逆もまた真』。けっこう好きでよく言っているかも」
―「志藤渚左」の次回の活躍は見ることできますか?
「もちろん話は続きます」
―このインタビューの読者の皆さまにメッセージをお願いします。
「最初の長編ですから思い入れもひとしおです。楽しんでいただければ嬉しいです」
(了)
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